2025年06月号
特集 「持続可能な社会を実現するインフラソリューション」
- 巻頭言
- 持続可能な社会の実現に向けた三菱電機への期待
- 特集論文
- 全8編
特集概要
三菱電機グループは、事業を通じて社会課題を解決するという原点に立ち、持続可能な社会(サステナビリティ)の実現を経営の根幹に位置づけています。インフラビジネスエリア(IBA)では、世界の重要インフラの安定稼働とカーボンニュートラルの実現、日本・アジアの安全保障への貢献を通じて、これらの課題解決に寄与することを“ありたい姿”としています。
本号では、IBAのうち電力システム事業を中心に、熱関連トータルソリューション、需要家向け環境価値管理ソリューション、送配電事業者向けデジタルエナジープラットフォーム、デジタルデータを活用した発電所・変電所向け運用・保守ソリューション、及び電鉄車載用直流高速度遮断器等の開発状況について紹介します。
巻頭言 | |
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特集論文 (全8編) |
2.
澤村亮太/野中美緒 三菱電機は,電力と熱のエネルギーコスト削減と脱炭素化の推進に貢献する“熱関連トータルソリューション”の提供を開始した。このソリューションでは,顧客の課題を明確化するコンサルティングから,データ分析,設備ごとの熱システム設計,電化に寄与する給湯・産業冷熱機器の提供,エネルギーマネジメントシステムによる電力と熱エネルギーの効率的な運用支援までをワンストップで提供する。これによって,製造業やビルオーナー,熱供給事業者の課題を解決し,電力と熱のエネルギーコスト削減と脱炭素化の推進に貢献する。 |
3.
電力供給の脱炭素化を実現する小売電気事業者向け環境価値管理ソリューション(PDF:998KB) 今堀光恵/森川史也/高田一輝 カーボンニュートラルの実現に向けて,GHG(GreenHouse Gas)プロトコル(1)やRE100(Renewable Energy 100%)(2),24/7 CFE(24/7 Carbon Free Energy)(3)等が注目されている中,需要家の間で脱炭素化のニーズが急速に高まっている。このニーズに対応するため,小売電気事業者が提供する環境価値付き電力メニューのラインアップは多様化し,販売件数も増加している。その結果,小売電気事業者にとっては,再生可能エネルギー(以下“再エネ”という。)電源と需要家の紐(ひも)付けや非化石証書の管理等,環境価値にまつわる業務の煩雑化が課題になっている。このような状況を踏まえて,三菱電機では“電力取引”及び“需給管理”を総合的に扱う電力市場向け製品“BLEnDer(注1)”シリーズの一つとして,電力の環境価値を管理する機能を備えたクラウド型SaaS(Software as a Service)製品“BLEnDer CN for Supplier”(以下“CN for Supplier”という。)を開発し,小売電気事業者の業務負荷削減及びヒューマンエラー防止に貢献するとともに,保有する環境価値を最大限活用できるよう支援するサービスの提供を開始した。 |
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4.
送配電事業者向けデジタルエナジープラットフォーム(PDF:1097KB) 加藤直人/倉門浩二/清宮悠生 三菱電機は,送配電事業者向けに託送料金算定パッケージ(BLEnDerTS(注1))などの基幹業務システムを提供し,送配電業務の円滑な遂行に貢献している(1)。一方,送配電事業は,レベニューキャップ(注2)への対応や再生可能エネルギーの拡大,サービスレベルの向上など,次世代に向けた業務改善を必要としている。このような送配電事業の課題に対して,従来のようなスクラッチ開発をベースとした製品提供ではなく,サービス提供に向けた,送配電事業者向けデジタルエナジープラットフォーム(以下“送配電デジタルエナジープラットフォーム”という。)の開発を進めている。 |
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5.
石坂 光 総合水力制御所システムは,水力発電に関わる水力設備の状態を24時間365日常時監視し,水力設備を合理的かつ効率的に運用して,良質な電気を安定的に供給する制御系システムである。システムへの信頼性向上とコスト削減の要求が高まり続けている中,三菱電機は,運用者が業務に当たる複数の運用拠点と監視制御処理を実行するサーバー群の設置拠点を分散配置した広域監視制御部分散型システム(1)や,更に多重化したサーバー間を高度に広域連携することによって運用拠点とサーバー拠点の縮小を実現した拠点集約型システムなど,これまで培ってきた総合水力制御所システム技術とノウハウ,さらに水力設備の監視制御に特化した新たな機能を開発した。 |
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6.
デジタル信号処理を適用したNIS/ICIS後継機種の性能評価(PDF:1197KB) 田中隆己/小西 遼/東 哲史/笹野 理/卞 哲浩 カーボンニュートラル社会の実現に向けて原子力発電が注目される中,三菱電機では今後の原子力事業の持続的な発展を目指して,新たな取組みとしてデジタル信号処理技術を積極的に導入した加圧水型原子炉(Pressurized Water Reactor:PWR)向け核計装設備の後継機種を開発している。 |
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7.
変電所のデジタル化と系統運用高度化を実現するデータ利活用(PDF:1239KB) 北山匡史/片柳康孝/佐藤光馬/小田和弘 2050年カーボンニュートラルの実現に向けてGX2040ビジョンの下で脱炭素化を推進する中で,再生可能エネルギー(以下“再エネ”という。)の大量導入に加えて,再エネの大量導入を支えるための送配電網の整備や調整力の確保など系統安定性の確保が重要である。変電設備の効率的な運用や高経年化への対応のため,系統運用データ及び設備保全データを収集し,設備・系統運用について人手をかけずに監視し,異常時の迅速な対応が求められる。そのためには,収集したデータの分析と活用による運用者の判断支援がますます重要になる。 |
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8.
デジタルデータの多様化・高度化に対応するための地理情報システムの取組み(PDF:1138KB) 中島 健/泉 翔太 設備の老朽化,自然災害の激甚化,グリッドの複雑化等の社会インフラを取り巻く課題に対して,デジタル地図上で位置情報や空間情報(位置情報の時間的な変化に関連した情報)を統合的に分析・可視化し,設備保全,レジリエンス対応,系統設計等を効率的に高度化することが求められている。これらに加えて,三菱電機では,3Dや点群データ等の新たなデータタイプに対応するための地理情報システム(Geographic Information System:GIS)を提供している。 |
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9.
佐々木 央/仲田知裕/上松航星/松村康平/田中 翔 直流電流を動力源とする電鉄車両には,短絡故障や過電流から電気設備を保護するための直流高速度遮断器が搭載されている。三菱電機は,2016年度に開発した電鉄変電所向け直流高速度遮断器(1)(2)で培った“気中遮断器による直流電流の高速遮断技術”を基に,高速遮断性能とメンテナンス性能に優れて,軽量化を実現した,電鉄車両に向けた電鉄車載用直流高速度遮断器を開発・製品化した。 |