Factory Automation

特集論文

“MELSEC iQ-Rシリーズ” 安全シーケンサ

2016年11月公開【全3回】
名古屋製作所 内越正弘

第3回 製品特長(下)

4. 一般制御と安全制御統合のための技術

 一般制御と安全制御を統合するための3つの主な技術について述べる。

4. 1 一般制御と安全制御の実行

 一般制御と安全制御を統合するためには、安全CPUで一般プログラムと安全プログラムの両方を実行する必要がある。
 従来は、安全プログラムの演算を実行して、END処理内で安全入力/出力処理を実行していた(図5(a))。
 しかし、この処理に一般プログラムの演算を加えるとスキャンタイムが延びるため、安全入力/出力の応答性能を確保できない。このため、MELSEC iQ-Rシリーズの安全CPUでは、安全プログラムの演算や安全入力/出力処理を一定周期(安全サイクル時間)の割り込み処理で実行する(図5(b))。

図5.一般制御と安全制御の実行
  図5.一般制御と安全制御の実行

 これによって、一般プログラムを実行するスキャンタイムに影響されずに安全プログラムを実行でき、安全入力/出力の応答性能を確保できる。
 この技術に加えて、MELSEC iQ-Rシリーズのシステムバス性能の向上、CPUの演算処理性能の向上、CC-Link Safetyより高速なCC-Link IEフィールドの採用によって、従来製品MELSEC QSシリーズと比較すると、安全応答時間(最悪値)が1/3以下に性能向上した(表1)。

表1.安全応答時間(最悪値)の比較
表1.安全応答時間(最悪値)の比較

4. 2 一般制御から安全制御への不正書き込み検出

 一般制御と安全制御を統合するため、安全CPUで一般プログラムと安全プログラムの両方を実行すると、一般制御部の故障やメモリのビット化け(ソフトエラー)等で安全制御部への不正書き込みが発生する可能性があり、これを検出する必要がある。
 このため、MELSEC iQ-Rシリーズの安全CPUでは、一般制御と安全制御を両方実行する安全CPUと、安全制御だけを実行する安全機能ユニットの2つのユニットで安全プログラムと自己診断を実行して、プログラム実行結果から得られる安全出力値と自己診断結果を照合する(図6)。これによって、安全CPUでの一般制御部からの不正書き込みを検出できる。

図6.一般制御からの不正書き込み検出
図6.一般制御からの不正書き込み検出

4. 3 安全ユニットのシャットダウン

 国際安全規格では、安全制御を実行する回路の電源に安全制御を継続できない異常や故障が発生した場合、シャットダウンさせて安全状態へ移行させるなどの手法が必要である。
 従来のMELSEC QSシリーズの安全シーケンサでは、安全CPUで内部電源とシステム電源を監視して、電圧異常時に安全電源ユニットでシステム電源を遮断することでシャットダウンさせる方法を採っていた(図7(a))。
 MELSEC iQ-Rシリーズ安全シーケンサでは、同一ベースユニット上に一般ユニットと安全ユニットが装着され、電源ユニットからシステム電源が供給される。安全制御を実行する回路の電源に安全制御を継続できない異常や故障が発生した場合、安全ユニットをシャットダウンさせて安全状態へ移行する必要がある。さらに、電源ユニットから供給されるシステム電源から安全制御を実行する回路の電源を生成するため、電源ユニットの異常や故障発生時も安全状態へ移行する必要がある。
 また、安全ユニットである安全CPUをシャットダウンさせると、安全CPU内の一般制御を継続させることができない。このため、安全状態へ移行後も情報系処理などの一般制御を継続するシステムでは、一般CPUと安全CPUのマルチCPU構成として、安全CPUのシャットダウン後も一般CPUは動作を継続する必要がある。
 したがって、安全ユニットで内部電源とシステム電源を監視して、異常や故障が発生した時には、安全ユニット内部でシステム電源を遮断してシャットダウンさせる(図7(b))。これによって、安全ユニット以外への電源供給が維持され、一般ユニットは制御を継続できる。また、一般ユニットと安全ユニットで電源ユニットを共用できる。

図7.安全ユニットの電源遮断
図7.安全ユニットの電源遮断

5. むすび

 一般制御と安全制御を統合させたMELSEC iQ-Rシリーズ安全シーケンサについて、製品の特長と一般制御と安全制御の統合のための技術について述べた。
 規格と法制度の整備によって安全シーケンサに対する要望は日増しに増えており、機能・性能・サポートなど多くの要望に応えるため製品力強化を進めていく。

製品紹介

“MELSEC iQ-Rシリーズ” 安全シーケンサ

“MELSEC iQ-Rシリーズ” 安全シーケンサ PCサイトへ

国際安全規格に適合した安全CPUは一般システムと安全システムを同時に制御が可能です。安全CPUを使用したシステムにCC-Link IEフィールドネットワーク経由で安全スイッチや安全ライトカーテンなどを接続することで、一般制御と安全制御を混在させたシステムを構築できます。また、直感的な操作ができるエンジニアリングソフトウェアGX Works3を使用することにより、一般制御と安全制御を一元的にプログラミングできます。

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