Factory Automation

特集論文

エッジコンピューティングソリューション

2018年10月公開【全3回】
FAソリューションシステム部 松田規

第3回 活用事例

5. 活用事例

 エッジコンピューティング製品の活用事例を述べる。

5. 1 モータに接続された負荷の異常検知

 ファンのブレードの欠損など、モータなどの回転機に接続された負荷に異常が起こりはじめると、負荷のバランスが崩れて徐々に偏心が起こる。また、ポンプの目詰まりなどが起こった場合も、ポンプを動かすモータの負荷が上昇する。このようなケースでは、正常時と異常時のデータを比べることで、設備の故障を事前に検知できる。
 具体的には、モータやインバータの電流波形を取得して正常時のデータを類似波形認識で学習し、設備を運用する際に同じモータやインバータの電流波形を常時診断し、正常時との類似度を計算する。類似度が徐々に低下しはじめた場合、負荷の異常が起こりつつあることを診断できる。これによって、故障が生じる前のタイミングで問題を把握し、適切な設備保守を行うことができる。

5. 2 治具交換時期の定量的判断

 工作機械では、安価な治具から高価な治具まで様々な治具が使用されている。特に高価な治具の場合、早く交換すると治具費用の増加につながり、交換が遅れるとロット不良による品質ロスが増加してしまうため、より適切なタイミングで交換する必要がある。生産現場によっては、治具交換時期の判断は熟練工の経験に基づく定性的な判断が必要であり、未熟練工には交換時期の判断が難しいという課題がある。もし熟練工の判断をデータ分析によって形式知化することができれば、適切な治具交換時期を誰でも定量的に判断することが可能になる。
 このようなケースでは、治具の使用中に得られたデータとして、加工回数、トルク、電流値、回転速度、加工時間などのデータ、及び熟練工が判断した治具の劣化度合いを数値化して収集する。そして、重回帰分析によって、加工回数やトルクなどのデータから治具の劣化度合いを予測する予測式を作成する。この予測式に基づいて、センサから取得できる加工回数やトルクなどのデータから治具の劣化度合いが予測でき、適切な交換時期を定量的に判断できる。

5. 3 ベアリングの予知保全

 工作機械にはベアリングやボールねじなど、定期的なメンテナンスが必要なパーツが組み込まれており、その故障が設備稼働率の低下を引き起こす。そこで、設備の振動データを類似波形認識で学習し、運用時に振動データを診断することで、設備の故障を事前に検知できる。
 これを検証するため、ベアリングを用いて評価を実施した。ベアリングのスラスト方向に負荷をかけた状態でモータを3,000rpmの一定速で回転させ、ベアリングのラジアル方向の振動を、加速度センサを用いて10分おきに1秒間(100μ秒サンプリング)取得した。評価開始1時間後から6回分の振動データを用いてリアルタイムデータアナライザの類似波形認識で学習を行い、その後、ベアリングの異常振動が生じたことを検知できるかどうかを評価した。
 その結果、評価開始後56時間40分後で学習データと運用データの類似度が急激に低下した。確認のために運用データをFFT(Fast Fourier Transform)解析したところ、評価開始後56時間20分でベアリング故障を示す振動がわずかに現れ、評価開始後56時間50分で振動が急激に大きくなっていることが分かった。類似波形認識で、ベアリングの故障を初期段階で検知できていることが確認できた。

6. むすび

 e−F@ctory、Edgecross及びエッジコンピューティング製品に関して、その機能や特長、活用事例について述べた。今後は、当社製造現場での実証評価を通して得られた知見を基に、生産現場のIoT化に必要な機能を拡張していくとともに、製造現場のデータ活用を促進するため、加工機の予知保全、ラインや工場の稼働監視やエネルギー監視など、製品の拡充を図っていく。

製品紹介

FAアプリケーションパッケージ iQ Monozukuri

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