巻頭言
三菱電機技報
三菱電機の優れた技術・製品、技術開発活動を広く紹介しています。2026年03月号
特集 「社会課題の解決に貢献する半導体デバイス」
2026年03月23日発行
社会課題の解決に貢献する半導体デバイス特集に寄せて
特集論文
全4編
社外技術表彰
特集概要
再生可能エネルギーの普及や社会インフラ・医療の高度化が進み、資源・エネルギー価格の変動や気候変動の深刻化も重なり、暮らしと産業を巡る課題は複雑化しています。安心・安全とカーボンニュートラルは三菱電機の重要課題です。
当社の半導体は、①再生可能エネルギーと高効率化で電力の有効活用を支えるパワーデバイス、②現場を可視化し判断の質を高めるセンサーデバイス、③データを速く・省エネルギーに伝える光・高周波デバイス、の三つの柱で貢献します。
本号では①②に資するパワーデバイスとセンサーデバイスの価値に焦点を当てて、エネルギー・医療・社会インフラにおける貢献を概説します。
巻頭言
竹見政義
特集論文 (全4編)
山下哲生/安東 優
定格電圧2kV超のシリコンカーバイド(SiC)パワーモジュールは,再生可能エネルギー用途を対象としており,SiCMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)を採用することで高い出力電力を追求している。高出力化を実現するためには,チップの発熱を抑制する必要があり,放熱性を向上させた最適な構造を確立した。さらに,多並列に搭載されたチップ間の電流は,回路パターンの最適化によって均流化され,SiCパワーモジュールで一般的に観測される発振を抑制しつつ,高速スイッチング性能を維持できた。その結果,2レベルトポロジーで当該2kV超SiCパワーモジュールを4kHzでスイッチング動作させ,同フットプリントの第7世代2kVシリコン(Si)パワーモジュールよりも2倍以上の出力を実現した。
浜崎海翔/後藤晶子
三菱電機は,家庭用電化製品向けパワー半導体モジュール“SLIMDIP”シリーズに,初めてSiC(シリコンカーバイド)技術を採用した“フルSiC SLIMDIP”と“ハイブリッドSiC SLIMDIP”を開発した(製品定格はどちらも15A/600V)(図1)。SiC-MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor:金属酸化膜半導体製の電界効果トランジスター)を搭載したこの製品は,従来のSi(シリコン)RC-IGBT(Reverse Conducting Insulated Gate Bipolar Transistor:IGBTとダイオードを1チップ化したもの)を搭載した製品と比べて電力損失を大幅に低減し,インバーターの省エネルギー性能を飛躍的に向上させる。また,既存製品と同一基板で置換可能な設計を採用しており,導入障壁を低く抑えつつ短期間での普及を促進する。当社はこの製品の開発を通じて,空調などの電力消費量の削減,ピーク電力の抑制,及び温室効果ガス排出削減に先導的に寄与し,社会全体の脱炭素化と電力インフラ負荷軽減に貢献する(1)(2)。
大佐賀 毅
電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)などの電動車(xEV)の駆動モーター用のインバーター向けに,標準仕様のパワー半導体チップを開発中である。三菱電機独自の構造や製造工程を用いたSiC(シリコンカーバイド)-MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)チップで,xEV用インバーターの性能向上を図って,航続距離の延伸や電費の改善に貢献し,脱炭素社会の実現を推進する。
長永隆志/秋山浩一
三菱電機は,環境,ヘルスケア,産業分野での課題解決のため,半導体をベースとした高感度・高性能なセンサーデバイスを開発している。開発例としては,環境分野向けデバイスではグラフェン光センサー,ヘルスケア分野向けデバイスでは非侵襲血糖値センサー,産業分野向けデバイスではMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)型3D超音波センサー及び静電容量センサーが挙げられる。