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【高圧真空遮断器 VF-20E/25Eシリーズ篇】新規格という高き壁への挑戦

2026年4月公開【全3回】

情熱ボイス 三菱高圧真空遮断器 VF-20E/25Eシリーズ 新規格という高き壁への挑戦 第3回最後の試験は海外で

第3回 最後の試験は海外で

2025年2月、高圧真空遮断器の次期モデル開発プロジェクトチームの若手2人が、韓国・釜山に向けて飛び立った。新しい高圧真空遮断器の試験のためである。

遮断器などの電気設備機器の試験を海外で行うこと自体は、それほど珍しいことではない。国内には高電圧・大電流の試験を行える第三者機関の試験場が少ないため、これまでにも試作機を海外の試験場に持ち込み、現地で行うことはたびたびあった。

今回、韓国での試験立ち会いの役目を任されたのは、入社4年目の藤木と2年目の渡會。遮断器の主回路設計を担当した藤木と、遮断器の心臓部である真空バルブの設計を担当した渡會の2人の組み合わせは、新しい遮断器の試験立ち会いには適役と言えたが、海外での試験は2人とも初めての経験だ。

渡會と藤木の画像

韓国での試験に立ち会った渡會(左)と藤木(右)。慣れない環境と日本のチームとリモートでのやり取りに苦心した

試験の場では、条件設定や結果評価などで、密なコミュニケーションを必要とする。ただでさえ現地では言葉の壁が存在するうえに、日本にいる技術者とはリモートで意思疎通を図らなければならず、その調整は容易ではなかった。「現地の試験場スタッフと日本のチームとの間で板挟みになった」と渡會は苦笑いする。

試験設備のトラブルや試験電圧・電流のばらつきにより、規格で定められた条件を満たす試験が実施できないこともあったという。そのたびに藤木と渡會は試験場スタッフと調整し、試験をやり直すことを余儀なくされた。気がつくと予定していた1か月という試験期間は終わりに近づき、試験用に国内から輸送した試験機も底をついてしまった。

「いったん帰国しなさい」。日本にいるチームからの指示に、藤木は観念した。今回の渡韓で試験を終わらせることはあきらめ、再度出直しという判断になったのだ。中断すればその分だけ試験期間は延び、試験環境の再構築などの工数も増える。しかし「ミリ秒単位での遮断を目指すなら、試験機を何度も使い回すのでは確証が取れない」(藤木)。2人は帰国後、落ち着く間もなく追加の試験機の手配や発送を済ませ、今度は藤木だけが単身で韓国に再び渡って試験を再開した。

「2人は大変だっただろうけどいい経験になったと思う」とプロジェクトリーダーの山田は2人を思いやる。山田自身も以前の開発で韓国での試験を経験し、板挟みの苦労を身に染みて知っているからだ。入社4年目と2年目の2人の派遣は、次世代の開発者育成も見据えた山田の考えからだった。

試験が終了に近づいた2025年3月、プロジェクトをここまで引っ張ってきた山田に異動の辞令が出た。新たにプロジェクトリーダーに就くことになったのは、前年まで別の機器の開発に携わっていた仲田だ。

「夢の中にまで出てきた」

もともと鉄道用の直流遮断器などの開発に携わっていた仲田は、その業務の傍ら今回の高圧真空遮断器の開発プロジェクトにも参加していた。2024年からは本格的に高圧真空遮断器の開発に参加していたとはいえ、担当者の立場から、一転して全体を取りまとめる重責を担うことになった仲田の戸惑いは少なくなかった。

開発終盤になってプロジェクトリーダーを引き継いだ仲田にとって最大のミッションは、もちろん製品を予定通り発売することである。しかし予定通りの発売にこぎ着けるためには、2025年10月までに全モデルの試験を終わらせなければならない。韓国での試験が一度で終わらなかった分、その対策などに計画以上の時間を取られるなど後ろ倒しになり、最終的には「次の試験でトラブルが起きたら、発売を遅らせなければならない段階にまで来た」(仲田)。試験も終わりに近づき製品発表が近づいても、仲田には大きなプレッシャーがかかり続けた。ある問題に対し、上層部への報告期限を3日後に控えても対策案が見つからなかったときは、「その対策部位が夢の中にまで出てきた」(仲田)という。

仲田の思い悩みは周囲のスタッフにも伝わったようだ。しかし結果的にそのことがプロジェクトチームの一体感を強め、リーダーである仲田を積極的にサポートするようになったことで、予定通りの製品発売が見えてきた。

国内メーカーでは初のフルラインアップ

2025年5月、国内最大の電気設備総合展示会「JECA FAIR」が大阪で開催された。三菱電機は最終試験の真っ只中に、新しい高圧遮断器「VF-20E/25Eシリーズ」を参考出展という形で先行公開した。JISの新規格をすべてカバーするフルラインアップでの公開は、国内メーカーとしては初めてである。旧規格が2025年3月に正式廃止された直後ということもあり、会場ではエンドユーザー以上に配電盤メーカー関係者からの関心が集中した。製品そのものよりも「新しい規格とはどのようなものかという質問攻めにあった」(武部)という。

「JECA FAIR」の画像

2025年5月の「JECA FAIR」で新しい高圧真空遮断器を先行公開

いずれは他の国内メーカーも、新規格をすべてカバーするラインアップを展開するのは間違いない。しかし、規格が公表された直後は、規格文書の解釈にユーザーもベンダも手を焼くのが常だ。ならばメーカーに求められるのは、その文書を深く読み解いて製品として具現化し、業界を正しい方向へと先導していくことである。

プロジェクトチームはさまざまな苦難に直面しながらも、いち早く新規格をフルカバーするラインアップを展開し、設備設計のベンダなどに今後の業界の方向性を示した。それは高圧遮断器でトップシェアのメーカーとしての矜持に他ならない。

集合写真

取材実施:2025年12月

製品・ソリューション紹介

高圧真空遮断器 VF-20E/25Eシリーズ

多様化する時代のニーズを追求し更なる進化を遂げるVCB。据付からメンテナンスまで、あらゆるシーンでの作業効率を追求した新設計や、独自の技術による高い信頼性により、工場やビルなどの幅広い施設において配電設備の安全を守ります。

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