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情熱ボイス

情熱ボイス GOT篇 GOTから「FA機器の未来」が見えた! 2 答えは工場の外にあった 情熱ボイス GOT篇 GOTから「FA機器の未来」が見えた! 2 答えは工場の外にあった

中部支社機器第二部コントローラ課の平泉昌美にとって、職場の大きなトランクは相棒的な存在だ。中にはGOTに加えてシーケンサやケーブルなど、GOTのデモに必要な道具一式が詰まっている。平泉が「GOTエキスパート」一期生として活動を始めて既に18年半。その大きなトランクを引いてあちこちのユーザを訪れる日々が今も続いている。

GOTエキスパートは、三菱電機がGOT参入初期から導入している制度。GOTの導入支援を担うスペシャリストで、導入前のデモや導入後の研修や講習会の実施のほか、依頼を受けてGOTの画面作成を行うこともある。2000年に平泉含め5人でスタートしたGOTエキスパートは、今では14人にまで拡大している。

中部支社機器第二部コントローラ課の平泉昌美にとって、職場の大きなトランクは相棒的な存在だ。中にはGOTに加えてシーケンサやケーブルなど、GOTのデモに必要な道具一式が詰まっている。平泉が「GOTエキスパート」一期生として活動を始めて既に18年半。その大きなトランクを引いてあちこちのユーザを訪れる日々が今も続いている。

GOTエキスパートは、三菱電機がGOT参入初期から導入している制度。GOTの導入支援を担うスペシャリストで、導入前のデモや導入後の研修や講習会の実施のほか、依頼を受けてGOTの画面作成を行うこともある。2000年に平泉含め5人でスタートしたGOTエキスパートは、今では14人にまで拡大している。

導入の前や後に関係なく、ユーザが困った時に登場するGOTエキスパートへの信頼は厚い。専任の営業担当者がいるにもかかわらず、新規の相談をGOTエキスパートに直接持ちかけたりするユーザもいるほどだ。さまざまな相談に対応した経験から、ユーザの現場にも精通している。

GOTの戦略は、「GOTの機能にユーザは無頓着」という大前提のもとで進められてきた。しかし営業担当者以上にユーザの内情に通じていることも珍しくないGOTエキスパートは、製品企画のチームからは見えにくいユーザニーズにも実は気づいていた。

手にしたくなるような画面をデザインする

「あるユーザでは電気自動車の充電スタンドに、三菱電機のGOTを使っていました。
しかし実際に使っている現場を見ると、どうも画面が野暮ったい感じがします。
こういう現場では、画面のデザイン性も必要なのではないかと思ったのです」
(平泉)。

FA機器が使われる場所は、基本的には工場など製造業の生産現場。ものづくりに必要な高精度の機械制御を可能にするのがFA機器の役割だが、その高精度な制御は生産現場以外でも重宝されている。建設機械やガソリンスタンド、除雪機など、活用されているシーンはさまざまだ。

しかし工場内で使うことを想定して作られたFA機器は、製造業とは無縁な人が触れる工場外の現場には不釣り合いなこともある。もともとは一般の事務職員で、GOTエキスパートとして働くまで製造業とは縁の無かった平泉は、その違和感に気づいたのだった。

GOTエキスパートの気づきが、GOTの機能改善につながった例は珍しくない。

一柳は「特に操作性のように感覚的なニーズは、
GOTエキスパートが拾い上げてくれる
という。

画面デザインも感覚的なものであり、GOTエキスパートが改善の
必要性に気づくのも当然と言える。

GOTのユーザを広げたいなら、FAの常識を壊して工場の外でも使えるGOTを目指すべきで、そのためにはユーザインタフェースもFAの常識を壊さなくてはならない。FAソフトウエアエンジニアリング部FAエンジニアリング第五グループの的場祐弥は、これまでFAであまり重要視されなかった画面のデザイン性を追求することにした。

GOTのユーザを広げたいなら、FAの常識を壊して工場の外でも使えるGOTを目指すべきで、そのためにはユーザインタフェースもFAの常識を壊さなくてはならない。FAソフトウエアエンジニアリング部FAエンジニアリング第五グループの的場祐弥は、これまでFAであまり重要視されなかった画面のデザイン性を追求することにした。

的場が担当しているのはGOTの画面作成ツール「MELSOFT GT Works3(以下GT Works3)」の開発。GOTに映し出すシステムの「顔」を描くツールだ。「操作できればいい」時代のGOTでは、画面にデザイン性を求める必要もないが、ユーザの幅を広げるならばもはやそうはいかない。的場は今までの常識との違いに躊躇しながらも、グラデーションや透過ウィンドウなどデザイン性を高めるための機能追加に取り組んだ。

屋外にむき出しでも耐えられるGOT

工場の中と外では、周囲の環境も異なる。GOTを屋外にむき出しに設置した場合、建設機械であれば土ぼこりや水、船舶は潮風、ガソリンスタンドは日光、除雪機は低温や氷などに耐える必要がある。ユーザは「壊れたら交換すればいい」と承知のうえで使っているが、厳しい環境でも壊れないGOTがあれば重宝されるに違いない。システム選定でGOTが主役に立てる可能性も出てくるはず。

そうした考えのもと、GOT2000では「耐環境性強化モデル」が追加されることになった。開発の最初の関門は、動作保証範囲の目標をどのぐらいに設定するかであり、過去の事例からニーズをひもとく作業が始まった。

「以前、太陽光発電のパワーコンディショナに使われているGOTが、低温のせいか故障したことがありました。そこで気象データを調べると、故障時の現地の気温は氷点下20度近かったのです。耐環境性を打ち出すならば、そこまで保証できるものでなくてはなりません(一柳)。

試作機の検証作業も、従来と違うものが求められた。耐環境性強化モデルは、従来とは違う環境に設置されることが想定される為、温湿度だけでなく、紫外線環境化での耐久性確認等が必要になると考えたが、社内の試験設備では十分な試験を実施することができない。今までそのような環境での検証を必要としていなかったためだ。外部の検査会社の協力を受けながらの検証だった。

従来FAが想定していなかったシーンをカバーできるGOTにする。その取り組みはGOT本体だけなく、販売促進の角度からも進められた。GOT2000シリーズの営業ツール制作を担当することになった関山は、パンフレットやカタログなども全面的に見直すことにした。FA以外のユーザにも分かりやすいものにするためだ。関山は自動車やパソコンなどコンシューマ向け製品のカタログを片っ端から集め、研究を続けた。

従来FAが想定していなかったシーンをカバーできるGOTにする。その取り組みはGOT本体だけなく、販売促進の角度からも進められた。GOT2000シリーズの営業ツール制作を担当することになった関山は、パンフレットやカタログなども全面的に見直すことにした。FA以外のユーザにも分かりやすいものにするためだ。関山は自動車やパソコンなどコンシューマ向け製品のカタログを片っ端から集め、研究を続けた。

その中で関山が気づいたのが、FAと一般の世界での表現の違いだ。関山は従来「音声合成」や「音声出力」などの言葉で表現されていた機能を、全面的に「音声ガイダンス」に改めることにした。試作したカタログを社内の関係者に意見照会したところ、さっそく設計部門などから指摘が相次ぎ、そのたびに関山は説明に追われた。

「この『音声ガイダンス』ってなに?
「あ、それは音声出力機能のことですね」
「ふーん、でもそれじゃ製造業の人たちには通じないんじゃないの?

「いや、一般的には音声ガイダンスと言われている機能ですから。
このまま進めます。

GOTが工場だけを対象にしているならば、従来どおりの表現で十分だろう。しかし工場の外に今まで顕在化しなかった市場があり、そこに浸透させていく製品を目指すためには、FAの常識にとらわれてはいけない。関山の作業は単なるツール制作の域を超え、FAの枠組みを壊すことだったのだ。

工場の外の市場を目指す過程で、GOTの開発チームはさらに市場を拡大しうる画期的なアイデアにたどり着いた。実現すればユーザはさらに広がるだろう。しかしそれをたやすく口にすることはできなかった。GOTにとって“自己否定”につながりかねないアイデアだからだ。

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