Factory Automation

海外レポート

「オートメーションを超え、人に力を」
初開催の「MECA KOREA CUP」観戦レポート in 韓国

2025年12月公開【全3回】

海外レポート

第1回 韓国初のMECA KOREA CUP 2025 ― 舞台裏

今回は10チームが参加し、理論的な発表ではなく、実際の設備を使った実践的な操作に重点が置かれた。三菱電機オートメーション韓国(MEAK)の担当者は、「学生たちには、生産ラインの自動化だけでなく、故障のシミュレーションとその対策の立案も求められました」と説明し、実践力と創造力が評価の中心であることを強調した。

競技会は初期段階から綿密に準備されており、MFEC (*)認証を取得したチームには、三菱電機からオンライン教育、機器の貸与、2か月間のソフトウエアライセンスが提供された。一部の機器は、学校が保有する設備を活用して稼働された。会場では、参加者が画面上でデジタルツインモデルを可視化し、物理設備と接続されたリアルタイムのセンサーデータを監視する様子が見られた。

*MFEC(三菱FAエンジニア認証):三菱電機オートメーション韓国が独自に設立した民間資格制度で、FA製品ユーザーの技術力を評価するものである。

参加者の様子

参加者はチームを組み、自動化システムのデモ設計を作成した。

会場には、韓国産業人力公団や韓国電子技術研究院スマートマニュファクチャリング革新センター(KETI SMIC)、MEAKの代表者をはじめ、産業界や教育機関の関係者が多数来場した。ある大学教授は「この競技会を通じて、学生たちは協働、課題解決、プレゼンテーションといった貴重な経験を積むことができ、教育的な効果は非常に高い」と評価した。

実際に参加した学生からは、「これまでPLCやセンサー制御は理論でしか学んでいなかったが、実際に操作・設定することで、理解が深まり、技術が自分のものになった」といった声が寄せられた。
この競技会は、理論と実践をつなぐ貴重な学びの場となった。

「なぜMECAなのか?」実践的専門家を求める時代

FA技術は日々進化しているが、真に求められているのは、現場で問題を見つけ、解決できる実務力を持った技術者である。こうしたニーズに応えるため、三菱電機は2000年代初頭にグローバル教育支援プログラム「MECA」を正式にスタートさせた。
MECAは、従来の座学にとどまらず、実践的なトレーニングや国際技能競技会を通じて、次世代エンジニアに必要な総合力の育成を目指している。特に、理論と実践を融合させたハイブリッド型の教育構造が特徴で、学生が実践的な課題解決力を身につけられるよう設計されている。
三菱電機が20年以上にわたり世界各国でMECAを展開してきた背景には、「FA産業の未来は、現場で活躍できる人材によって築かれる」という強い信念がある。

MEAK執行部

MEAK執行部は韓国初のMECA競技会を計画した。

MECAの教育構造は、理論だけに偏ることなく、実践を重視した設計となっている。たとえばイタリアでは、学生がまずオンラインで理論を学び、その後、実際の機器を使って課題に取り組む実践トレーニングが行われている。トルコでは、三菱電機が30の大学にFA機器を提供し、地域FAセンターを研修施設として設置。学生たちはPLCやサーボモーター、HMIなどの機器を使い、実際の産業プロジェクトを模した課題に取り組んでいる。

このようにMECAは、理論と実践を有機的に結びつけ、繰り返しの実践を通じて、応用力のあるエンジニアを育成する仕組みを構築している。従来の教育とは一線を画し、現場で即戦力となる人材の育成を目指している。

MECAの中心的な取り組みは、何といっても技能競技会である。2007年に中国で初開催されて以来、毎年開催されており、これまでに600以上の教育機関と12,000人以上の学生が参加してきた。この競技会は、単なるアイデア発表の場ではなく、実際のFA設備を使って制限時間内に自動化システムを設計し、創造的なソリューションを実装することが求められている。

競技は「システムアプリケーション」と「クリエイティブデザイン」の2部門に分かれており、それぞれ技術の完成度と創造性を基準に評価される。予選を通過したチームは決勝に進み、2日間にわたって競技と成果発表を行う。MECA技能競技会は、教育・採用・技術革新の橋渡しとして、重要な役割を果たしている。

MECAのもうひとつの重要な柱が「認証制度」だ。これは単なる資格証ではなく、実践的な技能を評価・証明する仕組みである。韓国では「MFEC」と呼ばれる民間資格制度が導入されており、年に2回試験が実施されている。試験は3段階のレベルに分かれており、学生だけでなく現場の技術者も自身のスキルを確認・向上させることができる。試験では筆記よりも実技が重視され、受験者は三菱電機のFA設備と同じ環境で、製品を直接操作することが求められる。MFECは一度きりの試験ではなく、継続的な技能向上を促す学習支援システムとして機能している。

MECA技能競技会と認証制度は、教育・採用・技術革新をつなぐ好循環を生み出している。

MECAは、各国の産業や教育環境に合わせて進化を続けている。たとえばベトナムでは、年次全国技能競技会が開催され、最大120チームが実践的なプロジェクトや学術論文を発表して競い合っている。ブラジルではサンパウロで初のMECA競技会が開かれ、台湾では高等技術機関を中心にMECAカリキュラムが導入されている。タイの研修センターでは、eラーニングと現場での実践訓練を組み合わせ、持続可能な教育エコシステムの構築が進められている。これらの取り組みは、各国が製造業の競争力を維持・強化するための戦略的な投資として位置づけられている。

MECAが世界中で定着した理由は明快である。理論中心の教育が限界に達する中、現場で使える実践的かつ柔軟な教育システムへのニーズが高まっていた。三菱電機は、各国の政府・大学・企業と連携し、MECAをグローバルな教育プラットフォームとして拡大。FA教育の新たなスタンダードとして確立した。

そんなMECA技能競技会が、ついに韓国で開催された。製造業の先進国である韓国だが、FA分野における実践的な人材育成システムは、まだ発展途上にある。MECAの導入は、単なる競技会の開催にとどまらない。教育機関では実践重視のカリキュラムが強化され、企業は認証を取得した人材を積極的に採用している。学生にとっては、理論学習・実技トレーニング・認証取得・競技会参加を一体化した成長の場が提供されている。韓国はすでにPLCやロボティクス、スマートファクトリー分野で世界トップクラスの技術力を誇っており、MECAとの連携による相乗効果が大いに期待されている。

このような技術革新の時代において、本当に重要なのは「どんなツールを使うか」ではなく、「それをどう活用して社会を変えていくか」という人材の力だ。MECAの根本的な使命は、まさにそのような未来を切り拓くリーダーを育てることにある。

「技術は挑戦から始まる」:3つの声、1つの方向

第1回MECA KOREA CUPの開会式では、3名のスピーカーが登壇し、参加者へ激励の言葉を送った。
最初に登壇したのはMEAK代表の山口司氏である。山口氏は「準備期間中の試行錯誤やチーム内の衝突も、すべてが今の自分を形づくる貴重な経験」と語り、参加者の努力を称えた。

さらに「MECAは単なる競技会ではなく、未来のエンジニアを育てる実践的なトレーニングの場」であると強調し、「この場を通じて、自分自身の技術言語を育み、成長の機会をつかんでほしい」と呼びかけた。

MEAK代表 山口 司

MEAK代表、山口 司

次に登壇したのは、韓国産業人力公団(HRDK)のイ・ウヨン局長である。

イ局長は「韓国の未来は、皆さんのような若い技術者にかかっている」と語り、参加者の挑戦を称えました。
元・機械工学教授としての経験を踏まえ、「AIの時代であっても、人間の創造性と問題解決力は代替できない」と強調。FA分野において、実践的な技能と挑戦する姿勢が今後ますます重要になると述べた。

また、HRDKとしてMECAを高く評価しており、「将来的には、優勝者に国家技術資格試験の免除などの特典が与えられる可能性もある」と期待を示した。

韓国産業人力公団 イ・ウヨン局長

韓国産業人力公団 イ・ウヨン局長

最後に登壇したのは、韓国電子技術研究院スマートマニュファクチャリング革新センター(KETI SMIC)のソン・ビョンフンセンター長である。ソン氏は「製造業はAIと自動化が融合する時代に突入しているが、システムを深く理解し、課題を見つけて解決できる人材の重要性はますます高まっている」と述べた。

また、参加者が使用するSCADAソフトウェアGENESIS™や3Dシミュレータ MELSOFT Geminiといったソフトウエアは、実際の産業現場でも活用されていることに触れ、「MECAは理論と実践をつなぐ教育プラットフォームとして非常に有意義だ」と評価した。

ソン氏は、MECAが韓国の産業界に広く浸透し、次世代の技術者育成に貢献することへの期待を表明した。

KETI SMIC ソン・ビョンフンセンター長

KETI SMIC ソン・ビョンフンセンター長

アンケート

Q1今回の記事に興味関心を持ちましたか?

※必須項目です。選択してください。

Q2Q1で答えた理由を教えてください。また次回題材でご希望があれば教えてください。※なお、ご質問に対する回答はいたしかねますのであらかじめご了承願います。

ご回答いただきありがとうございました

一覧に戻る