R&D NOTE
開発NOTE
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無線通信技術の活用分野が広がりを見せる中、無線搭載機器の小型化へのニーズは高まり、それとともに通信に不可欠なアンテナの置き場所がなくなってきています。
もしも目に見えないアンテナがあれば……三菱電機は、高性能を実現しながら、これまで設置できなかった液晶画面やガラス上にも存在を意識させずに設置することができる「透明アンテナ」を開発しました。開発に携わった2人のキーパーソンに話を聞きます。
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秋元私が手掛けたのは2番目の、ガラス上に設置しても目立たず、高性能を発揮する透明アンテナの開発で、プロジェクトに加わったのは2021年度のことです。これまで実用的性能には程遠かった透明アンテナを世の中で役立つものとして開発するプロジェクトへの参加に、とてもワクワクしたことを覚えています。
アンテナには給電が必要ですが、アンテナ自体が透明でも給電ケーブルが見えてしまうと、その価値は下がってしまいます。この課題を解決するため非接触で給電できる方式を目指し、試行錯誤を繰り返して、電流損失の少ないアンテナ技術を検討していきました。
解決策となったのは、給電していないアンテナを給電しているアンテナに近づけると、電磁結合給電という共鳴のような現象により動作するというシンプルな考え方でした。
まずは窓枠の金属サッシ上に設置した給電素子から、ガラス上のケーブル接続されていないアンテナに電磁結合で給電し、電波も高い効率で放射することを確認。さらに、電流損失を抑えるために、アンテナの形状をシミュレーションし、四角い透明アンテナに三角形の切り欠きを入れることで、電磁結合を強化し、電流損失を減らすことができました。
他グループの取り組みの共有からブレイクスルーが生まれました
私は計画立案段階からプロジェクトに加わり、その後は、アンテナ用途ではないものの応用的な使い方として3つ目の開発テーマとなった、透明電磁シールドの開発に携わることになります。
この透明電磁シールドは、社内でまだ誰も着手していない研究でした。研究目的はより大きな電力を使う機器に適用できる耐電力向上技術の開発で、強い電磁波を出す機器の代表として電子レンジを対象にしたのです。電子レンジの扉の場合、単に透明導電材料でシールドを作るだけでは電波の影響で高温になり破損などの可能性もあるため問題があります。そこで、電子レンジ使用時の温度など環境面の検討から始め、その中で課題を見つけて、シミュレーションや実験を繰り返しました。
解決のヒントになったのは、2つ目の開発テーマに取り組むグループが思いついた電磁結合の作用を定例会議で耳にしたことです。最終的にシールドを2層のメッシュ構造にすることで、電子レンジ内部の視認性を高めつつ、電力損失を減らすことが可能になりました。
3つの新しい技術を開発し、いまは製品への実装に向けて動き出したところです。透明アンテナは液晶ディスプレイや建物の窓ガラスはもちろん、多種多様な産業においてさまざまな用途適用ができると期待しています。
尖った研究に挑戦できる土壌も、自分の力を地道に高められる風土もあります
学生の頃からアンテナ技術を研究しており、その延長線上で学びを活かせる場として、トップクラスのアンテナ技術を有する三菱電機に第一志望で入社しました。早くも入社2年目から、空中に噴き出す海水の水柱をアンテナとして使う海水アンテナの技術開発に携わることができ、シーズ先行の新しい研究にもどんどんチャレンジできる環境を体感しました。仕事をする場としても、高いレベルの技術を持つ人たちが集まり、より良い方向に導いてくれるので、恵まれた環境だと思っています。
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就職に際して見学したとき、自由に研究できる環境が肌に合いそうだと感じて三菱電機を選びました。
大学時代はアンテナなどの設計に用いるソフトウエアの研究をしていたのですが、実はアンテナそのものには全く触れておらず、入社後初めてアンテナ技術を学びました。また、業務に従事しながら大学院に通い、アンテナの小型化をテーマとした論文を書いて博士号も取得しています。三菱電機にはこのように、自らを高める行動をしっかりバックアップする風土があると実感しています。
────三菱電機の魅力や、三菱電機を目指す皆さんへの思いを教えてください。
チャレンジ精神のある人、未来づくりに共に挑んでくれる人を求めています
「三菱電機には多様なニーズをキャッチできる環境があり、目に見える課題を解決する研究に携われます。また、“こういうことがおもしろそう”といった興味から出発するシーズベースの研究も、将来役立つ可能性が見込まれれば認められるので、常にやりがいを感じながら研究に取り組むことができます。チャレンジ精神のある人、高いモチベーションを持った人にはぜひとも来ていただきたいと思います」
「大学は研究だけで終わりというケースも多いですが、三菱電機では自分が開発した技術を実際の製品化に結びつけ、世の中に広く使ってもらうことができます。私自身、アンテナについては全くの素人として入社したわけですが、いまでは高度なアンテナ技術の製品化に向けた検討に携わっています。自分自身を変え、世界を広げることで、社会の未来も変えていけるのが三菱電機で働く大きな魅力ですので、私たちと一緒になって挑戦してくれる人を歓迎します」
PROFILE

情報技術総合研究所
アンテナ技術部
牧村 英俊
2011年4月入社。コミュニケーション・ネットワーク製作所勤務を経て、2020年から透明アンテナ開発プロジェクトに参加。休日は8歳と5歳の子どもの世話と料理でリフレッシュしている。いまは研究に取り組む電波を用いた生体センシング技術を世に出すのが目標。
2011年4月入社。コミュニケーション・ネットワーク製作所勤務を経て、2020年から透明アンテナ開発プロジェクトに参加。休日は8歳と5歳の子どもの世話と料理でリフレッシュしている。いまは研究に取り組む電波を用いた生体センシング技術を世に出すのが目標。

情報技術総合研究所
アンテナ技術部
秋元 晋平
2012年4月入社。学生時代から引き続き入社後もアンテナに関する研究に従事し、通信機製作所への異動を挟んで、2021年透明アンテナ開発プロジェクトに加わった。自分の名を冠するような技術の開発が夢。休みの日は家族との外出や飼い犬とのランニングを楽しむ。
2012年4月入社。学生時代から引き続き入社後もアンテナに関する研究に従事し、通信機製作所への異動を挟んで、2021年透明アンテナ開発プロジェクトに加わった。自分の名を冠するような技術の開発が夢。休みの日は家族との外出や飼い犬とのランニングを楽しむ。