Factory Automation

特集論文

次世代省エネルギー汎用インバータ
“FREQROL-F800シリーズ”

2016年1月公開【全3回】
名古屋製作所 近藤 淳 丸本祥太郎
先端技術総合研究所 古谷真一

第2回 製品特長(上)

3.インバータ化による省エネルギーの追求

3. 1 アドバンスト最適励磁制御

 ファン・ポンプ・ブロアなど2乗低減トルク負荷の消費電力は回転数の3乗に比例するため、インバータによる回転数制御で風量や吐出量調整を行うことによって、消費電力の低減が可能となる。インバータの最も簡易なV/F(Voltage/Frequency)制御でも、インバータを使用しないダンパ制御等の出力量制御によって消費電力削減が可能であるが、当社ではファン・ポンプ向けインバータFREQROL-Fシリーズで更なる省エネルギー機能として最適励磁制御を開発し、改善してきている(図1)。
 最適励磁制御では、図2のようにモータ効率が最大となるように励磁電流を制御し、出力電圧を決定する。
 従来の最適励磁制御は、低速運転でトルクが低くなるV/F制御をベースに励磁電流を制御しているため、始動時に高トルクが必要な用途には適用できないという課題があった。

図1.制御方式の消費電力比較
図1.制御方式の消費電力比較

 当社の高性能汎用インバータでは、V/F制御の始動トルクが低い欠点を改善した制御方式としてアドバンスト磁束ベクトル制御を搭載している。これは負荷トルクに見合ったモータ電流を流せるように電圧と周波数の補正を行うことによって、低速トルクを向上させる制御方式である。
 F800シリーズでは、アドバンスト磁束ベクトル制御をベースとして最適励磁制御をすることで、図2図3のようにモータ効率は従来と同等でありながら、始動時は大きなトルクを得ることができる。面倒なパラメータ調整不要で、イナーシャの大きいファンの加速時間短縮など、インバータを適用できるアプリケーションの範囲を広げることが可能となる。

図2.モータ効率
図2.モータ効率

図3.最適励磁制御とアドバンスト最適励磁制御
図3.最適励磁制御とアドバンスト最適励磁制御

3. 2 高効率モータ駆動、PMモータオートチューニング機能

 国際的な地球温暖化防止を背景に、世界各国で高効率モータの製造・販売を義務付ける法規制の導入が進んでいる。効率基準の国際標準として、2008年10月にIEC60034-30(単一測度三相かご形誘導機の効率クラス)が制定された。この中でIE1~IE4に効率がクラス分けされており、数値が大きいほど効率が高いことを示す。
 F800シリーズではIE3、IE4相当の当社モータを標準サポートすることで、パラメータ設定不要で高効率な運転を実現し、省エネルギー運転による電気料金の削減に貢献する。
 IE3(プレミアム効率)に相当する当社汎用モータである “スーパーラインプレミアムシリーズ(SF-PR)” は、IE1(標準効率)相当の当社標準モータ “SF-JR” と取り付け寸法互換があり、すべり量調整機能によってSF-JRからのスムーズな切換えが可能である。

 またアドバンスト磁束ベクトル制御での100%連続トルクは、IE2(高効率)相当の当社モータ “SF-HR” は6Hz以上であるところ、SF-PRは0.5Hz以上と、定トルク領域が低速域まで広がったことによって、省エネルギー性能向上だけでなく、適用可能なアプリケーションの拡大も実現する。
 IE4(スーパープレミアム効率)に相当する当社IPM(Interior PM)モータ “MM-EFS/MM-THE4”も標準でサポートしている。IPMモータは永久磁石を回転子に埋め込んでおり、回転子(二次側)に電流が流れないため二次銅損がなく、永久磁石によって磁束が発生するため、モータ電流が少なくなる(図4)。
 F800シリーズでは、回路定数を測定するオフラインオートチューニング機能で、図5に示す様々なモータの性能を最大限に引き出し、最適に制御できる。PMモータの磁気飽和特性を利用したパルス電圧印加方式によってインダクタンス推定を行う、PMオートチューニング方式によって、他社製PMモータのセンサレス制御が可能である。
 先に述べた当社製汎用モータ、PMモータ以外に、他社製汎用モータ、他社製PMモータもセンサレスで運転できる。

図4.MM-EFS、SF-PR、SF-JRの容量と効率
図4.MM-EFS、SF-PR、SF-JRの容量と効率

図5.F800シリーズの適用可能モータ
図5.F800シリーズの適用可能モータ

3. 3 待機電力削減

 インバータ停止中の待機電力は、運転中に比べるとわずかな電力量だが、それさえも極限まで減らすための機能をF800シリーズでは導入した。
 インバータは、外部電源(DC24V)を供給されることで、主回路の入力側に取り付けられた電磁接触器(MC)を信号で制御でき、モータ停止後にMCをOFF、モータ駆動前にMCをONすることで待機電力の削減が可能となる(図6)。
 インバータ冷却ファンは、インバータ冷却フィンの温度に応じて制御され、インバータはそのファン動作に併せて信号を出力し、盤などに設置したファンを制御することで、停止中の無駄な電力消費を削減できる。

図6.セルフパワーマネジメント
図6.セルフパワーマネジメント

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