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星空の散歩道

2014年5月19日 vol.83

きりん座の流星群

 きりん座という星座をご存じだろうか。かなり面積の大きな星座で、しかも北極星のちかくにある北天の星座なので、日本からも一年中見える位置にある。いわゆる周極星となる星座である。ただ、あまり馴染みがないのは、明るい恒星がないために、認識されることがないためである。アルファ星が4.3等、ベータ星でも4.0等である。最も明るい星でも四等星どまりなので、なかなか目立たない。それでも暗い星をつないでいくと、カシオペヤ座やペルセウス座の方向に足を伸ばし、北極星の方向に長い首を伸ばした形を描くことができる。もともとが北極星近くの明るい星がない領域に、17世紀はじめにオランダの天文・地理学者であるペトルス・プランシウスによって聖書に登場する動物として設定された星座である。これはらくだとされていたが、最終的には長い首が決め手になり、ポーランドの天文学者ヨハネス・ヘヴェリウスによって「きりん座」となった。こうした、いわゆる新しい"隙間星座"は、星をつないでも、何の形かわからないものが多いのだが、きりん座はその中では出来がいい星座といえるかもしれない。このきりん座が、いまちょっとした話題となっている。というのも、この星座に放射点を持つ流星群の活発な出現が見られるかも知れない、と予想されているからだ。この流星群の放射点は、ちょうどきりん座の首の中間あたりとなる。

5月24日20時30分(東京)の北の空。きりん座が大きく首を伸ばしているのがわかる。予想放射点は+印付近。(アストロアーツ・ステラナビゲータで作成)

5月24日20時30分(東京)の北の空。きりん座が大きく首を伸ばしているのがわかる。予想放射点は+印付近。(アストロアーツ・ステラナビゲータで作成)

 今回の予測の発端になったのは、2004年2月3日に発見されたリニア彗星(209P)である。発見当時は18等ほどで、当初は、小惑星2004CBとして登録されていたが、その後、彗星の発見者としても知られているオーストラリアのロバート・マックノートによって尾があることがわかり、彗星と認識された。周期は5年ほどと計算され、実際に2008年の回帰が観測されたため、周期彗星としての番号209Pが付与された。2014年5月6日には近日点を再び通過し、11等から14等程度になっているが、いずれにしてもかなり暗い。月末の29日には地球にかなり接近する。その距離は0.0554天文単位(1天文単位は地球ー太陽の平均距離)、すなわち830万キロメートルほどだが、それでももともとが小さな彗星なので暗いままと予想されている。

 リニア彗星は、歪んだ楕円軌道を動いており、遠日点(太陽から最も遠い点)は木星付近なのだが、近日点が0.97天文単位と、地球軌道の内側にまで入ってくる。そのために、地球の軌道とリニア彗星の軌道が接近している。一般に、こういった状況だと、彗星がかなり活発に流星の元になる砂粒や塵を放出していれば、流星群が出現する可能性がある。そこで、この彗星を起源とする流星群の出現がないか、と探したところ、過去の出現は見当たらなかったものの、今年5月24日に出現が期待できることがわかったのである。流星の元になるのは、フランスの研究グループによれば、リニア彗星から1803年から1924年のもの、日本の佐藤幹哉によると1803年から1914年にかけてのもの、そしてカナダの研究グループによれば1798年、1803年、1868年、1878年、1883年に加えて、1924年から1954年、1964年から1979年のものとされている。出現数は一時間あたり数十から数百個で、活発に出現すればかなり見応えがあるだろう。ただ、残念ながら否定的な見方もある。この彗星そのものが新しく発見されているので、20世紀以前は活動していなかった可能性もあるからだ。彗星活動がなければ流星のもととなる塵粒は放出されない。また1976年から1977年あたりで、遠日点で木星に近づいて軌道が変わっていることも気がかりだ。もちろん、上記の予測は、これを考慮しているのだが。もうひとつ日本にとって残念なのは、出現予想時刻が昼になってしまうことだ。15時から17時となるので、日本ではまだ日が沈む前となる。星が見え始める20時過ぎには流星群の活動が終わっているだろう。世界的にも、また放射点が高いこともあって、北米のカナダ・アメリカ国境地域しか目撃できそうな場所がない。ここはひとつ、活発な出現が長く続き、もしかすると一つくらいは流れ星が見えるかも、と期待しながら、ふだんは注目しないような、きりん座の姿を探すことをお薦めしたい。