開発NOTE

人の動きを一番表す
「骨格」に着目しました。

人の動きを一番表す「骨格」に着目しました。

情報技術総合研究所 草野 勝大情報技術総合研究所 草野 勝大

私たちは、作業映像を分析する技術を開発しています。これまでも映像に含まれる動き情報から作業時間を計測する取り組みを実施してきました。作業時間を計測するためには、人の動きを正確に捉える必要があるのですが、映像に含まれる動きには、人以外の動きに影響を受けてしまうという課題がありました。 

人の動きを一番表すのは骨格です。骨格を抽出すれば、人の動きを正確に捉えることができるはず、そのような発想が開発を始めたきっかけです。骨格の抽出はカメラさえあれば、二次元の画像からAIが行います。モーションキャプチャーのように体にマーカーを付けて特別な撮影をする必要はありません。普段の作業風景を撮るだけでよいのです。

少ない学習量でも正確で速い判別、「Maisart®」ならではです。

「骨紋®」はAIの一種である教師あり学習という手法を利用しています。作業内容を判別するためには、事前に学習が必要になりますが、「骨紋®」は同じ工程を10回程度行い、「いまネジ締めをしている」といったタグを映像に付け、それを覚え込ませるだけです。少ない学習量で正確に速く判断できる、これは当社のAI「Maisart®」の大きな特長のひとつです。

何をどれだけ学習させればよいのか、見極めに苦労しました。

何をどれだけ学習させればよいのか、見極めに苦労しました。

当社はこれまでもAIの研究開発に取り組んできましたが、「骨紋®」の開発にあたっては、どんな情報をどれだけ学習させればいいのか、勘所がつかめず苦労しました。 骨格のどの部分にポイントを置いて学習させればいいのか、また映像は秒あたり数十コマ(フレーム)の静止画で構成されていますが、どれくらいのコマの骨格情報を学習させればよいのかなど、見極めに多くの時間を費やしました。学習量を多くすれば認識精度は上がりますが、処理速度は遅くなります。精度と速度のバランスがとても難しかったです。

AI開発にとって、学習のための素材集めは重要なポイントです。その点、当社は全国に多くの工場を有し、多種多様な製品の製造を行っており、色々な映像をいただくことができました。それらがあったからこそ、精度・速度ともに優れた技術に仕上げることができたと思っています。

将来的には一般行動分析にも展開していきたいと考えています。

「骨紋®」は2020年10月に、作業時間の自動計測に特化し、製品として販売を開始しました。開発を始めたのは2017年です。これほど早く製品化できたのは、この技術に対する高い評価と期待の表れでもあり、とてもうれしく思います。これからもお客様にとってより使いやすい製品づくりを目指して、改良を重ねていきたいと思います。当面の課題は、手順抜けなどの検出精度を高め、製品に組み込むことです。

骨格を使って人の動きを分析する技術は、最近色々なものがあります。その多くは例えば、腰が曲がっている、手を伸ばしているなど、人の姿勢を分析するものです。「骨紋®」はネジを締める、部品を手に取るといった、細かい動作まで検出できます。

将来的には、「骨紋®」を一般行動分析にも展開していきたいと考えています。人のおかしな行動、あやしい行動を捉えることで、セキュリティーの分野でも大きな可能性を秘めていると思っています。