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読む宇宙旅行

2010年1月 vol.1

シャトル最後の日本人?山崎直子飛行士、琴を携えて宇宙へ

シャトルの打ち上げ・帰還時に着る通称パンプキンスーツ姿で。(提供:NASA)

シャトルの打ち上げ・帰還時に着る通称パンプキンスーツ姿で。(提供:NASA)

 2010年が明けました。昨年は世界天文年で盛り上がった年でしたが、今年の注目の一つは、3月に予定されている山崎直子宇宙飛行士のスペースシャトル・エンデバー号での打ち上げ。日本人がスペースシャトルで宇宙に飛び立つのは、これが最後のフライトになりそうだ。現在のところ、NASAは2010年でスペースシャトルを退役させると発表している。2010年のシャトル打ち上げは5回予定されていて、山崎飛行士が乗り込むのは2月の飛行に続いて3月。シャトル131番目のフライトである。

 1981年4月12日の初飛行以来、約30年間にわたって延べ700人以上もの宇宙飛行士たちを宇宙に送り続けてきたスペースシャトル。日本人も過去6人が11回搭乗した。1986年のチャレンジャー事故、2003年のコロンビア号事故という痛ましい事故で宇宙飛行士の命が失われてきたが、過去これほど多くの人間を宇宙に送り届けた輸送機は他にない。そのラストランはおそらく世界中の注目を集めることだろう。

 山崎飛行士は中学3年生の受験生の頃、スペースシャトル・チャレンジャー号の事故を見て宇宙飛行士を志したという。事故も衝撃ではあったが、そのフライトで乗り込む予定だった女性教師クリスタ・マコーリフさんの笑顔が印象に残った。教師志望でもあった山崎さんは「彼女の遺志を継いで宇宙から授業をしよう」と決意したそうだ。その思いが20年以上の時を経て実現する。

ロボットアーム訓練中の山崎直子飛行士。(提供:NASA)

ロボットアーム訓練中の山崎直子飛行士。(提供:NASA)

 宇宙での山崎飛行士の仕事は、シャトルの貨物室に積んだ補給モジュールをロボットアームで宇宙ステーションにドッキングさせる。補給モジュールには日本の実験装置や試料を含む6トンの物資が搭載されている。その荷物を取り出しステーション内に運び込む責任者「ロードマスター」の役割を担っている。

 7歳の娘、優希ちゃんの母親でもある山崎さん。出産後は「とにかく時間が貴重で1分1分を大事にする集中力がついた。30分でも時間があれば貴重でした」とのこと。大きくなった今は訓練の公開日に娘を連れて行き、自分の仕事を見せている。優希ちゃんも宇宙に興味を抱き、「宇宙から地球を見てみたい。写真をたくさん撮ってきてね」と頼まれているそうだ。

 小学2年生から琴を習っていた山崎さんは宇宙に特製の琴を持っていき、演奏する予定。先に宇宙に行っている野口飛行士は大晦日に龍笛(りゅうてき。雅楽器の一つ)を披露してくれた。二人の奏でる日本の音色が楽しみである。(元旦に宇宙の野口さんから電話を頂き、龍笛について少しお話しした。山崎さんの演奏の邪魔にならないよう吹きたいそう(笑)。龍笛は横笛の中でもかなり難しい楽器なのだ)

 毛利衛氏は「山崎飛行士は優秀だから今回のミッションに不安はない。宇宙に行けばさらに一皮むけるはず」とエールを送る。山崎飛行士はシャトル飛行後、長期滞在にも意欲を見せる。もし実現すればアジア人女性初となる。「宇宙では男性・女性、軍人・民間人、欧米人・アジア人など色々な個性があったほうがいい。日本のプレゼンスを発揮していきたい」。宇宙ではじける彼女の笑顔を見てみたい。