稼働中のFA機器をリアルタイムで調整し、
生産性向上に貢献。

MaisartMaisart関連技術「Maisart」

技術紹介

近年、市場の動きなどと連動し、製造する製品の品種・量が変動する変種変量生産への対応が求められています。そのためには製品毎にFA機器のスピードや工具の回転数などを細かく調整する必要があり、人手・時間を要し、生産性が低下するという課題がありました。また、労働人口の減少によりFA機器を調整できる熟練作業者の不足という課題にも日本のモノづくりの現場は直面しています。

三菱電機では、当社のAI技術「Maisart®(マイサート)※1」の一つとして、国立研究開発法人 産業技術総合研究所(産総研)と共同で、製造現場の環境変化や加工対象物の状態変化を予測し、稼働中のFA機器をリアルタイムで調整するAI制御技術を開発しました。これにより、今まで人手・時間がかかっていたFA機器の調整を自動化できます。

FA機器をリアルタイムでAI制御する上で重要になるのは、信頼性です。AIの推論結果にバラツキがあれば、加工品質の低下などにつながります。本技術はAIが推論結果の信頼度を指標化し、信頼度に応じてFA機器を適切に制御するため、様々な加工環境下においても信頼性の高い安定した動作が可能です。このような高い信頼性に加え、AIによる高速での推論、環境への柔軟な対応力により、本技術は変種変量生産が進む製造工程における生産性向上に貢献します。

※1Mitsubishi Electric's AI creates the State-of-the-ART in technologyの略。
全ての機器をより賢くすることを目指した当社のAI技術ブランド。

CNC切削加工機において、信頼性の高い誤差補正を実現。

AIの推論結果の信頼性を高めるため、本技術ではAIを実装するFA機器の機械特性などのバラツキを学習することで、推論結果の信頼度を計算できるアルゴリズムを開発しました。

高い信頼性を確保したAI制御技術を適用したのがCNC切削加工機の誤差補正機能です。CNC切削加工機とは、モーターで工具を駆動させ加工対象物を削り出す工作機械です。CNC切削加工機には駆動部位間の摩擦などによって生じる加工誤差で、加工面に傷ができるという課題がありました。この加工誤差は加工形状によって常に変化するため、人の手で全ての加工形状における加工誤差を適切に補正することは非常に困難です。

本機能は加工誤差をAIがリアルタイムに推定します。さらに、その推論結果の信頼度を算出し、信頼できる推論結果のみを補正に用いることで、傷のない綺麗な加工を実現します。本機能により、従来に比べ加工精度が51%※2向上し、安定した加工を実現できることを確認しました。

※2 当社のCNC切削加工機の加工評価において、AI誤差補正機能を適用しない場合との比較。

CNC(数値制御装置):リアルタイムで推論結果とその信頼度を同時に計算

CNC(数値制御装置):リアルタイムで推論結果とその信頼度を同時に計算

産業用ロボットの手先の負荷を高速・高信頼で推定。

産業用ロボットは製造分野のみならず物流分野などでも、省人化・省力化を実現する上で大きな役割を担っています。ロボットの性能を最大限に引き出すには、熟練作業者による長時間のパラメーター調整が必要です。しかし、変種変量生産の現場で稼働するロボットは把持する部品が頻繁に変わります。また物流拠点などでは大小様々な物を把持しなければなりません。そのような環境でパラメーター調整を行うのは、非常に困難になります。

今回、高速推論が可能なAI制御技術の適用例として、ロボットアームの手先にかかる負荷を推定する技術を開発しました。把持する対象が変わっても、リアルタイムでパラメーターを最適化でき、高速かつ安定した動作を実現します。

本技術はロボットが動作した際の位置や電流のデータにより、AIが把持対象物の質量や重心といった値を推定。この負荷パラメーターをもとに、動作の加減速を調整します。また、推論結果と共にその信頼度も算出。ロボットが動作を繰り返す度に推定を行い、推論結果の信頼度が十分に高まってからパラメーターの調整を行うことで、高い信頼性を実現しました。検証実験では従来に比べ、ロボットの動作時間が20%※3短縮することを確認しました。

※3 当社の検証例において、AI加減速制御機能を適用しない場合との比較。

産業用ロボット:高信頼な推論結果を適用して高速で動作

産業用ロボット:高信頼な推論結果を適用して高速で動作

形彫放電加工機の変化する加工環境に柔軟に対応。

FA機器では、加工の進み具体によって加工対象物の形状が変わるなど、加工環境の変化によって、一定の動作パラメーターでは加工時間が長くなったり、加工品質が悪くなったりすることがあります。その一例として形彫放電加工機があります。形彫放電加工機とは、放電現象により電極形状を加工対象物に転写する工作機械です。

形彫放電加工機の場合、加工が進むにつれて変わる加工の深さによって加工環境が変化します。その変化に応じた加工条件の設定は非常に難しく、近年はこのような設定が行える熟練作業者も減少しています。

今回、環境に適応したAI制御技術の適用例として、形彫放電加工機の加工条件を自動調整する機能を開発しました。形彫放電加工機は加工中に電極と加工対象物の間に加工屑が発生します。加工屑が滞留すると加工速度が低下するため、加工屑の発生状態に応じて加工屑を排出する電極の動作が必要になります。本機能では、加工屑の発生状態を加工中にAIが推定し、加工屑排出動作の頻度を自動調整します。本機能により、従来に比べ加工時間を最大23%※4短縮することを確認しました。

※4 当社の形彫放電加工機の加工評価において、AI調整機能を適用しない場合との比較。

形彫放電加工機:加工屑排出動作の頻度を最適化し、加工時間を短縮

形彫放電加工機:加工屑排出動作の頻度を最適化し、加工時間を短縮

SDGsへの取組

  • 働きがいも経済成長も
  • 産業と技術革新の基盤を作ろう

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