2010年4月5日
シャトルを愛する人たち
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- NASA引退後ボランティアとして25年以上、宇宙飛行士を発射台に送り続けてきたアンジェロ・タイアニさん。ケネディ宇宙センタープレスサイトで。
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- ドイツ人記者のゲルハルドとクルーウォークアウト直前に。在米日本人記者・かの子さんが撮影してくれた一枚。
オレンジ色の気密服(通称パンプキンスーツ)に着替えた宇宙飛行士たちが、打ち上げ約4時間前にO&Cビル(Operations and Checkout Building)を出て発射台に向かう。NASA用語(!?)で「クルー ウォーク アウト(Crew Walk Out)と呼ばれるイベントの間中、報道陣の前を行ったり来たりしていたおじいちゃん。キャップにはシャトルのピンバッジ多数。白ひげにジージャン。「何者?」と思っていたらNY在住の記者が「前回のシャトル打ち上げの時に地元紙の取材を受けてたよ。名物おじさんかもね」と教えてくれた。
プレスサイトに戻ってみると、なんとその彼がいる。さっそく話しかけてみた。名前はAngelo Taiani。NASAを引退しボランティアとしてクルーウォークアウト時にO&Cビルの前に立ち続けているという。いつから?と聞くと「1984年から」チャレンジャー号事故の前からということになる!現役時代は、組み立て工場(VAB)や発射台で仕事をしていた。「シャトルが今年で引退するのをどう思いますか?」と聞いてみると「過去に5つも6つも計画がキャンセルされるのを見てきた。いつものことだよ」と淡々としている。
怒っている人もいた。プレスツアーカウンターのボランティアは「オバマは間違いを犯したよ。計画変更でここケネディ宇宙センターの雇用の半分は失われて、去る仲間も多いんだ。でも彼らに言っているんだよ。半年後はどうなっているかわからない。また戻って来られるよってね」。
打ち上げを取材する世界のジャーナリストにも熱い人が多い。ドイツ人のゲルハルドは、1986年から毎回渡米して、スペースシャトルの打ち上げから、テキサス州ヒューストンでの宇宙飛行士との記者会見まで取材している。「ぼくは少年時代にアポロ計画の虜になってから、宇宙飛行士オタクさ」という彼は、NASA飛行士はもちろん日本人飛行士のことも詳しい。「コーイチ(若田飛行士)は日本で大事なイベントがあって今回の打ち上げに来られないんだよね。彼の奥さんはドイツ人だよ」と飛行士の家族の事情まで精通している。そんな彼は「シャトルが引退したら現場の取材ができなくて悲しいよ」と嘆く。
ゲルハルドやオランダ人ジャーナリスト達を紹介してくれたのは、米国在住の日本人夫妻、Jean Nakashimaさんとかの子さんだった。Jeanさんは本業は植物生理学者で今回のミッションで植物実験を実施しながら、ジャーナリストとして写真を撮っていた。どの場所で見るとどんな写真が撮れるかを知り尽くしていて、その情報を惜しみなく教えてくれる(一人で行動するフリーには涙が出るほど嬉しかった)。シャトル引退にあわせてシャトル関連本の出版を計画中で、本当に楽しみだ。 ボランティアやジャーナリスト達のそれぞれの想いを載せて、シャトルは宇宙を目指す。
