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これだけは知っておこう、『中学⽣からの環境⽤語』 これだけは知っておこう、『中学⽣からの環境⽤語』

アップサイクル アップサイクル

アップサイクルとは、捨てられるはずだった廃棄物や不用品に新たな付加価値を与えて、新しい製品にアップグレードして生まれ変わらせることを意味します。今までは捨てられていたものを、デザインやアイデアによってニーズのあるものに変えたり、より価値のあるものとして製品の寿命を延ばします。

アップサイクルは、製品の廃棄量や廃棄処分に使うためのエネルギーを減らすため、環境負荷を低減して循環型社会を実現する手段の一つとしても注目されています。SDGsの目標12「持続可能な消費と生産のパターンを確保する」は、より少ないものでより多くのものを作ることを目指していますが、この目標に貢献するアップサイクルはSDGsの取り組みの一つと言えます。

アップサイクルと類似するワードに「リサイクル」、「リユース」、「リメイク」がありますが、「リサイクル」は使い終えたものを原料に戻し、資源として再利用します。たとえば、ペットボトルを粉砕して繊維として利用したり、コーヒーかすを堆肥化することはリサイクルです。製品を分解して原料まで戻す段階でエネルギーを使うケースが多いことも特徴です。「リユース」は不要になった物をそのままの形で再び使用します。古着をそのままの形で若い世代が着こなすことなどはリユースです。「リメイク」は不要になったものをそのまま活かして他の製品にする点はアップサイクルと似ていますが、リメイクは加工後の価値は問いません。

*この記事は2023年1月の情報を元に掲載しています。

一歩先をいく海外のアップサイクルブランドいろいろ 一歩先をいく海外のアップサイクルブランドいろいろ

欧州では日本より早くアップサイクルへの取り組みが本格化しています。たとえば、スイスのあるバッグのアップサイクルブランドは、1993年、廃棄されるトラックの幌(ほろ)からバッグを作り、2003年にはMoMA(ニューヨーク近代美術館)のコレクションに入るほど話題になりました。手作業で作られるバッグは一つとして同じものがなく、生地の汚れや傷もデザインとしてとらえ、バッグのベルトには自動車のシートベルト、縁の部分には自転車のインナーチューブを利用します。一度役目を終えたものでも、形や使い方を変えることで新たな命を吹き込むことができるというアップサイクルのコンセプトを体現したブランドとなっています。

ドイツの家具のアップサイクルブランドは、建設現場で余った木材を買い取り、木製家具を作っています。建築会社は費用を支払って廃材を処分していますが、同ブランドはこれを買い取り、手を加えてベッドやテーブル、本棚などに加工しています。デザインの力で廃材とは思えない味わいのある家具に生まれ変わっています。

欧州だけでなく、アジアにも人気のアップサイクルブランドはあります。カンボジアのバッグのアップサイクルブランドは廃棄された漁網や蚊帳、ビニール袋など、すべてカンボジア国内の“廃材”を使用し、それらをアップサイクルして製品が作られます。イタリア人女性2人がデザインしたバッグは豊富な色展開と高い機能性があり、日本でもネット販売されています。カンボジアで働く人の環境も考え、託児所を併設し、フェアトレードを基本にしていることも特徴です。

食品とファッション業界でアップサイクルが注目される理由って? 食品とファッション業界でアップサイクルが注目される理由って?

これまでは廃棄されていた食材や食べ物を活用して、新たな商品を作る食品のアップサイクルが国内外で活発になっています。FAO(国際連合食糧農業機関)によると、世界では食料生産量の3分の1に当たる約13億トンの食料が毎年廃棄され、日本でも今なおその量は約522万トン(2020年度農水省)にのぼります。この廃棄量の多さが食品のアップサイクルの背景にあります。

SDGsでも「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食品廃棄物を半減させる」ことが盛り込まれるなど、食品ロス削減の機運が近年高まっていることも食品のアップサイクルを活発にしています。

たとえば、日本の大手製パンメーカーは、サンドイッチ製造過程で発生するカットされた食パンの耳を、ラスクやパン粉などにアップサイクルして販売しています。また、食品ロスとなったパンを活用したビールも数多く開発されています。

米国ではアップサイクル食品市場は2019年以降、年5%以上のスピードで成長しており、2021年からはアップサイクル食品協会により、アップサイクル食材や製品に対する認証プログラムも始まりました。

一方ファッション業界も、日本で年間約137万トン発生するという廃棄される繊維の大きさがアップサイクルを推進させています。少しでも廃棄処分される衣料を減らそうと、さまざまな試みが拡大しています。

たとえば、日本のあるカジュアルファッションブランドは在庫商品を黒色に染色して再販売したり、また別の若者に人気の国内大手ブランドはデザインに一工夫して在庫商品を再販売するアップサイクルブランドを立ち上げています。着古した着物をアロハシャツとして仕立て直したり、ハンドメイド用の素材にして販売する企業もあります。いかに市場価値のあるものとしてアップサイクルするか、アイデアが問われています。

日本の食品ロス量の推移(農林水産省2022年8月発表)

増えてきたアップサイクルと福祉との連携 増えてきたアップサイクルと福祉との連携

アップサイクルで作られる製品は、手作業が必要になることが多いこともあり、福祉施設との協働が拡大しています。たとえば福岡県のアップサイクルプロジェクトは福祉とアップサイクルを融合させたブランドです。牛乳パックをほぐして革のような生地にして、バッグやステーショナリーにアップサイクルしています。素材を作る過程から縫製までを障がいのある方が担っています。

大阪の障がい者施設から生まれた雑貨ブランドは、捨てられるレジ袋をコラージュし、熱で圧着して作られたシートを使ってバッグや財布などの製品に変えています。ここでもカットからミシンによる縫製まで、すべてのプロセスが障がいのある方の仕事として行われています。

どちらも廃棄物を減らして新たな製品として生まれ変わるだけでなく、障がいのある方の仕事と収入につながっています。

日本の大手鉄道会社も「アップサイクル×福祉」に取り組んでいます。知的障害のあるアーティストを起用した大型の掲示物を、掲示後も廃棄することなくトートバッグにアップサイクルして販売しています。「アップサイクル×福祉」はこれからもさまざまな業種で拡大していきそうです。