Factory Automation

情熱ボイス

【EcoMonitorPlus篇】コンセプトは「省エネ」+「予防保全」
製品コンクールで国土交通大臣賞を受賞

2016年9月公開【全3回】

第3回 トラブルを未然に防ぐ

 プロジェクトチームのメンバーがそれぞれ設計に悪戦苦闘する中、現場のリーダーを任された松岡は仕様固めにも奔走する。松岡が頼りにしたのは、同じ三菱電機社内にいるエネルギー計測ユニットのユーザーたちだった。松岡は姫路製作所(兵庫県姫路市)、通信機製作所(兵庫県尼崎市)、電力システム製作所(兵庫県神戸市)、高周波光デバイス製作所(兵庫県伊丹市)などの担当者を訪れては、エネルギー計測ユニットの評価を聞いて回った。各担当者とはこれまで面識はなかったものの「社員同士という言いやすい立場で率直な意見をもらった」と松岡は感謝する。そこで得られたニーズを基に、仕様を固め、また新たな機能も盛り込んでいった。

トラブルを未然に防ぐ

 2015年4月、プロジェクトチームに新たなメンバーが加わった。九州支社の技術営業から2年ぶりにエコファクトリー技術グループへ復帰して、ソフト開発に携わることになった野邊勇樹である。復帰とはいえ、プロジェクトが佳境を迎えつつある時期から参加した野邊は「やはり最初はわけがわからず苦労した」という。しかし、野邊は同じソフト担当で1歳年長の成井と馬が合い、成井と積極的にコミュニケーションをとることで急速にチームになじんでいった。

 この頃には新モデルの試作もほぼ完了し、プロジェクトチームのメンバーは、試作機の評価、改良というプロセスを繰り返しながら、製品の完成度を高めていった。

トラブルを未然に防ぐ

長子の出産に立ち会えず

 そしてこの夏、メンバーにとって決して忘れることのできない二つの出来事が起きる。

 一つは、2015年8月に回路設計を担当する平方に初めての子が誕生したことだ。だが、平方はその時、「ちょうど問題が見つかったタイミングだった」。評価過程で浮上したトラブルの原因を突き止めるため、問題を一つひとつつぶしていかなければならず、平方は悩んだ。結局「生まれたのは火曜日で、ようやく初めて会えたのは土曜日だった」。

 「『EcoMonitorPlus』はそうした苦労の末に生まれた、自分にとっては“第二子”のようなもの」。平方は照れながら、こう話してくれた。

 もう一つは、若手中心というメンバー構成に不安を抱いていた松岡の方針が功を奏し、大きなトラブルを未然に防げた出来事だ。

 開発経験の浅い若手技術者は、当然ながらトラブルに遭遇した経験も乏しく、トラブルを予知することは容易ではない。そのことを危惧した松岡は、試作品の評価を行う品質保証部門の担当者に「どんな小さいことでもいいから、気になることがあったら、すぐに連絡してほしい」と頼んでいた。

長子の出産に立ち会えず

 「EcoMonitorPlus」のある性能を評価するために、担当者が計測値をモニターしていた時のことだ。その担当者が「計測値の更新が遅い時があるような気がする」とプロジェクトチームに連絡してきた。計測値の更新スピードは、その時の評価項目ではなかったが、担当者は松岡の頼みを覚えていたのだ。

 プロジェクトメンバーがすぐに詳しく調査したところ、評価担当者の指摘が正しいことが判明した。「EcoMonitorPlus」は、計測処理を前モデルの250msから100msに向上することを、大きな特徴の一つとしていた。しかし、特定の条件が重なると、処理が遅れることがあることが分かったのだ。

長子の出産に立ち会えず

 「このタイミングで見つけていなかったらスケジュールに致命的な遅延が生じたかもしれない厄介な問題だった」と野邊は述懐する。

「予防保全」を積極的にPR

 営業部 省エネソリューション課の徳永健佑は、こうした開発・評価をにらみつつ、“売る”ための作業を進めていった。2014年入社の徳永にとって、「EcoMonitorPlus」は初めて本格的に担当した製品である。それだけに、経験は浅いものの、この製品には強い思い入れがあった。

 本格発売を前に、徳永は古くからのエネルギー計測ユニットのユーザーに、「EcoMonitorPlus」を試用してもらい、評価を集める作業に没頭した。「ユーザーからの声の中には『漏洩電流も一緒に測れる装置は珍しい』というものもあり、開発コンセプトの狙い通りの評価が得られた。それで自信をもって発売できた」と徳永は言う。

 10月に始まった量産体制の構築にも苦労を強いられたが、2015年12月、最終計画通りのスケジュールで「EcoMonitorPlus」は発売される。そして、2016年6月の国土交通大臣賞受賞もあって、プロジェクトチームの士気は上がっている。

「予防保全」を積極的にPR

 受注案件数も順調に増えている。予防保全という機能は、省エネほど市場における認知度が高くないため、まずは省エネを目的とした前モデルの置き換え需要が中心だが、徳永は「予防保全も徐々にこれからはもっと浸透してくだろう。これからも積極的にPRに努めていきたい」と手応えをつかんでいる。

 国内だけではない。すでに「EcoMonitor」シリーズの納入実績がある中国に加え、今後はアメリカや東南アジアへの展開も視野に入っている。

「予防保全」を積極的にPR

 さらなる改善や機能追加に向けて、開発は現在も続けられている。「今回の開発を通じて、若手技術者たちも大いに成長した。今後は、エネルギー計測を活用したソリューションとしてユーザーに使い方を提案できるように、電力計測の技術だけでなく、計測データを使ったデータ分析技術などをさらにブラッシュアップしていきたい」。下江は目標をこう語っている。

製品紹介

EcoMonitorPlus

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