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量子センシング

産学連携による技術融合で、さらなる可能性を追求

電機メーカーとして製品開発において、電磁界の精密な計測は重要であり、計測結果からモデル構築を行うことで、製品開発の効率化を促進していきます。また、循環型デジタルエンジニアリング企業として、センシングデータから新たな価値を顧客に提供していくことを目指しており、その基盤としても、量子センシングがもたらす高感度センシングに着目しています。三菱電機がもつハードウェア技術と産学連携での技術融合によりセンシング技術の事業適用化を目指しています。(研究開発成果[5])

時空間計測の要素技術として高精度周波数基準の研究(下図)に取り組んでおり、将来的には本技術と量子技術との融合による新たなセンシング・コンピューティングネットワークの構築にも貢献します。

量子センシングのリソース状態

量子センシングにおいてどのような初期状態が有用かを調べました。その結果、対象が線形ハミルトニアンの場合はランダム対称状態を用いてハイゼンベルグスケーリングという最適な精度スケーリングを達成可能ですが、対称性を課さない一般のランダム量子状態を用いる場合は、計測対象を局所的に対角化可能なハミルトニアンに拡げたとしても多くの場合で最適な精度が達成出来ないことを示しました。また、エンタングルメントが大きい量子状態は線形ハミルトニアンを対象とする量子センシングにおいて最適な初期状態ではないことも分かりました。(研究開発成果[2,4])

局所的に対角化可能な2体ハミルトニアンをグラフで図示したものです。頂点が量子ビットに対応しており、辺で繋がれている量子ビット間に相互作用があることを表しています。閉路グラフ、完全グラフなどの正則グラフや線形グラフの場合、ランダム量子状態は最適な初期状態ではありません。

量子センサネットワーク

量子センサネットワークを用いて、複数の位相板が所望の位相を正しく付与する理想的なものか、ランダムな位相を付与する粗悪なものかを二値識別する方法を提案しました。1光子を単純に使用する方法では一定の確率で識別に失敗してしまいますが、1光子を空間的にエンタングルさせたW状態を用いる私達の手法では位相板の数が十分多い時にほぼ1の確率で識別することが出来ます(研究開発成果[3])。

1光子をエンタングルさせずに使用する手法(local)の場合、右図に示す通り1/4の確率で識別に失敗します。一方、エンタングルを用いる私達の手法(nonlocal)の場合、位相板の数が増加するにつれ識別失敗確率が0に漸近していきます。

匿名量子センシング

生体磁気のようなプライバシー情報を含むパラメータを測定する場合、パラメータ自体は高精度に推定しつつそれが誰に帰属するのかは秘匿出来ることが望ましいと言えます。そのような匿名性を達成する手法として匿名量子センシングがあります。従来の匿名量子センシングでは初期状態にエラーが発生しないことを仮定しており、エラーが発生した場合は正しいセンシングが出来なくなる可能性がありました。そこで、私達は初期状態にエラーが発生しているかを検証する方法を組み込むことで、初期状態エラーに対してロバストな匿名量子センシングを提案しました(研究開発成果[5])。

匿名量子センシングの概念図です。配布者(Distributor)が配布する初期状態にエラーが発生した場合に、それを高確率で検知する仕組みを組み込みました。

研究開発成果(2025年度)

  1. [1](センシング・国内発表)尾野 仁深, “量子センシング技術の産業応用と未来展望, ” 電子情報通信学会レーザ・量子エレクトロニクス研究専門委員会, 2025年5月.
  2. [2](量子センシング全般・国際会議)Rina Miyajima, Yuki Takeuchi, and Seiseki Akibue, “Random pure states are not useful in quantum metrology with many-body locally diagonalizable Hamiltonians,” Asian Quantum Information Science Conference 2025 (AQIS 2025), August 2025.
  3. [3](量子センシング全般・論文)Yusuke Machida, Hiroki Kuji, Yuichiro Mori, Hideaki Kawaguchi, Takashi Imoto, Yuki Takeuchi, Miku Ishizaki, and Yuichiro Matsuzaki, “Identification of phase plate properties using photonic quantum sensor networks,” Japanese Journal of Applied Physics, August 2025.
  4. [4](量子センシング全般・プレプリント)Rina Miyajima, Yuki Takeuchi, and Seiseki Akibue, “Existence of universal resource and uselessness of too entangled states for quantum metrology,” arXiv, October 2025.
  5. [5](量子センシング全般・国内発表)葛西 紘人, 谷 誠一郎, 都倉 康弘, 竹内 勇貴, “状態準備エラーに対して耐性のある匿名量子センシング,” 第53回量子情報技術研究会, 2025年12月.