特集論文
三菱シーケンサ “MELSEC iQ-Rシリーズ”
2015年8月公開【全3回】
名古屋製作所 志水義信 甲斐啓文 矢木孝浩
第3回 特長実現のための技術(下)
3. 2 メンテナンス性向上の実現に適用した技術
2. 2節で述べたように、メンテナンス性向上のため、外部機器からシーケンサへのラベルアクセス機能を搭載している。この機能は、シーケンサがラベル名による問合せに対し、内蔵データベースに格納したラベル-デバイス対応情報を参照し、ラベル名に対応するデバイスの値を応答することで実現している(図7)。しかし、ラベル名から対応するデバイス情報を取得するためにデータベースを検索する処理に時間がかかるため、問合せの都度データベースを検索する方式では、システムで要求される性能スペックを満たせない可能性がある。そこで、初回問合せ時に取得したデバイス情報を外部機器側で保持し、2回目以降の問合せ時には、保持しているデバイス情報で問合せを行うことによって、2回目以降はデータベースを検索する負荷をなくすことができる。当社GOTは、この機能を標準搭載することによって、ラベルによるシーケンサへのアクセスで、従来のデバイスによるアクセスと比較して性能を損なうことなく、メンテナンス性向上を実現した。

図7.外部機器からのラベルによるアクセス
3. 3 セキュリティ機能強化の実現に適用した技術
2. 3節で述べたセキュリティキー認証の実現で、拡張SRAMカセットに専用チップを搭載することによって、シーケンサ本体だけでなく拡張SRAMカセットにもセキュリティキーを登録できるようにした。これによって、シーケンサ故障による交換時に、拡張SRAMカセットを差し替えるだけで、簡単にシーケンサにセキュリティキーを登録可能となる。さらに、拡張SRAMカセットと併用して、SDカード(又はGOT)にセキュリティキーを登録した制御プログラムを格納することで、セキュリティを保ったままプログラミングツールなしにシーケンサを交換することができる(図8)。これらによって、セキュリティ機能強化と利便性の両立を実現した。

図8.拡張SRAMカセットによるセキュリティキー認証
4. むすび
MELSEC iQ-Rシリーズの特長とそれらを実現するために用いた技術について述べた。今後も、製造業の革新的な進歩を牽引(けんいん)していく。
製品紹介

三菱電機が提案する次世代トータルソリューションの中核。
激しい市場競争に打ち勝つために、生産性が高く、製造品質の安定したオートメーションシステムを構築したい。このようなお客様の課題を、MELSEC iQ-Rシリーズは「TCO削減」「信頼性」「継承」の3つの視点から解決します。
- 要旨 三菱シーケンサ “MELSEC iQ-Rシリーズ”
- 第1回 製品特長
- 第2回 特長実現のための技術(上)
- 第3回 特長実現のための技術(下)