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読む宇宙旅行

2014年7月22日

目指すは月。世界初のピンポイント着陸へ!?

月へのピンポイント着陸は、今後どの天体を探査するにしても重要な技術となる。(提供:JAXA)

月へのピンポイント着陸は、今後どの天体を探査するにしても重要な技術となる。(提供:JAXA)

 日本人は月が大好き。この夏、スーパームーンでも盛り上がっていますね。その月に、いよいよ日本は着陸機を降ろそうと動き始めている。狙うのは月の極。100メートル以内の誤差でピンポイント着陸(無人)を目指す。NASAもロシアも中国もまだ成し遂げていない難しい技術だ。2014年7月1日の文部科学省宇宙開発利用部会の小委員会でその詳細が説明された。

 現在、国際宇宙ステーション(ISS)後にどこを目指すかについて国際的に議論が進められ、2030年以降に有人火星探査を目指すことが合意されている。ただ、一足飛びに火星に行けるわけではなく、段階的なアプローチで練習して技術を積み上げることになっている。その練習場所候補として小惑星、月、月近くの3パターンが提案されている。

 その中でJAXAは「月」をターゲットに定めた。理由は日本が得意とするロボティクス技術等で貢献できること。また国際情勢も背景にある。中国は2013年末に着陸機と月面車を降ろし、次は月からのサンプルリターンを目指す。ロシアやインドも月の開発を進めようとしている今、日本も存在感を示したい。

 その一方、欧米では月探査計画が具体的になっていないことから、日本が主導権をとれる可能性があると判断した。実はアメリカはオバマ大統領が前大統領の有人月探査をキャンセルし、火星を目指すと宣言した手前、月にもどると公言できないという苦しい事情がある。だが、世界のトレンドは「まずは月でしょ」。

 そもそも日本は2007年に打ち上げられた月周回衛星で月の詳細な科学観測を行い、続く着陸ミッションに向けて着陸技術やロボットによる移動探査技術、2週間続く月の夜に探査機をサバイバルさせる越夜技術などの研究を蓄積していた。そしてJAXA独自で無人月面探査実施を検討していたところ、2013年初めにNASAから「月の水・氷の調査を行う世界初の月極域着陸ミッション(RPM Resource Prospector Mission)で、着陸機を提供してもらえないか」という打診が あったのだ!

月では昼が約2週間、夜が約2週間続く。長い夜の間は観測機器などを断熱材で覆う越夜技術も必要(提供:JAXA)

月では昼が約2週間、夜が約2週間続く。長い夜の間は観測機器などを断熱材で覆う越夜技術も必要(提供:JAXA)

 ここで素朴な疑問がわく。今年はアポロ月面着陸から45年。既にアポロ計画で月面着陸を成し遂げた宇宙大国アメリカが、なぜ日本にそんなお願いを?実は、極域で水氷のありそうな場所を狙って着陸する「ピンポイント着陸」は技術的に非常に難しく、世界のどこもまだ実現できていないのだ。アポロ計画では宇宙飛行士が搭乗していたことから安全な平地に着陸。一方、極地域は平地が少なく、100m以内の精度で目指した場所に正確に降りる高度な技術が求められる。NASAが注目したのは日本の小惑星探査機の実績だ。直径500mの小惑星イトカワ表面から平らな場所を探し着地した。その技術で日本は「一日の長がある」とJAXA長谷川義幸理事は力説する。

 現在は2019年の打ち上げに向けて、具体的な協力の可能性や日本のミッションを搭載できないか検討中だ。日本単独で月着陸ミッションを行った場合、打ち上げ費を含めて約490億円の予算が必要になるが、日米協力が実現した場合、アメリカがロケットとローバーを提供する可能性があり、日本の負担は半額程度になる見込み。

 月にピンポイント着陸するためには、月の地形を観測・判別し、着陸目的地の地形と合っているかを判断する「地形照合」、狙った場所に降りていく「誘導制御」、着陸場所周辺の岩などをレーザーで見つけて避ける「障害物検知」などの技術が必要だ。

 地形照合では日本の月周回衛星で得た高精度な地図データを活用する。難しいのは誘導制御。特に月は6分の1の重力があるため、着陸速度が速くなる。そこで日本の貨物船「こうのとり」で使った国産のスラスタエンジンを束ね、着陸機の姿勢を安定させつつ加速度を落として着陸させる。文部科学省は来年度、月着陸技術の予算を要求するか検討中だ。

 月を目指すのは国のプロジェクトだけではない。民間では来年、月ラッシュが起こりそうだ。ロボットによる月レース「グーグルルナXプライズ」は2015年末が期限だし、月にタイムカプセルを届けようという「ルナドリームカプセルプロジェクト」も2015年10月打ち上げ予定だ。

アポロ月面着陸から45年。再び世界の関心が月に向かっている。写真は国際宇宙ステーションから撮影した月。(提供:NASA)

アポロ月面着陸から45年。再び世界の関心が月に向かっている。写真は国際宇宙ステーションから撮影した月。(提供:NASA)

 会津大学准教授で月探査情報ステーションを運営する寺薗淳也さんは、月の探査に大きく期待する一人。「月は身近ですが、まだそれほど幅広く探検されていない。特に科学者は月の表側と裏側がなぜ異なるか、について大きな興味を持っています。」

 地質学を学んだ寺薗さんは、月の裏側の石を持ち帰れば月の科学的解明にとって非常に大きな手がかりになるという。日本は地質学や鉱物学で世界最先端レベルを走っており、月の科学で世界をリードできる分野なのだと。

 月探査情報ステーションはここ4〜5年、満月の日にアクセスが3倍になるなど月への関心が一般の人たちの間で高まってきたのを実感しているという。月に民間機が次々向かい、宇宙機関の国際協力ではチャレンジングなミッションを狙う。そしていつかは月から私たちが「スーパーアース」を見られるようになるといいですね。