- 藤ヶ谷
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Design X®は10年以上も続いています。本村さんも上甲さんも2回ずつ参加していますよね。
- 本村
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最初は入社後すぐでした。「人とテクノロジーの信頼関係を築く」というテーマです。動物の非言語コミュニケーションをロボットのインターフェースに応用しようと考え、盲導犬の育成施設などを取材して、安心感を与える動作や振る舞いを探りました。
次は「自然模擬照明」です。日照条件の悪い工場やオフィスでも、太陽光のようなベネフィットが得られる照明を作る研究です。
- 上甲
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私の最初のプロジェクトは、心身のコンディションを可視化するセルフケアアプリです。生体データとスケジュールを連動させて、ストレスがたまるとアバターがトゲトゲになったり、鍛えるとムキムキになったり……。2年かけて、実際に動くアプリを作りました。
2回目は3DのVR空間のインターフェースの研究です。家電をデザインする部門の先輩デザイナーが発案したプロジェクトに参加したかたちです。学生時代は工学部で、生体データを活用したロボティクスなどを研究していたので、どちらも、もともとのバックグラウンドに近いテーマです。
- 藤ヶ谷
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自分は自身で立ち上げたのは2024年が初めてですが、2人のプロジェクトとちょっと違うのは、Design X®の活動の中で製品化までやり切ったこと。特に、「研究」ではなく、「事業開発の実践」として取り組むことにこだわりました。
食品メーカーの明治さん、京都にある老舗和蝋燭店の中村ローソクさんと協業して、チョコレートの製造過程で出るカカオハスク(カカオ豆の皮)をアップサイクルした着火剤を開発。〈チャッカカオ〉と名づけて、クラウドファンディングを通じてユーザーに届けました。
- 本村
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藤ヶ谷さんのプロジェクトは、タイトルも「実践のデザイン」で、キックオフの時から販売までやると宣言していたのが異色でしたよね。
- 藤ヶ谷
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そもそも、参加の動機は「危機感」でした。かつてのような大量生産大量消費の時代なら、モノは作れば売れたけれど、今はそうではありません。メーカーの製品開発も慎重になり、世の中に新しいプロダクトを出す機会自体が減っている。
その結果、デザイナーの意識も「世の中に届ける」より、「自分がどうしたいか」という意識やプロセスに閉じているように感じて。だからこそ、「研究する意識だけじゃダメだ」と問題提起したかった。
特に三菱電機のように大きな組織だと、社内の事業本部や工場を通すルートでないと製品開発企画を進めにくい。これではますますハードルが上がるので、そんな社内の常識や前提をいったん捨てて、自分なりのルートを開拓してみようと考えました。
- 藤ヶ谷
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Design X®って、メンバー構成が一番大事じゃないですか? 自分は短期間で販売までやり切るのが前提だったので、猛スピードで走らないと間に合わない。普通のプロジェクトなら信号やブレーキも必要ですが、今回はアクセルとハンドルだけのチームづくりをしました。大変な時も多かったけれど、やりたいことが完全に一致していたから走り切れました。
上司に指示されてやるものじゃないので、放置しようと思えばできてしまう。だから、仲良しの仲間を集めるだけだとバラバラになっちゃう気がします。上甲さんも本村さんも最初は同期のチームでしたよね。なにか苦労はありましたか?
- 上甲
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私の場合、自分自身が発案者なので最初から熱量はあったし、コロナ禍の新人だったので、それほど忙しくなかったんですね。その分、時間と作業量でカバーできた気がします。
- 本村
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メンバーの「熱」がないとどうしようもない。僕もそう思います。
僕も最初のプロジェクトは2年目の同期2人のチームだったので、悩んでいる時間が長かった。結果的に着地できたのは、僕が散らかしたアイデアを、もうひとりがうまくまとめてくれたから。2人とも発散タイプだったらまずかったかもしれません。
- 上甲
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私はVRプロジェクトでDesign X® 運営事務局に相談して、他部署のベテランデザイナーに参加してもらいました。おかげで決断がものすごく速くなったと思います。
- 本村
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自然模擬照明でも、エンジニアリングに強いベテランに加わってもらって開発が加速しました。「自然とは何か」という解釈はそれぞれ違いますが、各自が手を動かしながらイメージをかたちにできた。
あれこれ作りましたが、いくつか有望なプロトタイプができたので、今、関係者と連携して次のステップを検討中です。
- 藤ヶ谷
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自分の場合は「実践」が目的だったので、「何をつくるか」に関してはフレキシブルに考えていました。明治さんに突撃した理由は、明治さんの取り組みに共感したこと、またチョコレートを溶かして固める工程が、家電の樹脂成形プロセスに似ていると思ったから、そしてなによりチョコレートが好きだったから(笑)。短期間で製品化を目指すにあたり、「電気」がなく実現可能な規模感という判断もありました。ただし、社名を冠して外に出す以上、全体設計にはこだわりました。大事にしたのは、三菱電機の技術とデザインを活かしながら、明治さんや中村ローソクさんの思いもきちんと重ねること。単なるリサイクルでなく、和蝋燭の文化を若い世代に伝え、カカオ産地のためにもなるものにしたい。「作品」ではなく「商品」として価値を成立させることを意識しました。それが、バレンタインギフトにもなる「ハートに火をつける着火剤」に結実しました。
- 上甲
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最近は、社外に発信する案件も増えていますよね。
- 藤ヶ谷
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ここ数年、Design X®の出口も広がって、展示会などでも成果物が紹介されるようになりましたね。開発途上のものを社外に出すことにはハードルもありますが、そこを事務局が乗り越えてくれた。おかげで、Design X®から統合デザイン研究所に興味を持ってくれる学生も増えていると感じます。
- 上甲
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それ、まさに私です。統合デザイン研究所のインターンでDesign X®を知ったことが入社動機なので。三菱電機では既存の事業領域にないテーマでも幅広く研究できるんだ、すごい! って。まあ、「自由」といっても、実際には色んな制約があると思っていましたが、実際にやってみると、本当に何もかも自由で。これには感激しました。
もちろん、やってみて分かった大変さもありました。お金や時間の使い方を含め、チームで決めないといけないので、新人の私にはマネジメントが難しかった。先輩や事務局の方にアドバイスをもらいながら、なんとかやりきることができました。
- 本村
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成果物を外部に出すのが前提になると、アウトプットの質も変わりますね。振り返ると、最初の成果物は原理モデルの域を出てなくて、初見の人の興味を惹くほどの完成度はなかったな……と反省しています。藤ヶ谷さんの言うように、「研究」の意識が強かった。
- 藤ヶ谷
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「自由研究」の名の下に、クオリティを突き詰めずに満足する傾向はありましたよね。自分の場合、「研究ではなく、実践します」と宣言して始めたので、やり切る以外の選択肢はなかった。通常業務と両立するのは正直キツかったけど、基本的にやりたいことをやっているから、苦ではない。最終的には「楽しかった!」の一言です。
- 本村
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そうですね。通常業務とは違う頭を使うし、自分がもともと持っているスキルセットを活かせるから、忙しくても単純に「仕事が増えた」という感覚ではなかった。
- 藤ヶ谷
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今、同僚から「違うプロダクトで販売までやってみたい」という相談を受けています。これはめちゃくちゃ嬉しい。できる限り力を貸したいと思っています。
自分でやってみて実感したのが、Design X®は、「社内に問いをぶつける媒体」になること。モヤモヤを抱えているなら、まず、自分でやってみる。それによって周囲の考えや行動を変えていけるんです。
- 本村
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「前向きに失敗できる」のもいいですよね。通常業務では試しにくい実験的なプロセスも、Design X®なら挑戦できるし、失敗しても次に活かせます。
- 上甲
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私の場合、「自分が生きやすくなる」ためのツールとして活用した面もあります。ロボット工学とか生体データとか、デザイナーとしてはちょっと変わった専門領域も、Design X®を通じて周囲に知ってもらえる。それをきっかけに得意領域の仕事が回ってくるんじゃないかと。
実際、種まき活動としてすごく効果がありました。生体データ活用の案件が舞い込んできた時には声をかけてもらいましたし、3DVRも正式な研究テーマに組み込まれて、製品化の道筋を探るプロジェクトにアサインされました。
- 本村
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ちょっと大きな話になりますが、日本全体の製造業の閉塞感や停滞感を突破できるのは、効率性や経済合理性よりも、むしろ個人の「熱」が大事になってくると思っています。堅実な仕事と並行して、個人の熱量のあるところでオルタナティブなシナリオを描き続けることがその突破口になるかもしれない。Design X®はまさにそのための場だと思います。だからこそ、「楽しい」だけで終わらせちゃいけない。
- 藤ヶ谷
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そもそも世間の当たり前に疑問を持って、問いかけていくのがデザイナーの役割ですよね。デザイナーであることを忘れないためにも、業務を超えた場で問い続けていくことが重要だと思っています。
「Design X」は三菱電機株式会社の登録商標です。
三菱電機株式会社 統合デザイン研究所
デザイナー
藤ヶ谷 友輔
2011年入社。
家電やエアコンなど多数のプロダクトデザインを手がけた後、現在はインフラ系の事業開発案件などを手がける。2024年度のDesign X®で、カカオ豆の皮をアップサイクルした着火剤<チャッカカオ>の製品化に取り組んだ。
三菱電機株式会社 統合デザイン研究所
デザイナー
本村 祐貴
2018年入社。
空調・換気設備のデザインを担当。Design X®には入社2年目に初参加したほか、2022〜2023年度には「自然模擬照明」の開発に取り組んだ。現在、製品化を目指し関係者と連携中。
三菱電機株式会社 統合デザイン研究所
デザイナー
上甲 志歩
2020年入社。
エネルギーシステムやセキュリティシステムなどBtoB向け製品のUIデザインを担当。大学、大学院は工学部でロボティクスの研究にデザイン思考を活用し、入社後はDesign X®で新しい研究領域を切り拓いた。



