特集論文
三菱シーケンサ “MELSEC iQ-Rシリーズ”
2015年8月公開【全3回】
名古屋製作所 志水義信 甲斐啓文 矢木孝浩
第1回 製品特長
2. MELSEC iQ-Rシリーズの特長
MELSEC iQ-Rシリーズの主な特長について次の3つの観点から述べる。
(1) 生産性向上
(2) メンテナンス性向上
(3) セキュリティ機能強化
MELSEC iQ-Rシリーズは、システムバス性能向上とCPUユニットの命令処理性能向上によって生産性向上を図るとともに、異常発生時の原因調査を加速する機能や、外部機器からのラベルアクセス機能等によるメンテナンス性向上を図っている。さらに、セキュリティ機能の強化も行っている。
2. 1 生産性向上
タクトタイムの大幅な短縮を実現するため、MELSEC-Qシリーズのシステムバスを一新し、システムバスの伝送性能を従来の30Mbpsから3Gbpsに高速化を図った。システムバスの高速化によって、ネットワークユニットとのデータ処理は、Qシリーズ比40倍の高速化を実現した。また、マルチCPU間に専用の高速バスを設けることで、シーケンサCPUとモーションCPU間のデータ交換周期を888μsから222μsに高速化を図った。
CPUユニットの主な命令処理時間を表1に示す。PC MIX値(注1)で419命令/μsと、Qシリーズ比約7倍の高速化を実現するため、シーケンス演算用LSIを開発し、シーケンス制御に最適化した多段パイプライン、データキャッシュ等の技術を搭載した。また、ST(Structured Text)言語やFB(Function Block)の実行方式の革新によって、演算性能を大幅に向上させた(ST言語の判断処理(IF)命令の処理時間はQシリーズ比175倍の高速化)。
これら高速化によって、生産設備のタクトタイムを短縮し、生産性向上を実現する。
(注1)1μsで実行する基本命令やデータ処理などの平均命令数。数値が大きいほど処理が速い。

表1.CPUユニットの主な命令処理時間
2. 2 メンテナンス性向上
MELSEC iQ-Rシリーズでは、生産ラインの稼働率向上のため、トラブル発生時の早期復旧に対応する様々なメンテナンス機能を備えることで、ダウンタイムの短縮を実現する。MELSEC iQ-Rシリーズで新たに搭載する主なメンテナンス機能を表2に示す。
表2のNo.1~3の機能によって、障害発生時の状況を正確に把握できるため、早期原因究明が可能となる。表2のNo.4のラベルアクセス機能では、GOT(Graphical Operation Terminal)等の外部機器からシーケンサのデバイスを参照する際、参照先のデバイスを割り付けた変数名(ラベル)を指定することができる。これによって、シーケンサ側でデバイスの割り付けが変更された場合でも、外部機器側はラベルとして参照しているため、外部機器側のプログラムを変更することなくデバイスの変更に追従可能であり、メンテナンスコストを削減できる。

表2.MELSEC iQ-Rシリーズの主なメンテナンス機能
2. 3 セキュリティ機能強化
シーケンサに格納している制御プログラム等の顧客の技術(ノウハウ)はパスワード認証で保護することが一般的だが、パスワードは漏洩(ろうえい)した場合に漏洩範囲が特定できないなどの課題がある。MELSEC iQ-Rシリーズでは、エンジニアリングツール、制御プログラム及びシーケンサのそれぞれにセキュリティキーを登録し、セキュリティキーが一致しないエンジニアリングツールからは、制御プログラムの閲覧・編集を制限するため、顧客の技術の漏洩を防止することができる。また、制御プログラムを実行する際もセキュリティキーが一致しないシーケンサ上では制御プログラムの実行を制限するため、不正コピーによる模倣品製造を防止することができる(図1)。

図1.セキュリティキー認証
製品紹介

三菱電機が提案する次世代トータルソリューションの中核。
激しい市場競争に打ち勝つために、生産性が高く、製造品質の安定したオートメーションシステムを構築したい。このようなお客様の課題を、MELSEC iQ-Rシリーズは「TCO削減」「信頼性」「継承」の3つの視点から解決します。