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これだけは知っておこう、『中学⽣からの環境⽤語』 これだけは知っておこう、『中学⽣からの環境⽤語』

エシカル エシカル

エシカル(ethical)とは原語訳として「倫理的」「道徳的」という意味ですが、最近では地球環境の変化などを背景に「人や社会、地球環境、地域に配慮した考え方や行動」という意味で使われています。

たとえば、商品やサービスを選ぶ時に、価格や機能、デザインだけでなく、その製品が地球環境に大きな負荷をかけていないか、劣悪な労働条件によってつくられた製品ではないかなど商品やサービスの背景にあるストーリーや社会や環境へのインパクトを考慮することは、エシカルな行動です。

また、社会課題の解決に取り組んだり、循環型の経済「サーキュラーエコノミー」を重視する企業や製品、サービス、仕組みについても“エシカル”と表現されます。

ヨーロッパで1990年代に始まったエシカルのムーブメントは、まずファッション業界を中心に火が付き、気候変動や海洋汚染、経済格差、人権問題、資源の枯渇といった社会問題が拡大するのに伴い、個人の行動だけでなく、企業もSDGsと連動して重視するケースが拡大しています。

エシカル消費の一環としてフェアトレード製品を選択することで、正当な対価が生産者に支払われるため、
児童労働が減り、子供たちが学校に通うことができる。

未来を変えるエシカル消費 未来を変えるエシカル消費

一般社団法人エシカル協会ではエシカル消費を、環境、人や社会、地域の3つに配慮した消費として分類しています。

環境に配慮した消費には、自然エネルギーを使った製品やサービス、省エネ製品、オーガニック製品、アップサイクル製品(廃棄物や不要品に新しい価値を加えることで、価値を高めた製品)、廃棄物をリサイクルした製品、アニマルウエルフェア(動物福祉)を意識した製品、持続可能な森林認証・漁業認証などがあります。

人や社会に配慮した消費には、フェアトレード製品、環境団体への寄付付き製品、ESG投資の選択などが代表的です。さらに、地産地消、伝統工芸品、地域への応援消費などは地域に配慮した消費です。

よく消費は投票のようなものと言われますが、「何を選ぶか」という消費者の選択は、地球環境や生産者、社会に大きな影響を与え、大きなボリュームになれば社会を変えていく力にもなり得ます。環境を保全したり、社会課題を解決するエシカル消費の視点は、今では品質・価格・安全と並ぶ商品選択の「4つめの尺度」と言われるほどです。

エシカル

消費者庁パンフレット「エシカル消費ってなぁに?」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_education/public_awareness/ethical/material/assets/ethical_180409_0001.pdf

Z世代は企業を選ぶのもエシカル視点が重要に Z世代は企業を選ぶのもエシカル視点が重要に

1990年代半ば以降に生まれたZ世代がエシカル消費を牽引しているというデータがあります。消費・流通、マーケティング情報に特化した専門誌が約5000人のZ世代に聞いたところ、「価格が高くなっても、消費行動を通じて社会の課題解決に貢献したい」人の割合は3割を超えました。子どもの頃から、気候変動や海洋汚染などの問題が身近にあったZ世代は、自分たちの問題としてこれらをとらえ、気候変動問題でも積極的な活動や発言が目立ちます。

このため、就職活動で企業を選ぶ際にもエシカルかどうかが重要な視点として浮上しています。Z世代が立ち上げた社会課題を軸に就職先を選ぶサイトを運営する会社は、社会課題の解決に取り組む企業と就活生をつなげるプラットフォームを提供し、気候変動・環境保全・食料問題の3つの領域に取り組む企業をセレクトし、紹介しています。エシカルは企業選びにも外せない論点になってきているようです。

「Open Technology Bank」の一例

環境問題などに関心の高いZ世代は、就職先の選択にもエシカル視点を取り入れる傾向が高い。

エシカルを企業倫理として成功しているブランド エシカルを企業倫理として成功しているブランド

エシカルな製品や企業活動ではどのような具体的な例があるのでしょうか。早い時期からエシカルを企業の指針としてきた企業に、ある英国の化粧品メーカーがあります。この企業は原材料に野菜や果物を多く使い、その仕入れから製造、販売を自社で手掛けています。さらに、ゴミを出さないためにソープからシャンプーまでほとんどの製品でパッケージを排し、その費用を原材料や社員教育に使います。フェアトレードやコミュニティトレードを積極的に支援し、原材料の購入でも労働者の権利、環境、動物保護を重視し、企業運営の根底にエシカルを置いています。

ファッション業界は大量消費・大量廃棄のビジネスモデルが広がったこともあり、その環境負荷の大きさや低賃金・長時間労働や児童労働の問題が顕在化し、エシカル視点の重要性が問われています。そういった流れの中でエシカルな製品づくりを前面に出して成功している企業に、スニーカーやスポーツウエアを製造・販売する米国のある企業があります。素材を石油由来のものから可能な限り再生可能な天然素材に置き換え、「原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガスの排出量をCO2に換算」する「カーボンフットプリント*1」を表示しています。製造には100%再生可能エネルギーを使い、海上輸送を多く使います。製品そのものだけでなくエシカルなこだわりが評価され、販売も好調です。

このように、エシカルを企業倫理に取り込む企業は増えつつあり、消費者の注目度も高まっています。

*1:経済産業省 カーボンフットプリント(CFP)の概要
https://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/sangi/carbon_neutral/pdf/001_04_01.pdf