開発NOTE

モビリティ開発の視点から見て、
とても便利なサポーターだと思う。

モビリティ開発の視点から見て、とても便利なサポーターだと思う。

先端技術総合研究所 山隅 允裕先端技術総合研究所 山隅 允裕

私は、今回のシステムでモビリティの試作機開発を担当しています。モビリティ開発の視点で言うと、制御にダイナミックマップのような概念を取り入れるのはとても便利です。

今まではセンサーなどでモビリティ自身が地図をつくるのが主流でした。この場合、そこに何かあることはわかっても、それが通路か部屋か、壁かドアかなど、そこまではモビリティにはわかりません。また、ドアが開いたり閉じたりなど、地図の状態が変わることも不具合の要因として忌避されています。ビル内ダイナミックマップには、モビリティ自身では知り得ない情報が事細かに含まれています。特にエレベーターは、外からでは運転状況はわかりません。それをビル内ダイナミックマップを使えば、何号機のエレベーターの前に待機していればすぐにエレベーターが来る、といったことがわかるのです。

近年、モビリティは急速に進歩していますが、複雑な構造のビルの中を移動するといった面では多くの課題を残していました。モビリティ自身で人やモノを避けることはだいぶできるようになってきましたが、見える範囲でしか避けることはできません。例えば、曲がり角の先に何があるかはわかりません。先読みをして動くためには助けが必要になります。それを可能にするのが今回の技術です。

プラットフォームがサポートすることで、モビリティがもっと賢くなれる。

プラットフォームがサポートすることで、モビリティがもっと賢くなれる。

この開発で目指しているのは、より多くのメーカーのモビリティに利用してもらえるプラットフォームにすることです。メーカーによって移動制御アルゴリズムや搭載されているセンサーなどは千差万別です。開発に際しては、現在のモビリティにどんな機能が標準的に搭載されているのか、数年後にはどんな機能が搭載されそうなのかなど、技術の動向を分析し、試作機に反映しました。そのために少しでも多くの情報を得たいと思い、メーカーの方に直接お話をうかがったりもしました。このプラットフォームを将来、より汎用性の高いものにするためです。

通常、モビリティメーカーの場合、課題があればモビリティ自体を賢くすることで解決しようとします。それに対して、この技術はモビリティの困り事に対し、プラットフォームがサポートすることで課題を解決していただくという考え方です。ビルシステムの分野で、人の移動をサポートする実績を積んできた当社ならではの技術だと思います。

この技術は、まだまだ広がる可能性を秘めています。

今回の開発ではビル設備、ビル内ダイナミックマップ、モビリティと、色々な分野の開発者が連携する必要がありました。当然、考え方の違いはありますが、自分の考えに固執せず、頭を常に柔軟にし、互いを理解することが大切だと改めて思いました。議論することも多くありましたが、こういう苦労があったからこそ、ビル設備の視点、モビリティの視点、それぞれを尊重することで、ビルの施主や管理者にも使いやすい、モビリティメーカーにも使いやすいシステムになったのではと思っています。

今回のシステムをデモで披露すると、いずれこういう社会が来るだろうと想像はできたものの、実際に走行するモビリティを見ると皆さん未来を感じられるようです。この技術にはまだまだ先があります。例えば、屋外の交通管制システムや公共交通機関のシステムと連動することで、屋内・屋外でもモビリティがもっと賢く、人の仕事や移動をサポートする時代が来るかもしれません。

この技術は、まだまだ広がる可能性を秘めています。