2023年10月号

特集 「働く人から暮らす人まで,誰もが自分らしい100年を生きるライフソリューション」

三菱電機技報 2023年10月号

巻頭言
働く人から暮らす人まで,誰もが自分らしい100年を生きるライフソリューション
巻頭論文
100年を生きるライフソリューションの最新技術
特集論文
全5編

特集概要

三菱電機は、サステナビリティの実現を経営の根幹に据え、事業を通じた社会課題解決に貢献するため、注力する5つの課題領域を明確化し、循環型デジタル・エンジニアリング企業へと変革を目指しています。また、ライフビジネスエリアはあらゆる生活空間において、快適で安全・安心な環境を創造するソリューションプロバイダとなることを掲げました。
本号では、ビルシステムの保守・運用管理と連携した空調冷熱システムソリューションに加え、リビング・デジタルメディア事業のビジョン“働く人から暮らす人まで、誰もが自分らしい100年を生きるライフソリューション”の実現に向けたIoT、AI技術を活用した製品・サービスについて紹介します。

巻頭言
巻頭論文
2.

100年を生きるライフソリューションの最新技術(PDF:1012KB)

星崎潤一郎

三菱電機は,持続可能な社会への貢献として,ライフビジネスエリアの事業を通じたエネルギーマネージメントやヒートポンプ技術等による社会の脱炭素化,保守・運用やリサイクル分野の技術革新を通じた循環型社会の構築を目指している。
あらゆる生活空間で,快適で安全・安心な環境を創造するソリューションプロバイダになり,IoT(Internet of Things)を活用したセンサー技術を駆使してリアルタイムに生活環境や人の情報を取り込んで,空調・家電・住設機器の運転を最適化して,カーボンニュートラル,安心・安全,ウェルビーイング,ビルシステム等の省力化・効率化を実現していく。

特集論文
(全5編)
3.

“エモコテック”搭載のルームエアコン(PDF:535KB)

廣崎弘志

近年,大きく変化した健康に対する意識や,在宅勤務などの新しい働き方が“新しい生活様式”として定着しつつある中,身体的・精神的・社会的に満たされることを指す概念“ウェルビーイング”を実現する製品やサービスへの関心が高まっている。また,石油や天然ガスなどの価格上昇や地球温暖化の進行によって,脱炭素社会に貢献する製品が求められている。
ウェルビーイング実現に貢献するため,人の気持ちを測って空気を整える世界初(注1)の空調“エモコテック”をルームエアコンに搭載した。また,脱炭素社会に貢献するため,独自の学習機能によって省エネルギーな立ち上がり運転制御機能を搭載し,起動時の電力量を削減した。さらに,暖房運転時の着霜量モニタリング方式を改善した。独自のデュアルオンデフロスト回路を改良し,霜取り中も最高50℃温風吹き出しを実現した。
(注1) 空調機器で。室内にいる人の脈を非接触で計測することで,脈から人の感情を推定し,温度や気流を制御する技術。2023年2月17日発売。三菱電機調べ。

4.

空調LCSを実現するクラウド型支援ツール“MELく~るLINK”(PDF:701KB)

坂口弘晃/石垣充博/伊藤彰広

昨今,製造業には持続可能な社会の実現への貢献が望まれている。特に業務用冷凍空調機器では,大気中に放出すると高い温室効果を引き起こすフロンが使われており,製品使用時のフロン類の漏えい防止が課題である。さらに,この機器の修理点検等のビル管理業務では,社会の高齢化に伴い,労働力不足が深刻化している。
三菱電機は,この課題を解決するため,遠隔で業務用冷凍空調機器を常時監視し,機器の異常や冷媒漏えいの状況等を自動で診断できる“MELく~るLINK”を開発し,ソリューション・サービスとして提供を始めた。順次,対象とする当社業務用冷凍空調機器を拡大していく。
将来に向けて,業務用冷凍空調機器だけでなく,ビル全体のエネルギーマネージメントや省エネルギー制御等を活用したソリューション・サービスを継続して提供することによって,事業を通じた社会課題の解決を推進していく。

5.

家電製品を活用した高齢者見守りサービス“MeAMOR”と“MyMU”の拡張(PDF:731KB)

篠崎秀一

日本国内では高齢化率の上昇が続いて,65歳以上の一人暮らしも増加している。こうした実情を踏まえて,一人暮らしの高齢の親などの見守りを想定した高齢者見守りサービス“MeAMOR(ミアモール)”を開発した。
MeAMORは,高齢者のプライバシーを守りながら“そっと”見守ることを目指して,高齢者が日々使用している家電製品の操作情報や検知情報を活用した見守りサービスとして開発した。さらに,MeAMORを有料サービスとして提供するため,三菱電機として初めてアプリケーション内のコンテンツや定期購入などに課金する仕組み(以下“アプリ内課金”という。)に対応した。

6.

IoT機能“調理アシスタント”を搭載した三菱IHクッキングヒーター“レンジグリルIH”(PDF:861KB)

平井正人/本江兼捷/伊藤大聡/三木智子/髙橋理佳

“電子レンジ”機能を搭載した“レンジグリルIH”に,日々の調理作業の負荷軽減に貢献できるIoT(Internet of Things)機能“調理アシスタント”を搭載した“RE-322SXR”を開発した。
三菱電機のIoT共通プラットフォーム“Linova(リノバ)”を活用し,スマートスピーカー用の三菱電機独自の音声ユーザーインターフェース“Touch & Voice UI”の考え方を取り入れた音声操作と,三菱電機の共通スマートフォンアプリケーションプラットフォーム“MyMU(マイエムユー)”上で動作するIH(Induction Heating)クッキングヒーター操作支援アプリケーションをそれぞれ新たに開発することでIoT機能“調理アシスタント”を実現し,レンジグリルIHをより使いやすくして,更に高度な機能も容易に使いこなせるようにした。

7.

特殊環境対応LED照明器具(PDF:871KB)

水野康太/新井達也/樋口暁紀/天羽裕史/山内 豪

近年,地球温暖化に対する環境意識の高まりや,電力不足や電力価格高騰を背景とした省エネルギー要求が高まっている。また,国連環境計画での“水銀汚染防止に向けた国際的な水銀規制に関する新条約”によって,2021年以降に水銀を使った製品の製造や輸出入が禁止になったため,水銀を含む金属蒸気を光源とするHID(High Intensity Discharge)ランプからLEDへの置き換えが大きく加速している。
このような状況下で,湾岸クレーンや組立工場などLED照明器具への置き換えが困難な特殊環境でも顧客ニーズが高まっている。三菱電機は,器具設置場所の環境ストレスを詳細に調査・分析することで,特殊環境に適合した評価基準の策定と構造設計を行い,クレーン用耐振・耐衝撃及び耐硫化モデルのLED照明器具を開発した。

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