開発NOTE

目指したのは小さいだけでなく、
機能も先進的なヘッドライト。

目指したのは小さいだけでなく、機能も先進的なヘッドライト。

光学系だけでなく、機能でも一歩先を行くヘッドライトにするために、スポットビームを開発しました。スポットビームは光で歩行者を追い続けることができるように、水平方向に光が移動します。
今回開発したスポットビームは、いままでにない画期的な方法でこれを実現できたと思っています。従来の方式は、照明モジュール全体を左右に振ることで、光を水平方向に移動させます。モジュールを振るには左右にスペースが必要です。

今回開発した方式は2枚の小型レンズの回転動作だけで光を移動させているので左右のスペースが不要です。これを実現するには、各小型レンズをそれぞれ反対方向に同じスピードで回転させる必要があります。さらに2枚の小型レンズがLEDと同じ軸で並んでいるため、光の通り道を邪魔しないコンパクトな機構を考える必要がありました。

LEDヘッドライト用光学モジュール

安心・安全のために光の色について、新しい提案を盛り込みました。

安心・安全のために光の色について、新しい提案を盛り込みました。

そしてもうひとつ、今回の開発では光の色という、新しい提案を盛り込んでいます。光の色を制御できるLEDの特性を活かしたいと考えたからです。

一般的に白っぽい光の方が明るく感じます。しかしそうした光は、対向車やドライバー自身も眩しく感じ、視認性が低下する場合もあります。今回の試作機には色温度の異なるLEDを搭載しています。例えば遠方は色温度の高い白っぽい光で明るさ感を増し、手前は色温度の低い赤っぽい色で目に優しくといった具合に色温度を調整できます。例えば、路面状態や天候などの情報を利用して、より見やすい光に自動で制御できるようになるのです。

私たちの実験では、自分が好ましいと感じる色が一番見やすいと感じる傾向があることが分かりました。個人によって見やすい色は違うのです。特に高齢者は白っぽい光は眩しく、色温度が低い方が見やすいと感じる人がいるようです。このような年齢やドライバーの好みに合わせて色温度を調整することもできます。今後も安心・安全に繋がる新しい技術として提案していきたいと思っています。

光学技術では負けたくない、小型・高効率を追及し続けます。

当社は映像分野などを中心に光学技術の研究を続けてきました。一方で車載機器の分野でも多くの実績を残しています。今回の開発は、当社が長年培ってきた強みが一つに融合した技術だと言えます。今後もセンサーなどの車載情報機器と組み合わせるなど、様々な可能性が考えられると思っています。

今回の技術の最大の魅力である小型化については、これからも追及していきます。ヘッドライトも日進月歩で技術革新が進んでいますが、小型・高効率に関しては負けたくないと思っています。消費電力を抑えて省エネで、しかも小さいという究極のヘッドライトを今後も追い求めていきたいと思います。

車に限らず、他の分野でもこの技術はきっと活かせるはず。

この開発に携わってから、つい走っている車の光をまじまじと見てしまいます。もともと車好きでしたが、これまでそんなことはありませんでした。車以外でも、例えば、新幹線のヘッドライトはどうなっているのかとか、つい気になってしまいます。

普通の照明器具は、なるべく均一な光をだすように設計されています。しかしヘッドライトは遠くと近くなど、光を強く当てたいところ、明るさを落とすところなど、わざわざ不均一に照らすように設計します。一般的な照明とは真逆です。照明は暮らし・社会のあらゆるシーンで必要な技術です。独特なこの技術を他の分野へも展開できれば、そう思っています。

車に限らず、他の分野でもこの技術はきっと活かせるはず。