いま宇宙分野は、研究開発の領域を超え「巨大なビジネスフィールド」へと急速に変貌を遂げてきています。政府による17の成長戦略分野のひとつである宇宙分野は、内閣府による宇宙戦略基金などの投資も加速し、重要な成長産業となりました。かつての国家主導の大型プロジェクトから民間主導の商業化へ。衛星データを活用した新しいサービスが次々と誕生しています。この熱狂的な潮流は、既存の宇宙関連企業だけでなく、非宇宙分野のプレイヤーにこそチャンスを秘めていると言えるでしょう。こうした産業構造の変化を背景に2026年2月5日、横浜みなとみらいにて、宇宙ビジネスの最前線となる「神奈川宇宙サミット」が開催されました。
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産官学の知恵が横浜に集結!
「神奈川宇宙サミット」レポート
神奈川県を日本の宇宙関連産業の成長を牽引する共創ネットワークへと育てることを目的に開催された大規模宇宙ビジネスカンファレンス「神奈川宇宙サミット2026」。サミットを通じて神奈川県に国内屈指の産官学の知見とリソースを結集し、日本の宇宙産業のこれからを「宇宙県・かながわ」から創り出していくことが掲げられました。熱気溢れる会場には宇宙分野の関係者はもちろん、異分野からの参画も含め、多くの企業や大学、研究機関、自治体などが参加。当日は特別協賛企業として三菱電機のブースも設置。次世代の宇宙ビジネスを支える新たな技術や「湘南スペースパーク構想」が発表され、参加者の熱い視線を集めていました。
「失敗は許されない」に
向き合ってきた三菱電機が、
いま殻を破る
三菱電機は1960年代から通信、気象、地球観測といった様々な衛星開発を手がけてきた日本の宇宙開発のパイオニアとも言える存在です。これまでに私たちの生活に欠かせない気象衛星「ひまわり」や、日本版GPSとして高精度な位置情報を支える「みちびき」など、様々な国家プロジェクトを完遂させてきました。近年では、世界で5番目の月面着陸を達成し、狙った場所へのピンポイント着陸を成功させた小型月着陸実証機「SLIM」など、世界最先端のミッションを支え続けています。
三菱電機の強みは、衛星開発特有の「長期にわたって過酷な環境で使用する」「打ち上げたあとは修理ができない」「社会インフラを支える重要な役割を担う」という高い要求水準に応え続けてきた「信頼」と「品質」にあります。鎌倉を拠点として長年培われてきた知見と実直なものづくりへの姿勢によって、部品一つひとつの選定から宇宙環境でも耐えられる設計、厳格な試験に至るまで、一切の妥協を許さないプロセスを確立してきました。万が一故障が発生してもシステム全体を維持できる二重、三重の冗長設計など、積み上げてきた宇宙に関する知見は日本の宇宙産業の基盤となっています。
そして今、三菱電機はこれまでの実績に甘んじることなく自らの殻を破ろうとしています。それは磨き抜いた1つの衛星を製造し納品する「メーカー」としての立ち位置から、衛星から得られるデータを活用し幅広い企業や組織と共に新たな価値や市場を創る「パートナー」への進化。さらには、宇宙空間にある衛星のソフトウェアを打ち上げた後でも遠隔で変更できる「ソフトウェア定義衛星(SDS*1)」や、宇宙空間でAIが意思決定を行う「AIドリブン(AIDx)」にも挑戦しています。SDSの実現に必要不可欠なのが「オンボード処理(OBP*2)」技術。これは衛星が取得したデータを宇宙空間で計算・解析まで行う技術です。衛星は「データを送る存在」から、「宇宙で考える存在」へと変化しました。
*1SDS:Software Defined Satellite *2OBP:On-Board Processing
湘南に「宇宙のオープンイノベーションの場」が誕生?
「湘南スペースパーク構想」
長年にわたり三菱電機で宇宙開発ビジネスに携わってきた宇宙システム事業部 副事業部長・中野陽介さんは、今回の取材の中で「宇宙産業をこれまでの専門的な宇宙開発から誰でも参加できるオープンな世界へ変えていく」という強い意思を話してくれました。
中野:今回のイベントでは、三菱電機が「湘南スペースパーク構想」の発表を行いました。これは、湘南・鎌倉エリアに宇宙ビジネスの「開発・生産・運用」が揃う宇宙共創プラットフォームを創設するというプロジェクト。この構想の最大の狙いは、スタートアップ企業やいままで宇宙に触れてこなかった異業種のプレイヤーにとって非常に高い参入障壁を劇的に下げ、宇宙の市場を拡大することで投資を促す宇宙産業エコシステムを構築することです。
三菱電機株式会社 宇宙システム事業部 副事業部長
兼 宇宙事業開発センター長
中野 陽介(なかの ようすけ)
三菱電機鎌倉製作所入所後、防衛・衛星用レーダー開発に20年近く従事。その後、宇宙開発事業へと軸足を移し、現在は宇宙事業全般を統括。新ビジネスの企画やスタートアップへの投資を主導している。
例えば、宇宙空間の過酷な環境を再現できる「スペースチャンバー」。これは衛星の試験には欠かせない巨大で高価な設備ですが、スタートアップが自前で保有することは困難です。同パークではこうした高度な設備を共同利用できる環境を整え、安価かつ迅速に実証実験を行える場所にしたいと考えています。これにより、優れたアイデアを持つ企業が即座に試験できるようになります。この構想はまさに「宇宙ビジネスの加速装置」。人や技術が集まることで新たな事業を生んでいく好循環を生み出し、日本の宇宙ビジネスの競争力を根本から底上げするための壮大な挑戦と言えるのではないでしょうか。
中野:さらにこの構想は設備や運用支援の提供だけに留まりません。技術の標準化と人材育成も大きな柱としています。これまで各社が独自に行っていた製造工程や教育プログラムを誰もが使える共通の型にして整備。技能を習得できる学校のような機能を備えることで、宇宙の専門家以外の人材も即戦力として活躍できる土壌をつくることを目指しています。
また、国内外の投資家やアジアをはじめとする海外企業も呼び込み、資金・人材・アイデアが循環するデジタルスペースコミュニティを形成することで、三菱電機は湘南の地から世界に誇れる宇宙産業の発展に寄与していきたいと考えています。
業種を超えた
アイデアの掛け合わせが、
日本の宇宙産業を加速させる
「湘南スペースパーク構想」は単なる拠点の創設にとどまりません。三菱電機が中心となり、産官学が連携して共創空間を築き、異業種のアイデアを掛け合わせながら、新たなビジネスを加速させる挑戦の場です。将来の宇宙ビジネスの展望を聞かれた際に「宇宙から地球の暮らしを豊かにし、社会課題を解決したい。」と語ってくださった中野さん。
中野:この理想の未来は、私たち三菱電機だけで叶えることはできません。垣根を超えた産官学の連携を通じて日本を宇宙産業大国へと導く。その先頭に立つ存在として三菱電機はあり続けたいと思います。
いままで宇宙と関わりのなかった企業にも、スタートアップにもチャンスのあるこのフィールド。神奈川・湘南から始まるこの壮大な「新・宇宙時代」の主役は、あなたの企業かもしれません。
※本記事内の製品やサービス、所属などの情報は取材時(2026年2月)時点のものです。






