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情熱ボイス 協働ロボット篇 アナログな要件との戦いから生まれた「安全で使いやすいロボット」 第2回 “規格”の迷路に入り込む 情熱ボイス 協働ロボット篇 アナログな要件との戦いから生まれた「安全で使いやすいロボット」 第2回 “規格”の迷路に入り込む

技術者たちが集まって英語の文書を手に読み合わせを繰り返す。まるで英会話学校のような奇妙な光景は、既に2カ月近く続いていた。協働ロボットを初披露する「国際ロボット展」が迫っているにもかかわらず、終わりが見える気配はない。技術者が“規格あるある”と呼ぶ迷路に入り込んでいたのだ。

協働ロボットが従来の産業用ロボットと大きく異なる要素の一つは 「安全性」。作業者の行動範囲にロボットがあるため、人との衝突を回避する機構が欠かせない。2016年にはその仕組みを具体的に規定した国際規格「ISO/TS15066」が業界でまとめられ、協働ロボットの開発は各社で加速していた。三菱電機が開発する協働ロボットも、このTS15066を満たすことは絶対条件と位置付けられていた。

しかし、TS15066は、これまで経験してきたことのない新しい規格。その読み解きには時間を要した。なぜなら、規格の文面が意図していることの読み取りに苦戦したのだ。

協働ロボットが従来の産業用ロボットと大きく異なる要素の一つは 「安全性」。作業者の行動範囲にロボットがあるため、人との衝突を回避する機構が欠かせない。2016年にはその仕組みを具体的に規定した国際規格「ISO/TS15066」が業界でまとめられ、協働ロボットの開発は各社で加速していた。三菱電機が開発する協働ロボットも、このTS15066を満たすことは絶対条件と位置付けられていた。

しかし、TS15066は、これまで経験してきたことのない新しい規格。その読み解きには時間を要した。なぜなら、規格の文面が意図していることの読み取りに苦戦したのだ。

「『個人の保護装置を使用することによって発生する制限』と書かれているこの英文だけど、個人の保護装置ってなんだろう?

「ヘルメットとか、作業帽とか」
「ヘルメット被ったことで受ける制限なんて、ある?」
「つばの部分で上方向の視野が狭くなるというのはありそうだけど」
「保護めがねのことじゃないの?光が反射することも考えろってことかも」

一つの文でもあらゆる解釈ができ、理解が前に進まないのである。

もっとも、あらゆる解釈ができるのはTS15066に限った話ではない。さまざまな規格でも そこで定義しているのは対応すべきポイントであり、具体的にどう対処するかは各ベンダに任されている。

「『個人の保護装置を使用することによって発生する制限』と書かれているこの英文だけど、個人の保護装置ってなんだろう?

「ヘルメットとか、作業帽とか」
「ヘルメット被ったことで受ける制限なんて、ある?」
「つばの部分で上方向の視野が狭くなるというのはありそうだけど」
「保護めがねのことじゃないの?光が反射することも考えろってことかも」

一つの文でもあらゆる解釈ができ、理解が前に進まないのである。

もっとも、あらゆる解釈ができるのはTS15066に限った話ではない。さまざまな規格でも そこで定義しているのは対応すべきポイントであり、具体的にどう対処するかは各ベンダに任されている。

「他の規格のときは、どう対処したのだろう」。

開発当時、メンバーの一人だった前ロボット製造部開発第一課専任 ・原口林太郎は、過去の規格対応の過程を参考にしようと社内をまわった。しかし適切な例が見つからない。よく考えればそれは当然だった。従来のロボットの規格に、「人」という存在がからんでいるものはないからだ。

ロボットはプログラムで動くが、人はプログラムで動くわけではない。技術者が制御できないならば、技術者が想像を巡らす必要がある。想像の中で「動く人」と「ロボット」の間でどういうリスクがあるのかを考えなさいと、TS15066は求めているのだった。

従来からの脱却。「初心者でも使える画面」へ

安全性とともに協働ロボットの重要な機能と位置付けられていたのが、「使いやすさ」だ。ロボット操作専任の作業者を配置しない企業では、ロボットの制御、特に使い始めのティーチングを、誰でも行えるように使いやすくする仕組みが求められる。

ロボットに作業内容を教えるには、ロボット言語によるプログラミングが必要だが、従来のプログラミング環境は初心者にとってハードルが高い。容易に使えるものにブラッシュアップする必要がある。

しかし寺田は、技術者視点で作られた今のツールを多少改良したところで、初心者が真に使えるものにはならないと考えた。「協働ロボットは産業用ロボットの延長ではない」のだから、ツールの作り方も根本から変えなくてはならない。

寺田は協働ロボット用の新しいツールの開発において、コンシューマ分野のデザインを意識しないと「使いやすさ」には繋がらないと考えていた。そこで、新たなブレーンを投入してつくられたのが新しいプログラミングツール「RT VisualBox」だ。

モバイルを使いこなす世代に親しみやすい、画面に触れて指で操作できる仕様。3Dで展開するのはもちろん、拡大・縮小もスマホのように指で簡単操作できる。その従来のツールとは似ても似つかぬ、まるでクレーンゲームのようなRT VisualBoxのインタフェースを見て、寺田は内心ほくそ笑んだ。

「この発想の転換は正解だった。これならユーザーの心をつかめるだろう」

「RT VisualBox」
第3回 発売直前まで続いた「使いやすさ」の追求第3回 発売直前まで続いた「使いやすさ」の追求

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