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星空の散歩道

国立天文台 副台長 渡部潤一 Junichi Watanabe国立天文台 副台長 渡部潤一 Junichi Watanabe

 Vol.126

太陽系外から飛来した小天体オウムアムア

10月にハワイの天体望遠鏡が奇妙な天体を発見した。最初は彗星のような軌道を持っていたため、国際天文学連合では、彗星としての仮符号”C/2017 U1”をつけて発表した。ここまではごく普通であった。ところが、その軌道が正確に決まるにつれ、世界中の研究者に衝撃が走った。というのも、その軌道がきわめて異常で、どうやら太陽系外からやってきた可能性が強くなったからである。

太陽系の中の小天体はほとんどが楕円軌道、つまり太陽の周りをぐるぐる回っている。周期性を持っているのである。一部の彗星は太陽から遠く離れた場所からやってくることもあり、放物線に近いのだが、それでももともとはきわめて細長い楕円軌道である。どちらも太陽の重力によって、そのまわりをまわっているわけである。ところが、この”C/2017 U1”は、明らかに双曲線軌道、つまり太陽系の外からやってきて、たまたま太陽に近づき、通り過ぎて去っていく、”開いた”軌道であった。これまで小惑星は数十万個、彗星は1万個に上る発見がある。その中でも双曲線軌道をもつものは、惑星に近づいた結果だったり、観測誤差だったりというのがほとんどで、明確に”開いた”軌道を持つ天体が発見されたのは初めてだった。

軌道が確定すると、国際天文学連合は、星間空間(interstellar)の天体と言う意味で、初めて頭文字「I」を用いて、太陽系外の天体であることを明示し、その一番目と言うことで「1I(いち・あい)」として”1I/2017 U1”としたのである。ハワイ大学等の研究者からなる発見者グループからの提案で、通称はオウムアムアとなった。オウムアムアは、ハワイ語に由来する言葉で、オウは「手を伸ばす、手を差し出す」、ムアは「最初の」という意味である。ムアムアと繰り返しているのは強調する場合の言い方という。いずれにしろ、オウムアムアには太陽系外から私たちのところにやってきたメッセンジャーという意味が込められている。

太陽系外からやってきたと思われる小天体オウムアムアの想像図。極めて細長い葉巻型の異常な形をしているとされる。(提供:European Southern Observatory /M. Kornmesser)

さっそく世界中の多くの望遠鏡がオウムアムアに向けられ、観測データが積み上がっていくと、さらに驚くべき事が判明した。その明るさの変化から推定した形状が、極端に細長かったのである。ラグビーボールのような形をした天体が自転している場合、地球から眺めると、細長く見える時と、丸く見える時とがある。細長く見える時には断面積が広くなって、太陽の光を多く反射するので明るいのだが、丸く見える時には断面積は小さくなり、太陽光反射が少なくなって暗く見える。その変光の周期と変光幅とを調べることで、自転周期と形がある程度推定できるのである。その推定値は自転周期は8時間ほどだが、形状は長さが400mほどだが、幅は40m程度しかないと思われたのである。きわめて細長かったのだ。実は、太陽系の小天体では、細長くてもその比率はせいぜい3:1どまりで、これだけ極端な例は見つかっていない。自然の天体としてはかなり奇妙なのである。

もしかしたら、宇宙人が建造した後、うち捨てられた人工建造物、例えば巨大な宇宙船ではないか、という噂もあるほどだ。実は、このような細長い葉巻型の形状は、なるべく危険を避ける意味で、宇宙航行には最も適しているといわれている。進行方向に断面積を最小にすることで、宇宙空間の塵との衝突のリスクを少なくすることができるからである。しかし、8時間の周期でぐるぐる自転している点は、そのリスク低減とは矛盾している。宇宙船などではないか、あるいは宇宙船であったとしても制御されていないか、どちらかである。ブレークスルー・リッスンと呼ばれるプロジェクト(知的生命体の信号を捉えようとしているグループ)では、彼らの使える電波望遠鏡を駆使して、オウムアムアから何らかの信号が出ているかどうかの観測を行おうとしているほどだ。巨大な宇宙船説は、荒唐無稽かもしれないのだが、想像が膨らむのは確かである。