三菱電機技報

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三菱電機の優れた技術・製品、技術開発活動を広く紹介しています。

2026年05月号

「業務変革を支えるデジタル基盤」

2026年05月28日発行

三菱電機技報 2026年05月号

巻頭言

変革の時代を牽引(けんいん)するDX:業務改革を通じた持続可能な社会への貢献

特集論文

全6編

特集概要

三菱電機グループでは、“ビジネスモデルの変革”“マインドセットの変革”“デジタル基盤の強化”を重要テーマに“Serendie(セレンディ)”を核とした“循環型 デジタル・エンジニアリング”を目指す業務改革を推進しています。
本号では単なるデジタル置換ではなく、最新テクノロジーを活用したデータトランスフォーメーション(DX)による業務改革を中心に、三菱電機グループの“デジタル基盤の強化”への取組みを紹介します。


巻頭言

佐野修也

特集論文(全6編)

木村友祐/村上一弥/武田明希子

三菱電機グループはデジタル基盤“Serendie”を通して“イノベーティブカンパニー”への変革を目指している(2)(3)。この変革を実現するために掲げた三つの重要なテーマが,“ビジネスモデルの変革”“マインドセットの変革”“デジタル基盤の強化”である。デジタル基盤の強化の一環として,事業横断でデータ集約と管理,分析を可能にするため,データ分析基盤を構築した(4)
しかし,従来の“守り”主眼のデータ管理ではデータが各部門内にサイロ化され,組織横断的な活用が進まないという課題があった。この課題を解決するため,従来の守り主眼のデータ管理からの脱却が必要であり,データを資産として活用するための体制と仕組みの構築,及び文化醸成に取り組んできた。具体的には,全社横断組織“データガバナンスオフィス”を組成し,データ活用と保護を両立させるために“データ活用宣言”や“データ活用マネジメント基本方針書”を発行した。さらにドメインデータオフィサー制度や教育を通じてデータ活用を担う人財を育成し,組織的なデータ循環を生み出す環境を整えてきた。

野口 涼/宮澤達也/寺崎佳世/森垣 努

三菱電機グループの業務DX(Digital Transformation)プロジェクト(以下“M-X”(エムクロス)という。)(1)は,業務プロセスとシステムを標準化して全体最適に変革する全社施策である。M-Xの実現には各事業・製作所のシステムに分散したデータを標準化・整流化して統合管理する“データ一元化”の仕組みが必要であり,これを実現する基盤として“M-Xデータ基盤”を整備する。今回,M-Xデータ基盤の中核機能であるデータ連携システムに焦点を当てて,これまでの三菱電機グループのデータ連携の課題を整理した上で,SalesforceのMuleSoft(注1)をベースとした新たなデータ連携システムを提案した。このデータ連携システムは,システム間のデータ連携を標準化・整流化することで効率的,かつ汎用的なデータ連携の実現を可能にする。

(注1) MuleSoftは,Salesforce, inc.の登録商標である。

森田 登/鈴木雅也/鈴木利幸

デジタルトランスフォーメーション(DX)の実現には,迅速かつ柔軟な意思決定を行う必要がある。そのためには,企業内データの収集・加工・統合を担って,継続的に高品質なデータを提供する基盤(データ活用基盤)が不可欠である。この基盤の構築は,目的や得られるメリットを常に明確にして段階的に進めるとよい。構成要素としては,共通マスターデータと共通トランザクションデータの整備,データハブによる疎結合連携等の基本的なアーキテクチャーの採用が標準になりつつある。開発時は,用いるツールやサービス,方式の特長を十分理解して選択し,常に目的を見失うことなく進めることが肝要である。
今後,AI技術の発展によってデータ活用の幅が広がって,なお一層,高品質なデータの維持管理が必須になると考えられる。それに伴って,データ活用基盤の役割と重要性は継続的に増していく。

森本章仁/清水勇志/宗 裕文

仮想化製品のトップシェアであったVMware社製品は長年多くの企業で採用されてきたが,ライセンス価格の高騰や将来的な継続利用に対する懸念から,利用企業は仮想化基盤の再検討を迫られている。
三菱電機デジタルイノベーション㈱(MEDigital)では,VMware社製品に代わる仮想化基盤を検討し,自社プライベートクラウドサービスで,VMware社製品から新たな仮想化基盤への切替えを進めている。
MEDigitalでは,VMware社製品からの切替え時の利用企業の課題に着目した仮想化基盤を選定し,それを活用した新サービス基盤を展開する。

園田康博/松田悠希/峰川和之/野中敬太/高野謙司

調剤薬局向け次世代コミュニケーションサービス“AnyCOMPASS”では,2025年1月から,生成AIを活用した服薬指導及び薬剤服用歴(以下“薬歴”という。)作成支援サービスをリリースした。更なる生成AIの活用を目指して,AIエージェントを活用した調剤薬局の業務導線をトータルにサポートし,薬剤師を支援する調剤薬局向けオールインワンプラットフォームに進化させる開発を進めている。AIエージェント開発では単独型からチャットフロー,ワークフロー型に進化させて,マルチモーダル技術も活用し,調剤薬局の業務をサポートするサービスを実現する予定である。2025年9~11月に開催された日本薬剤師会学術大会ほか多くの展示会に参考出展を実施した。薬剤師からは,AIエージェント活用の先進事例として非常に高い評価を得ることができた。このサービスは2026年度中のリリースを予定している。

品川純治/南方裕樹

三菱電機デジタルイノベーション㈱(MEDigital)は電子帳簿保存法(以下,“電帳法”という。)対応や文書の電子化を支援するため,2021年3月から,電子取引サービス“@Sign”(以下,“@Sign”という。)を提供している。@Signは電子契約の締結,見積書・請求書等の検印,発行,受取,管理をオンラインで完結できる電帳法に対応したクラウドサービスである。自社運営のタイムスタンプ及び電子署名基盤を活用しており,電帳法への適合に加えて,技術流出対策や知的財産権の保護にも有効である。近年の市場ニーズの高度化に合わせて,システム連携機能の強化や大規模運用を支える機能拡充を実施した。@Signの活用は,単なる法令遵守にとどまらず,顧客ニーズに即した業務効率化や生産性向上を通じて,企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を強力に推進できる。