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星空の散歩道

2014年3月20日 vol.81

春分の日

 一日ごとに日が長くなっていく実感がある季節になった。春分を境にさらに日が長くなり、いよいよ春も本番と思えるようになる。夜はどんどん短くなるのだが、気温は上がるので星空を眺めやすい季節とも言える。

 今年の春分の日は、3月21日。ところで、これは2013年とは一日異なる。2013年は3月20日が春分の日だったからだ。ちなみに、2015年は3月21日、2016年は再び3月20日となる。このように日付が異なる理由を、なんとなくご存じの方も多いだろう。

 国立天文台の暦計算室では、毎年、天体暦の計算をしていて、春分・秋分も決めている。改めていうまでもないかもしれないが、春分というのは、太陽が天球上を動いて、天の赤道(地球の赤道を天球に延長したもの)を南から北に横切る瞬間のことである。太陽の通り道を黄道と呼ぶが、黄道と天の赤道の交差点に太陽が来る瞬間に他ならない。(ちなみに北から南へ交差する点を秋分点と呼ぶ)この春分、秋分を含む日を、それぞれ「春分日」「秋分日」と呼ぶことになっている。実は、この瞬間は、年によって、20日になったり、21日になったりするのである。したがって、この春分日・秋分日を基準とする国民の祝日としての「春分の日」「秋分の日」の日付も、年によって異なることになる。(もっとも最近は移動祝日が多いので、余り目立たなくなってしまったが。。)

春分の日の太陽の動き:2014年3月21日東京

春分の日の太陽の動き:2014年3月21日東京

 さて、春分の日前後に国立天文台の広報普及室に必ず寄せられるのが、「春分なのに、どうして昼と夜の長さが異なるのか」という質問である。春分の日は、太陽は天の赤道上にあるので、太陽は真東から昇って、真西に沈むはずだ。したがって、地球上のどんな場所でも、太陽が顔を出している昼と沈んでいる夜とが同じ長さになるはずである、と思い込む人は多い。ところが、新聞の暦欄をなにげなく見てみると、どうもそうではないことに気づく。例えば、2014年の春分の日、3月21日の東京での日の出は5時44分、日の入りは17時53分。したがって、この日の昼の長さは12時間09分となり、昼が夜よりも18分も長いことになる。これは納得がいかないと上記の質問となるのだ。実は、春分の日も秋分の日も昼の方が長い。これには、ふたつの理由がある。

 以前、初日の出の時にも紹介したように、これには日の出入りの定義がからんでいる。日の出は太陽の上の縁が地平線に接した瞬間と決められている。初日の出では、太陽の縁が顔を出した瞬間に手を合わせる。その気持ちを考えれば、この定義はごく自然だ。日の入りも同様に、太陽の最後の縁が地平線に沈んで見えなくなった瞬間と定義されている。ということは、太陽の有限の大きさを考えれば、日の出に太陽の半径分だけ昼が長くなり、また日の入りの時にも同じ量だけ長くなることになる。昼の時間は日の出から日の入りまでだから、あわせてちょうど太陽一個分、昼が長いことになるのだ。

 もう一つの理由として、大気の屈折がある。地平線に沈む太陽がしばしばつぶれたお饅頭のように見えることがあるが、これは太陽光線が厚い大気中を通過するときに場所に応じた屈折率の差によって起きる現象である。そのために太陽は、実際には地平線の下にあるのに、地平線上に浮き上がって見えている。この浮き上がりは、大気の状態や季節などによっても差があるが、一般的は、地平線での天体の浮き上がり量は1度の半分ほどである。つまり、太陽一個分はまるまる浮き上がって見えていることになる。この浮き上がり現象を「大気差」と呼んでいるが、そのために日の出時と日の入り時、あわせて太陽2個分ほど昼が長くなるのである。

 この二つの理由で、春分、秋分ともに昼の方が長くて夜の方が短い。合計すると、太陽3個分ほど昼の方が長くなる。時間差に換算すると、この差は緯度によって異なるが、東京では16~18分程である。そして、昼夜の長さが本当に同じになる日は春分の日、秋分の日よりもそれぞれ4日ほど冬至側にずれた日になる。

 まぁ、そんな細かなこととは別に、真東から上って真西に沈む太陽を拝んでみてはいかがだろう。