Factory Automation

情熱ボイス

【EcoMonitorPlus篇】コンセプトは「省エネ」+「予防保全」
製品コンクールで国土交通大臣賞を受賞

2016年9月公開【全3回】

第1回 若手中心の開発メンバーで挑む

 1943年の操業以来、電力計や配電保護機器、電力計測制御システムといった産業や社会を支える“電気”に欠かせない機器・システムを中心に、開発・製造に取り組んできた広島県福山市の三菱電機福山製作所。この福山製作所で誕生したエネルギー計測ユニットの最新モデル「EcoMonitorPlus」が、2016年6月に日本電設工業協会が主催した「JECA FAIR 2016」の製品コンクールで国土交通大臣賞を受賞した。

 「EcoMonitorPlus」の開発プロジェクトでリーダーを務めた福山製作所 計測制御製造部 エコファクトリー技術グループマネージャーの下江政義は、「工場やビルなどの省エネ支援という従来からのエネルギー計測ユニットの用途を超えた、「省エネ+予防保全」の新たなコンセプトで訴求した点が評価されたのだろう。2003年に発売した前モデルEcoMonitorProも国土交通大臣賞を受賞しているので、とりあえずホッとした」と相好を崩す。

12年ぶりに大幅モデルチェンジ

 エネルギー計測ユニットは、工場やビルなどの電力消費量を“見える化”し、省エネを支援する機器だ。電力会社向けの電力計を製造していた福山製作所が、その技術を生かして開発した、工場やビル向けの計測ユニットを初めて発売したのは、1998年のことだ。その後、複数の回路の電力消費量を一度に計測できる「EcoMonitorⅡ」を2002年に発売。2003年には最大7回路まで計測できるなど、機能を向上させた「EcoMonitorPro」を発売した。2013年に単回路向けの低価格タイプを発売しているが、2015年12月に発売した「EcoMonitorPlus」は、「EcoMonitorPro」以来12年ぶりに大幅モデルチェンジした製品となる。

12年ぶりに大幅モデルチェンジ

 2013年2月に発売した「EcoMonitorLight」の開発が終了すると、計測制御製造部エコファクトリー技術グループのメンバーは、エネルギー計測ユニットの大幅モデルチェンジに向け、さっそく動き出した。「EcoMonitorPro」に「どんな新機能を搭載すれば、ユーザーに受け入れてもらえるのか」。まだ正式なプロジェクトは発足していないものの、下江や同グループ専任の松岡靖教らが「EcoMonitorPro」発売以降にユーザーから寄せられた改善要望をじっくりと読み直し、必要な機能を集約していった。

 そして2013年12月、開発開始に先立って、この計測ユニットに関わる設計や営業などのメンバーが集まり、「開発ワーキング」と製作所内で呼ばれる会議が開かれる。この会議では、下江らが提示した骨子案を基に議論を行い、以下のような目標を設定した。

・「EcoMonitorPro」は計測できる回路数を購入後に増やすことはできなかったが、計測ユニットを後付け可能とすることで、購入後も段階的に回路数を拡張できるシステムとする
・電流センサーの接続に専用ケーブルではなく、手に入りやすい汎用ケーブルを採用し、使い勝手を向上する
・従来製品からの置き換え需要も見込めるので、「EcoMonitorPro」の設置場所でそのまま使えるよう、製品の幅は従来と同サイズにする
・計測データ処理周期を前モデルの250msから100msへ高速化する
・端子台の形状や配置を見直し、配線作業のしやすさを追求する
・アメリカ向けのUL規格をはじめとした海外規格へ対応する
などである。

12年ぶりに大幅モデルチェンジ

「自分の思うようにやれ」

 そして、2014年3月、10人ほどのメンバーを選定し、正式に次期エネルギー計測ユニットの開発プロジェクトがスタートする。リーダーを務めるのは、当時はエコファクトリー技術グループ専任だった下江だ。下江は「EcoMonitorLight」開発の際にも、リーダーとしてチームを率いた経験をもっている。

 ただし下江は直後の2014年4月にグループマネージャーに昇進して管理職となり、開発の第一線からは離れなければならなくなる。プロジェクトのリーダーである点は変わらないが、「企画立案などには関わるが、どちらかというとアドバイザー的な立場となった」(下江)。

「自分の思うようにやれ」

 下江に代わって、現場のリーダーとして開発の取りまとめを任せられたのが松岡だ。松岡も「EcoMonitorLight」開発プロジェクトに下江のもとで参加しており、下江との付き合いは長い。

 松岡は不安を感じた。下江が現場を離れたことで、開発はモデルチェンジを経験したことがない若手が中心にならざるを得ないからだ。

 その不安をぬぐうため、下江は松岡にこう声をかけた。

 「まずは、メンバーの意見も聞きながら自分の思うようにやれ」

もしも何かトラブルが起きれば、サポートする。そんな思いを伝えた。

 「この言葉のおかげで、自分一人で抱え込まなくてもいいんだと思えた」
松岡はそう振り返る。

「自分の思うようにやれ」

一覧に戻る