Factory Automation

特集論文

三菱シーケンサ “MELSEC iQ-Rシリーズ” の
エントリーモデルCPUユニット

2019年5月公開【全3回】
名古屋製作所 松沢祐人 吉川貴支

第1回 製品の特長(上)

1. まえがき

 国内外のシーケンサのミドルレンジ市場では、装置のシステムコスト、メンテナンスコスト、エンジニアリングコストなどに対する厳しいコスト低減要求がある。また、EthernetポートやSDメモリカードスロットを標準搭載したCPUユニットの展開が要求されている。
 一方で、三菱電機のミドルレンジ市場の主力機種であるMELSEC QシリーズのCPUユニットは、EthernetポートやSDメモリカードスロットを搭載していなかったので、市場の要求に応えるため、MELSEC iQ-RシリーズエントリーモデルCPUユニット(以下 “ エントリーモデルCPUユニット ” という。)を開発した。
 本稿では、エントリーモデルCPUユニットの特長及び適用した技術について述べる。

2. エントリーモデルCPUユニットの特長

 当社は、2014年にハイエンド市場向けのMELSEC iQ-RシリーズのCPUユニットを市場投入、また、2015年にはローレンジ市場向けである “ MELSEC iQ-Fシリーズ ” のCPUユニットを市場投入して製品力を強化してきた。今回、エントリーモデルCPUユニットを市場投入することでミドルレンジ市場の製品力を強化した(図1)。

図1.エントリーモデルCPUユニットの位置付け図1.エントリーモデルCPUユニットの位置付け

 主な特長は次のとおりである。

  • (1) インタフェース・機能のCPU内蔵化によるシステムコスト低減
  • (2) バッテリーレスによるメンテナンスコスト削減
  • (3) インタフェース・機能の共通化によるエンジニアリングコスト削減

 エントリーモデルCPUユニットは、MELSEC iQ-RシリーズハイエンドモデルCPUユニット(以下 “ ハイエンドモデルCPUユニット ” という。)と同等のインタフェースを搭載した。また、デバイスデータ保持用バッテリーを不要にすることで、メンテナンスコスト削減を可能にした。さらに、ハイエンド市場向けのMELSEC iQ-Rシリーズとローレンジ市場向けのMELSEC iQ-FシリーズのCPUユニットとの仕様・操作性の共通化を図り、全ての市場で互換性の高いラインアップを実現した。

2.1 インタフェース・機能のCPU内蔵化によるシステムコスト低減

 エントリーモデルCPUユニットは、低価格ながらも、Ethernetポートと、SDメモリカードスロットを標準搭載しており、またSDメモリカードを用いたデータロギング機能を搭載している。これによって、従来機種のMELSEC QシリーズではCPUユニット、Ethernetユニット、高速データロガーで実現していた機能をCPUユニット単体で実現できるため、従来機種の約25%のコストでシステム構築が可能となる(図2)。

図2.低コストなシステム例図2.低コストなシステム例

2.2 バッテリーレスによるメンテナンスコスト低減

  エントリーモデルCPUユニットでは、不揮発性の磁気抵抗メモリ(MRAM)を搭載し、デバイスデータ保持用のバッテリーを不要とした。これによって、バッテリー交換や補用品にかかるメンテナンスコストの削減を実現した(図3)。さらに、バッテリー交換時のデータ消失のリスク(交換に3分間以上経過すると、内部コンデンサの電荷がなくなって、デバイスデータが消失する可能性がある)もなくなるためデータ保持の信頼性が向上した。

図3.バッテリーレスの実現
図3.バッテリーレスの実現

2.3 インタフェース・機能の共通化によるエンジニアリングコスト削減

 エントリーモデルCPUユニットでは、小容量・低価格でありながら、ハイエンドモデルCPUユニットとインタフェース・機能を共通化することで市場ニーズに対応し、ハイエンドモデルと同様にプログラム部品化機能や、リアルタイムモニタ機能、メモリダンプ機能などのデバッグ機能の搭載を実現し、顧客のエンジニアリングコスト削減を実現している。

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