Factory Automation

特集論文

三菱シーケンサ “MELSEC iQ-Rシリーズ” の
エントリーモデルCPUユニット

2019年5月公開【全3回】
名古屋製作所 松沢祐人 吉川貴支

第3回 製品の特長(下)

3.3 エンジニアリングコスト低減の技術

 ハイエンドモデルCPUでは、プログラム部品化機能やデバッグ機能を搭載することで、顧客のエンジニアリングコストを低減する。エントリーモデルCPUにも同機能を搭載することで、エンジニアリングコストを低減できる。
 そのため、製品開発で、ハイエンドモデルCPUユニットとのメモリ構成などハードウェアの違いを考慮しつつ、ファームウェア構造の共通化を図る必要があった。
 既存のMELSEC QシリーズのCPUユニットでファームウェアのモジュール化を実施していたが、各機能で使用する共通処理部に対しては実施していなかった。そのため、機能の削除や変更を実施する際、他機能や他処理への影響を確認して設計していた。例えば、内蔵Ethernet機能の場合、コネクション管理部とSLMP通信機能でデータのやり取りを実施するために共有メモリを介している。そのため、SLMP機能を削除する場合、複数機能で使用されるコネクション管理部や共有メモリに対する影響を考慮する必要がある(図7)。
 MELSEC iQ-RシリーズのCPUユニットでは、メッセージ通信によってタスク間のデータのやり取りを実施する方式とすることで、共有メモリを介さずにタスク間でデータのやり取りが可能なため、機能を変更する場合、共有メモリなどへの影響を考慮する必要がなく、メッセージ通信を切るだけで機能変更ができる。例えば、データベース機能では、タスク間のデータのやり取りにメッセージ通信を使用する処理とした。これによって、データベース機能を変更する場合、メッセージ通信を切るだけでよく、呼出し元や共有メモリに影響しない作りとした。その結果、機能の独立性が高くなり、機能変更が容易となった(図8)。
 これによって、エントリーモデルCPUでは、ハイエンドモデルCPUユニットとメモリ構成などハードウェアの違いがあっても、ファームウェア構造の共通化を容易に実現できた。

図7.MELSEC Qシリーズでのモジュール化
図7.MELSEC Qシリーズでのモジュール化

図8.MELSEC iQ-Rシリーズでのモジュール化
図8.MELSEC iQ-Rシリーズでのモジュール化

4. むすび

 MELSEC iQ-RシリーズのエントリーモデルCPUユニットの特長とそれらを実現する技術について述べた。今後も、シーケンサ市場の発展を牽引(けんいん)していく。

製品紹介

MELSEC iQ-Rシリーズ

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