特集論文
“MELSEC-Qシリーズ”電力計測ユニット
2014年4月公開【全3回】
福山製作所 下江政義
第3回 製品特長(下):ソフトウェア対応・機能改善
3. 2 エンジニアリングツールへの対応
今回の開発では、計測のための設定、計測値のモニタ、ユニットの動作状態確認等を簡単に行えるようにするため、シーケンサのエンジニアリングソフトウェアGX Works2に対応した。
(1) 動作パラメータの設定
電力計測ユニットには、2種類の設定値がある。
- 相線式、一次電圧、一次電流等の電力計測ユニットを動作させるための設定値
- 積算電力量などの動作中に値を書き換えたい時だけセットする設定値
電力計測ユニットの動作パラメータの設定をGX Works2のパラメータ設定画面で行うと、電力計測ユニットの起動時に毎回、設定値が書き込まれる。
1. の設定値に関しては起動時に毎回書き込んでも問題ないが、2. の設定値に関しては、起動時に毎回書き込むと、
積算電力量の値が設定値に戻ることになるため、1. 、2. の設定値はそれぞれ別の方法で設定を行う必要があった。
そこで、1. の設定値についてはパラメータ設定画面での設定とし、2. の設定値についてはインテリジェント機能ユニットモニタ画面からバッファメモリに設定値を書き込んだ後、
フラグ操作を行う設定方法とし、動作中に値を書き換えたい時だけセットできるようにした(図3)。

(2) 計測値データのモニタ
現行品では、GX Works2上でバッファメモリ上の計測値データをモニタする場合は“バッファメモリ一括モニタ”でモニタできるが、
バッファメモリアドレスに対するデータが表示されるだけで、取扱説明書で確認しなければそのデータが何の計測データであるかが分からなかった。
そこで、GX Works2の“インテリジェント機能ユニットモニタ”に対応した。これによって、計測値モニタ時に、計測値名称も画面に表示されるため、
現地設置時の計測データ確認作業を容易に行うことが可能となった(図4)。

3. 3 現行品からの機能改善
今回の開発では、機種ラインアップの拡充を図るとともに、現行品の客先要望を積極的に機能として搭載した。その一例を次に述べる。
3. 3. 1 データ取得クロックの出力
各計測データはバッファメモリ上に保持されるが、更新周期ごとに上書きされるため、データをロギングする場合は、ラダーで計測データを読み出す必要がある。
しかし、電力計測ユニットで計測データが更新されたタイミングを外部に出力する機能がなく、ラダー側でタイマを使って一定間隔でデータを読み出す必要があった。
そこで、ラダーでの計測データ読み出しを容易にするため、計測データ更新時にフラグをONさせる機能を搭載した。これによって、フラグがONとなったタイミングで計測データを取得すれば、ラダーも簡易にすることができ、また重複するデータを読み出すこともない。また、このフラグのONタイミングは、設定によって可変にできるため、例えば、1分ごとにデータを読み出したい場合、このフラグが1分ごとにONするように設定することも可能である(図5)。

3. 3. 2 特殊電圧・電流設定対応
現行品では、一次電圧の設定があらかじめ決められた設定値から選択する方式を取っていたため、
海外市場でよく行われている三相4線式受電後に三相3線式電圧を取り出して使用する場合などの特殊な電圧設定(例えば、変圧比380V/110Vなど)ができない問題があった。
そこで、現行品の設定方法は継承しつつ、特殊な電圧設定ができるモード(任意設定)を追加し、電圧設定値を直接バッファメモリに書き込める仕様とした(図6)。
また、一次電流設定も同様に特殊電流対応が可能な設定としている。

4. むすび
生産設備単位でのきめ細かい原単位エネルギー管理を実現する“MELSEC-Qシリーズ電力計測ユニット”の製品ラインアップ拡充、機能改善について述べた。
今後は、このユニットの更なる機能向上及び周辺ツールの充実化によって、“生産性の向上とコストの削減”を同時に実現する“e&eco-F@ctory”の一層の浸透を図っていく。
製品紹介

- 要旨 “MELSEC-Qシリーズ”電力計測ユニット
- 第1回 製品コンセプト・仕様
- 第2回 製品特長(上):多回路化での処理速度向上技術
- 第3回 製品特長(下):ソフトウェア対応・機能改善