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JAXA・DSPACE共同企画 —同級生対談— 宇宙飛行士 大西卓哉 × フライトディレクタ 内山崇JAXA・DSPACE共同企画 —同級生対談— 宇宙飛行士 大西卓哉 × フライトディレクタ 内山崇

JAXA編その1

宇宙飛行—打ち上げで味わった恐怖

2016年、国際宇宙ステーション(ISS)に長期滞在した大西卓哉宇宙飛行士と、ISSの生命線を担う輸送船「こうのとり」のフライトディレクタを務める内山崇さん。大学時代の同級生で、宇宙飛行士選抜試験ファイナリストとして戦ったライバルの二人が、同級生ならではのリアルな宇宙話を語り合うスペシャル対談。第1回目のテーマは選抜試験から宇宙飛行の現実です。

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大学時代の同級生が、宇宙飛行士選抜試験で再会

お二人は大学では同じ研究室で学び、卒業後は別々の道に。2008年に始まった宇宙飛行士選抜試験では、963人の応募者の中から第三次試験の10人のファイナリストに残りました。この閉鎖環境適応訓練施設(以下、閉鎖施設)で約1週間の缶詰試験に入った時、お互いにライバル意識はありましたか?

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宇宙飛行士選抜試験が行われた閉鎖施設内で。狭い空間にベッドが並ぶが「睡眠が6時間ぐらいで毎日の課題で疲れていたので、けっこうぐっすり眠れました」と内山さん(右)。
内山崇(以下、内山):

僕はライバル意識はあまりなくて。実はファイナリスト10人を自分の中でカテゴリ分けしていたんですよ。まずパイロットが4人と多くて、その中から何人か受かるだろうと。それからお医者さん。それ以外はエンジニア・研究者。元々10人はぎすぎすした雰囲気ではなかったですが、僕と大西は違う枠だなと思ってました。

大西卓哉(以下、大西):

逆に言うと、同じ枠の中でライバル視している人はいたの?

内山:

あんまりいなかった。宇宙関係のエンジニアは僕一人だったから。パイロット同士はもろにあったのでは?

大西:

二次選抜ぐらいまではあったね。

「パイロット同士のライバル意識」はDSPACE編へ

お互いに相手の「ここはすごいな」と思った場面はありましたか?
大西:

第三次試験でNASAに行きましたが、米国に向かう機内で内山がロシア語の勉強をしていたのがけっこう衝撃でした。「こいつ、本当にマジだな」と。もう次のステップを見ている。僕なんか今のステップをクリアするのに精いっぱいで、ロシア語なんかやっている余裕ない。もう宇宙飛行士になってる自分をイメージできていて、すごいなと。

内山:

実際は、面接で「ちょっとロシア語をかじってるぞ」と言えるぐらいの、軽い自己紹介ができたらいいなと思って(笑)。でも使えなかった。ちょっときっかけがあればやろうと思っていたんですけど、そんな場面がなかった・・・。

大西:

自分から言い出すのもね。

内山:

そう。僕が大西をすごいと思ったのは、自分自身をものすごく強くもっていることです。ファイナリストの中に、年齢や経歴が大西と近いパイロットがいたんです。ただ、その方は機長で、大西は副操縦士だった。
閉鎖施設での課題で「いかに自分が宇宙飛行士に向いているか」をプレゼンする機会があって、機長の彼が乗客の命を預かる機長ならではの責任の強さを話したんです。プレゼン自体もよかったし、ほかのライバルに向けてもメッセージを送っているなと感じました。そのあと大西がプレゼンするときに声をかけたら、「自分は自分を出すだけ」と鋭い視線で返事が返ってきて、かっこよかったですね。
僕なんか、ほかの人に何か言われるとけっこう影響されちゃうタイプだけど、大西はそうではなくて、ほかの人がどんなにいいことを言っても、自分が出せるものを出すだけという強い芯がある。感心しました。

大西:

それは覚えてる。実はこの閉鎖試験に入った初日、ものすごく疲れたんだよね。カメラもマイクもそこら中にあって、ずっと行動を監視されている。みんなこういう行動をすればポイントアップするじゃないかと意識して行動したりして。
その日の夜、寝る前に反省したんです。ふだんの自分じゃない姿を見せて受かっても、一生後悔するのは自分だろうなと思ったし、パイロットも宇宙飛行士も向き不向きが大事。ありのままの自分でいってそれで評価されればよし、と切り替えた。そうしたら、二日目からいい感じでリラックスできた感じだった。

超マイぺースだった金井飛行士

今年12月ごろに宇宙に行く金井宣茂宇宙飛行士も、ファイナリストの一人でしたよね。金井さんは閉鎖施設での試験中、どんな感じでしたか?
大西:

金井さんこそ、僕の中では自分を強く持っている人。内山が僕に対して言ってくれたことを、僕は金井さんに対して感じています。今もそうですけど、自分のこだわりとか信念があって、まったく揺るがないよね。

内山:

超マイペースですね。この中にずっといると体がなまるからと言って、一人で腕立て伏せしていたりね。

今年12月頃、宇宙に飛び立つ金井宣茂宇宙飛行士は内山さん曰く「超マイペース」。ミッションロゴマークを手に。(提供:JAXA)

宇宙飛行のリアルー打ち上げ時に味わった「恐怖」

今、お二人は宇宙の現場で「同志」として同じ目標に向かって協力しています。宇宙ミッションの現場について、まず大西飛行士の宇宙飛行の話を聞かせてください。大西さんは実は高所恐怖症だとか?でも航空機のパイロットでしたよね?
2016年7月7日、ソユーズロケットに乗り込む直前の大西飛行士。(提供:JAXA/NASA/Bill Ingalls)
大西:

箱に入っていれば大丈夫なんですよ。だからエレベーターも大丈夫。ただ、ビルの屋上とかで、手すりから身を乗り出すのはダメ。

内山:

打ち上げのとき、ロケットの上段に上がっていって乗りこむ寸前はどうだった?

大西:

それ、けっこう本気で心配してた(笑)。ソユーズの発射台の上に行くためにエレベーターがあるんだよね。発射台の下で手を振ってエレベーターに乗り込むところまでは、バックアップクルーの時に全部見ていた。その先は完全に未知の領域で、エレベーター降りたときに吹きさらしだったらどうしようと。事前に油井さんに聞いたら、油井さんははっきり覚えていなかった。「どうでしたかね~」とか言って。

内山:

気にもしてない(笑)。で、実際どうだったの?

大西:

打ち上げ直前のロケットは燃料を注入されて、蒸気がもうもうと立ち上がっていて、そのすぐ横をエレベーターで上がっていく。それがまずド迫力で「すごいな、これ」と。
で、上まで上がっていったら、ロケットまで完全に覆われていて「ああ、よかった」と思った(笑)

内山:

ソユーズロケットの打ち上げはどうだった?

大西:

打ち上げのときって、どういう心境になるんだろうというのが自分の中ですごい興味があって。打ち上げ何十秒前ぐらいに逃げ出したくなるのかな、と思っていたんだよね。でも実際に乗ってみると「まな板の上の鯉」状態で、今さら逃げるなんてできないし、怖いという感覚は吹き飛んでいた。いざ、カウントダウンが始まってゼロになると、意外なくらい「ふわっ」という感じで静かに打ちあがったね。

内山:

へー。

大西宇宙飛行士、初フライトまでの道のり ~ISS長期滞在中の活動ダイジェスト~。(提供:JAXA)
大西:

自分たちはロケットの先端にいて、はるか下の方でエンジンが火を噴いている。ヘルメットで完全に締め切っているから音も聞こえない。時々ガタガタという振動があって、お尻のずっと下の方で、ものすごいものが火を噴いているというイメージしかない。
ロケットはゆっくり上がって行ってものすごくスムーズ。加速度もゆっくり増していくので、まるで「お釈迦様の手のひらに乗って」持ち上げられていくような感じだった。
それがロケットの第一段切り離しのときに、「すぱん!」とお釈迦様の手がのけられて、急に自分の身体が落ちているような感覚があった。実際は加速度が減少しただけで降下しているわけではないのに。あの一瞬はびっくりというか、恐怖に近い感覚があった。
その時の衝撃と音がすごい。「ガシャン!ガシャン!」と第一段が外れていく。「なにかが壊れたんじゃないか」と思ってドキッとする一瞬だった。

「ソユーズ宇宙船に持ち込んだくまのぬいぐるみ」はDSPACE編へ

ソユーズロケットでの打ち上げ、帰還の様子。冒頭から0:17までがソユーズロケットからの切り離し、軌道投入。(提供:JAXA)
大西:

「落ちる」という感覚では、国際宇宙ステーション(ISS)の7枚の窓がある観測施設「キューポラ」も最初は怖かった。ISS到着後に入るとき身構えるというか、心拍数があがるというか。

周りが窓で囲われていても?
大西:

眼前に地球が広がるので、どうしても「落ちていく感覚」があるんです。だから頭から入るようにしていましたね。足から入るとそのまま落ちそうで。

ISSの「キューポラ」で。7月25日撮影。最初は落ちるという感覚があったそう。(提供:JAXA/NASA)
内山:

船外活動でエアロックから出ていくときも、落ちるような感覚があると聞くね。

大西:

野口飛行士は手すりをぎゅっと握っちゃうと言ってたね。落ちるわけはないとわかっていても感覚的に、地球が足元にあるとそっちに向かって落ちていくと錯覚してしまう。

史上初。マウス12匹を地上に生還―その舞台裏

宇宙の仕事で一番印象に残っていたのはなんですか?
大西:

小動物(マウス)の飼育ミッションですね。宇宙で無重力状態と人工重力状態を作って12匹を35日間滞在させ、生きて地上に帰還させたのは世界で初めてです。

小動物飼育ゲージをメンテナンスする大西飛行士。(提供:JAXA)
内山:

生き物を12匹も飼育するのは結構大変だったのでは?

大西:

大変だったね。マウスのフンを掃除するために装置内にファンをつけて、空気の流れを作り出していたのだけど、ファンを強力にすると音が大きくなって、マウスの飼育環境に影響を与えてしまう。騒音レベルはここまでという条件があって、ファンのパワーが決まる。そのパワーが弱かった。そのためにフンや食べかすが浮いている状態になってしまって。

打ち上げ前の計画では、宇宙飛行士は1週間に1回程度の世話でよかったんですよね。
大西:

水やりが週に1回で、餌やりが週一回1回の予定でしたが、ふたをあければほぼ毎日、何かしらの作業をしていました。たとえば、ある飼育装置で水の消費量が予定より早いと、給水装置のノズルが詰まって水が漏れている可能性が高いということで、まずチェックしてから飼育装置ごと交換したり。

内山:

マウスたちは元気だったの?

大西:

元気だった。マウスの健康状態に影響を及ぼす前に対処するのが目的だったしね。地上の運用管制チームや実験チームと密にやりとりをして、元気に地上に返すことができて、本当によかったと思ってます。(続く)

「生活面で一番大変だったトイレの話」「ニュータイプへの期待」はDSPACE編へ

  • 本文中における会社名、商標名は、各社の商標または登録商標です。

  • 2017年5月22日にファン!ファン!JAXA!にて公開された内容と同様です。

取材・構成 林公代