三菱電機技報

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三菱電機の優れた技術・製品、技術開発活動を広く紹介しています。

2026年04月号

「インダストリー・モビリティ」

2026年04月20日発行

三菱電機技報 2026年04月号

巻頭言

FAの基盤技術 ―工作機械の視点から―

特集論文

全6編

特集概要

三菱電機グループでは、事業を通じた社会課題の解決による持続可能な社会への貢献を目指しています。
そのため、インダストリー・モビリティBA(ビジネスエリア)ではデジタル技術を駆使した製品群を活用してFAシステム事業と自動車機器事業の間で技術シナジーを最大化し、相互に事業を強化していきます。
本号では、両事業領域での最近の取組みについて紹介します。インダストリー領域では、見える化アプリケーション“データナビゲートアプリ”やWi-Fi 6E対応無線LANアダプタ“NZ2WL-JPGNA”、新型ワイヤ放電加工機“MGシリーズ”を紹介します。
モビリティ領域では、第3世代MCU(L型:全長短縮)の開発・量産化、車室内モニタリングの課題と対策、ターボチャージャー用電制アクチュエーターのトランスアクスル用途展開を紹介します。


巻頭言

特集論文(全6編)

製造現場の設備レベルで稼働状況の監視や生産性の分析を行う,見える化アプリケーション“データナビゲートアプリ(DataNavigateApp)”を開発した。MELSEC iQ-RシリーズのシーケンサCPUとC言語インテリジェント機能ユニットを使って稼働信号や電力量を収集し,稼働状況やエネルギー消費量を,パソコンやタブレットのWebブラウザーで表示できる。監視に必要な信号の割り付けもWebブラウザーから行うことが可能になり,設備の見える化システムの導入が容易で,立ち上げの労力軽減が期待できる。

製造業の少量多品種化に伴い,柔軟な生産ライン構築のため無線化の需要が高まっている。製造現場での無線ネットワークは,ノイズや電波干渉による通信の不安定性が課題である。Wi-Fi(注1) 6E対応無線LANアダプタ“NZ2WL-JPGNA”は,6GHz帯対応,メッシュ機能,ローミング機能によって外乱に強い安定通信を実現し,CC-Link IE TSNフレーム優先送信機能で三菱電機FA機器との高い親和性を確保する。これによって,既存設備への容易な無線導入が可能になり,製造現場の柔軟性向上と生産性改善に貢献する。

(注1) Wi-Fiは,Wi-Fi Allianceの登録商標である。

製造業では若年層の就業者数減少や外国人労働者の受入れ,熟練技術者の引退などが進んでいる。一方,金型製作では高精度化も進んでいることから,誰でも簡単に高品位な加工が可能な加工機の需要が高まっている。また,昨今の物価高の影響などによって,生産ロスやコスト削減についての要望も高い。そこで,“誰でも簡単に高品位な加工”が可能であり,“安定した稼働”と“省エネルギー”を実現するワイヤ放電加工機を開発することで,製造現場の課題解決に貢献する。

三菱電機モビリティ㈱(MELMB)は,EPS(Electric Power Steering:電動パワーステアリング)向けに,モーター,インバーター,制御回路を一体化したMCU(Motor Controller Unit)を量産しており,2020年からは,先進運転支援システムや自動運転搭載車に対応した冗長性を確保可能なラック搭載型EPS第3世代MCUを量産化している。今回,従来機種に対して全長を約50%短縮し,コラムへの搭載可能で,冗長性も確保した第3世代MCU(L型)を開発・量産化した。インバーター及び制御回路,モーター角度検出センサーを1枚の基板で構成し,構造を簡素化,最適化することによって,全長を約50%短縮しただけでなく構造部品の部品点数を25%削減し,生産性を向上させた。さらに,放熱性能及びEMC(ElectroMagnetic Compatibility)性能を確保した製品の開発に成功した。

自動車の室内をカメラで撮像し,各乗員の状態をセンシングする車室内モニタリングシステムは,自動運転の普及や一部地域での規格・アセスメント化によって,需要が高まっている。運転者を含む前席をセンシング対象とする場合,広角カメラを利用してカメラ1台でセンシングを行うケースが考えられる。このように広角カメラを用いたケースでは,運転者と運転者以外を明確に分けてセンシングすることが必要である。三菱電機モビリティ㈱(MELMB)は,センシングのうち特に,撮像制御や運転者の顔検出,顔認証について,開発や改善を行った。

近年の電気自動車(EV)化に伴い,内燃機関(ICE)車の需要が減少する中で,ターボチャージャー用アクチュエーターの需要も減少していく傾向にあり,三菱電機モビリティ㈱(MELMB)としてアクチュエーターの新たな用途への適用を検討している。MELMBのアクチュエーターの最大の特長は,減速機構及び直動出力機構をモーター内部に持っているという点にあり,車両の様々な用途で,小型・軽量化や車両側機構の簡略化などの有効性が期待される。一例として,三菱自動車工業㈱(以下“三菱自動車”という。)が公開した“エクスフォース”ハイブリッドEVモデルに採用された,トランスアクスル用途への展開での開発内容をまとめる。今後も多様な用途で直動のニーズは存在すると考えられるため,各用途に向けた直動アクチュエーターの適用開発を進める。