Factory Automation

特集論文

“MELSEC iQ-Rシリーズ” 安全シーケンサ

2016年11月公開【全3回】
名古屋製作所 内越正弘

第1回 製品概要

1. まえがき

 安全シーケンサとは、国際安全規格の適合認証を取得したシーケンサで、労働災害を防止するための安全システムである。安全入力に応じて安全出力をOFFにする安全制御を行う。安全入力とは、国際安全規格に適合した安全機器(非常停止スイッチ・セーフティライトカーテンなど)からの入力信号を示す。安全出力とは、危険源(モータ、ロボットなど)への動力を確実に遮断するための出力信号を示す。
 安全シーケンサの起動時や稼働中には、国際安全規格で要求される高いレベルの自己診断を実施する。安全シーケンサ自体に故障が発生した場合は、自己診断によって故障を検出して安全出力を強制的にOFFする。これによって、故障による安全機能の不動作にならないことが、一般シーケンサとの一番の相違点である。
 従来、三菱電機のシーケンサでは “MELSEC QSシリーズ” 安全シーケンサがあったが、安全制御専用システムであるため一般制御とは別にシステムを構成する必要があり、FAシステムに対する省スペース・省配線・省コスト化の要求に応えられなかった。そこで、MELSEC iQ-Rシリーズでは、 “一般制御と安全制御の統合” をコンセプトとした安全シーケンサを開発した。
 本稿では、製品の特長と一般制御と安全制御の統合のための技術について述べる。

2. 安全規格

 機械安全では対象機械のリスクアセスメントを実施してリスクを定量化するため、リスクの受傷度合い、遭遇可能性及び回避可能性によって分類する安全カテゴリがよく使われている(図1)。安全カテゴリの値が高くなると安全機器に対する要求も厳しくなり、安全カテゴリ3では単一故障で安全機能を損なわないこと、安全カテゴリ4では単一故障は安全機能実行時又はその前に検出されることが要求事項である。したがって、部品の二重化や徹底的な自己診断が必要となる。
 MELSEC iQ-Rシリーズ安全シーケンサでは、ISO13849-1 PLe カテゴリ4及びIEC61508 SIL3の適合認証を得ている。

図1.安全カテゴリによるリスクの定量化(ISO13849-1)
図1.安全カテゴリによるリスクの定量化(ISO13849-1)

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