開発NOTE

いままでにない
共通鍵暗号をこの手で。

いままでにない共通鍵暗号をこの手で。

情報技術総合研究所 内藤 祐介情報技術総合研究所 内藤 祐介

入社後、共通鍵暗号の研究開発をメインで続けてきました。国内外で広く普及している当社の「MISTY®」や「Camellia®」に続く、新しい共通鍵暗号をこの手でつくりたい、そんな思いを持って研究開発に励んできました。

いま共通鍵暗号の分野ではIoTに対応する認証暗号アルゴリズムなどの研究開発に世界中がしのぎを削っています。当研究所でも全力で取り組んでおり、論文作成やアルゴリズム設計など、アカデミックな分野は私が中心となって進めています。暗号の設計指標には安全性、高速性、小型化、利便性などがあります。どの指標に重きを置くかは、実装する機器の種類などによって決まってきます。それぞれの指標についてトップを目指して設計を行っていますが、IoTデバイスへの適用などを考慮し、当社では特に小型化に注力しています。

実装サイズを最小化した究極の小型暗号が「SAEB」です。

小型化を目指す上で、目標としてきたのは実装サイズを理論限界まで最小化することです。実装サイズが小さくなれば、IoTデバイスや実装環境に制限のある機器でも使いやすくなるだけでなく、より安価で暗号を実装できるようになります。それにより暗号の利用がさらに進めば、社会全体のデータセキュリティーの向上に貢献できると考えています。

ブロック暗号のメモリサイズは決まっており、その分のメモリは必ず必要です。そのため小型化するには、利用モードで使用するメモリをどこまで減らせるかが勝負になります。当社では「SAEB」という認証暗号アルゴリズムを発表しており、この暗号のメモリサイズはブロック暗号のメモリサイズ+0bitです。つまりブロック暗号のメモリ以上のメモリを必要としない究極の小型暗号で、ひとつのメモリをブロック暗号と利用モードで共用することにより実現しています。実装サイズを理論限界まで最小化するというこれまでの目標のひとつの到達点だと言えます。

「SAEB」は小型化に特化した暗号ですが、今後は安全性を担保しつつ、高速な暗号、利便性の高い暗号など、バリエーションをもっと増やし、より多くの機器に暗号を適用できる技術を開発していきたいと思っています。