Factory Automation

特集論文

次世代省エネルギー汎用インバータ
“FREQROL-F800シリーズ”

2016年1月公開【全3回】
名古屋製作所 近藤 淳 丸本祥太郎
先端技術総合研究所 古谷真一

第3回 製品特長(下)

4.ファン・ポンプに最適な専用機能

 近年のインバータへの要求として、汎用ではなく、各アプリケーションに特化した機能の充実が求められており、ファン・ポンプに特有の問題解決、利便性の向上を図った。特にフィードバックありのPID制御を行うことが多いため、PID制御の機能を拡充した。

4. 1 クリーニング機能

 モータの正転・逆転と停止を繰り返して、ポンプのインペラやファンについた異物を取り除くことができる。端子入力時や一定時間ごとだけでなく、4. 2節で述べる負荷特性測定で正常範囲から外れた(過負荷)場合に、自動的に動作させることも可能である。

4. 2 負荷特性測定、異常検出機能

 低減トルク負荷は定トルク負荷と異なり、出力周波数に対して一定のトルク制限では異常を検出できない。そこで図7のように故障などのない状態で速度(出力周波数)-トルクの関係を記憶し、現在の負荷状態と記憶した負荷特性を比較し、正常範囲から外れた場合にエラー・警告を出力する。フィルタ目詰まりやベルト切れなど装置の異常検出、メンテナンスが容易になる。

図7.負荷特性測定、異常検出
図7.負荷特性測定、異常検出

4. 3 PIDマルチポンプ機能

 図8のようにインバータ1台で、並列接続されたポンプ(最大4台)をPID制御することで、水量などの調節ができる。並列接続されたポンプのうち1台をインバータ駆動し、それ以外のポンプについては商用駆動させるために各ポンプ一次側のMCをインバータが制御する。商用駆動するポンプの数は、水量に応じて自動で調整する。
 インバータ駆動するポンプを順次変更することで、複数ポンプの駆動時間を均一にし、ポンプの長寿命化を図る。

図8.マルチポンプ機能
図8.マルチポンプ機能

4. 4 PIDゲインチューニング

 PID制御の操作量を変更し、PID制御の応答を測定することによって、自動的にPID制御に最適な定数を設定することができる。ステップ応答法とリミットサイクル法からチューニング方式を選択できる。

4. 5 PIDマルチループ

 PID演算機を2個内蔵しており、インバータでモータの動作をPID制御しながら、外部機器のPID制御も可能である。外部のPIDコントローラを使用することなく外部機器の制御が可能なため、システムコストを低減できる。

4. 6 PIDプリチャージ機能

 PID動作の前に測定値(圧力等)が設定レベルに到達するまで一定速でモータ運転し、パイプへの注水を制御する。パイプが空の状態からのPID動作による急加減速運転を回避し、ウォーターハンマー等を防止する。長いポンプで水を流す制御などで、ポンプ内に水が溜(た)まるまでPID制御させたくない場合にも有効である。
 ポンプには水平型と垂直型があり、水平型の加速では垂直型は圧力が上がっていかないため、垂直型はユーザーが調整可能な加速パターンを設定できる。

4. 7 エマージェンシードライブ機能

 通常、過負荷等が発生した場合、インバータ自身を保護するためモータを停止させるが、この機能はモータ停止をさせないで、強制的に運転を継続する。排煙ファンの駆動等で、火災時にインバータ保護が働いても、エラーリセット、運転再開を自動で繰り返し、ファンによる排煙継続を試みる。インバータが破損にいたる異常が発生した場合に、商用運転に切り換えて運転継続することもできる。

5.使いやすさ

5. 1 液晶操作パネルの単位変換、PID目標値の直接設定

 オプションの液晶操作パネル “FR-LU08”で工場出荷の%単位表示を視認しやすい単位に変換できる。インバータで標準となる出力周波数や回転数ではなく、風量、温度などの各ユーザーになじみのある単位表示によって、メンテナンス・調整が容易となる。43種類の単位に対応し、あらゆるPID制御アプリケーションで使いやすい単位を選択できる。
 さらに通常インバータのパラメータに設定するPID目標値を操作パネルで直接設定できる。

6.システム対応力

6. 1 内蔵シーケンス機能、リアルタイムクロック機能

 内蔵シーケンス機能によって、入力信号に対するインバータの動作や、インバータの運転状態に応じた信号出力、モニタ出力といったインバータの制御を機械の仕様に合わせて自由にカスタマイズできる。
 ユーザーのシーケンスプログラムからパラメータや設定周波数の変更が可能となる。そのプログラミングにはインバータセットアップソフトウェアを使用する。
 インバータと接続された機器の制御を、オプションのFR-LU08のリアルタイムクロック機能と併せて使用することで、時間に応じた運転ができ、システムの分散制御が可能になる。

6. 2 BACnet MS/TP対応

 標準装備のRS-485端子台で三菱インバータプロトコル、Modbus(注2)-RTU(Remote Terminal Unit)プロトコルに加えて、主に北米の空調用途で使用されるBACnet MS/ TPに対応している。

  • (注2) Modbusは、Schneider Automation Inc. の登録商標である。

7.むすび

 次世代省エネルギー汎用インバータFREQROL-F800シリーズの技術、機能について述べた。今後も更なる機能・性能の向上と、高付加価値を目指した製品開発に努めていく。

製品紹介

FREQROL-F800シリーズ

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