2024年03月号

特集 「パワーデバイス」

三菱電機技報 2024年03月号

巻頭言
2120年に向けたパワー半導体技術
巻頭論文
パワーモジュールの最新動向と展望
特集論文
全5編
社外技術表彰

特集概要

"Energy-Wise society" この「カーボンニュートラリティ」と「持続可能性」を実現する、エネルギーを賢く使う社会を作り出すには、パワーデバイスの進化は必要不可欠です。三菱電機はパワー半導体を主力製品の一つと定めており、電力システム、電鉄、自動車、家電など、あらゆる分野で活用の範囲を広げています。本号では、分野ごとに必要とされる性能を踏まえた当社パワーデバイスの展望や最新技術動向などについて紹介します。

巻頭言
巻頭論文
2.

パワーモジュールの最新動向と展望(PDF:820KB)

岩上 徹/野口宏一朗

2050年のカーボンニュートラル実現に向けて,再生可能エネルギーの拡大と,あらゆる分野での省エネルギー化が急務になっている。その実現のため,パワーエレクトロニクスに関連する技術開発が注目されている。三菱電機の主力製品の一つであるパワー半導体は,電力システム,電鉄,自動車,家電など,あらゆる分野での適用が広がっている。用途の多様化と高性能化によって,パワー半導体の改善には幅広い技術と高度な設計技術が必要になっている。

特集論文
(全5編)
3.

車載用パワーモジュール“J3シリーズ”(PDF:881KB)

河面英夫/所附武志/東 幸幹/米山 玲

近年,脱炭素の各国の政策として自動車の電動化が全世界で加速しており,2030年には世界の新車市場でのEV(Electric Vehicle)車のシェアがガソリン車のシェアを上回ることが予想されている。電動車の普及ではエネルギー効率の改善が必要条件であるため低損失のパワーモジュールが求められている。近年では小型,高効率による長航続距離化,バッテリー搭載量削減が期待できるSiC(シリコンカーバイド)デバイスを搭載したパワーモジュールが各自動車メーカーで採用され,順次市場投入されている。
三菱電機は,高効率なSiCデバイスを搭載した高効率なパワーモジュールファミリーである“J3シリーズ”を開発中であり,世界の電動化に貢献していく。

4.

SLIMDIPシリーズのラインアップ拡充と将来展望(PDF:682KB)

牧島 仁/髙倉一希/浜崎海翔

三菱電機は,1997年からパワーチップとそれを駆動するICチップを内蔵したトランスファーモールド構造の“DIPIPM”を製品化しており,1パッケージ化による品質向上及びインバーターシステムの設計負荷軽減に貢献してきた。2015年に業界最小(注1)のパッケージを実現した“SLIMDIP-S”“SLIMDIP-L”を発売して以降,高キャリア周波数駆動に適した“SLIMDIP-W”,ノイズ低減を実現した“SLIMDIP-X”,最大定格30Aの大電流化を実現した“SLIMDIP-Z”とラインアップを拡充させた。近年,多機能・高性能化しているエアコンや,洗濯機,冷蔵庫など家電製品の省エネルギー化に貢献している。
(注1) 2015年4月23日現在,当社調べ

5.

LV100パッケージ製品の再生可能エネルギー市場向け製品展開(PDF:656KB)

宮原 聡

化石燃料の代替として注目される再生可能エネルギー電源は,単機当たりの出力性能を向上させることによって発電電力を低資源かつ効率的に供給できる。出力性能向上には,電力変換装置の大電流・高電圧化が必要であり,そのコアパーツであるパワーモジュールがより小さい電力損失で発熱を抑えて,かつ安全に動作することが求められている。
三菱電機は,低電力損失である第7世代IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を業界標準であるLV100パッケージに搭載した製品を展開している。中でも,2.0kV及び1.2kV耐圧の製品は,太陽光発電や蓄電池,風力発電システムの大電流・高電圧化の技術動向に適応した製品としてその付加価値向上に貢献している。

6.

高耐圧SBD内蔵MOSFETモジュールのサージ電流耐量向上(PDF:793KB)

沖元 慈/廣中陽一/羽鳥憲司/菅原勝俊

ワイドバンドギャップ半導体として注目されるSiC(シリコンカーバイド)材料を適用した製品として,新たに高耐圧SBD(Schottky Barrier Diode)内蔵MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect-Transistor)モジュールを開発した。SBD内蔵MOSFETはSiC製品を扱う上で重要な信頼性課題であるバイポーラ劣化のリスクを最小化し,高い製品信頼性を提供する。一方で,一般的にSBD内蔵MOSFETはサージ電流耐量が低いという欠点があることが広く知られていた。三菱電機はSBD内蔵MOSFETのサージ電流耐量を向上させるための新たなデバイス構造を開発した。これによって,SBD内蔵MOSFETモジュールのサージ電流耐量をバイポーラデバイスである従来のSi(シリコン)製品と同等以上にまで向上させた。

7.

短絡耐量制御を実現するSiCトレンチMOSFET構造(PDF:707KB)

福井 裕/菅原勝俊/足立亘平

近年の環境意識の高まりを受けて,パワーエレクトロニクス機器の省エネルギー化が求められており,SiC(シリコンカーバイド)を材料としたパワーデバイスの開発,製品化が進められている。中でもより低損失化が可能なトレンチ型のSiC-MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)への期待が高いが,トレンチ型SiC-MOSFETは導電性が高いため素子短絡時での短絡耐量を確保することが非常に困難であった。スイッチング素子としての幅広いアプリケーションに対応するためには,デバイス構造設計の中で短絡耐量を制御することが重要である。
今回,三菱電機で開発を進めているトレンチ型SiC-MOSFETのデバイス構造を改良し,低抵抗化と高短絡耐量化のトレードオフ制御が可能なトレンチ型SiC-MOSFETを実現した。

社外技術表彰

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