ここから本文

DSPACE

  • DSPACEトップページ
  • DSPACEコンテンツメニュー

ここから本文

星空の散歩道

2014年6月18日 vol.84

大きく傾いた土星の環を眺めよう

 土星が見頃になっている。5月に衝(太陽−地球−土星がほぼまっすぐに並ぶ位置)を迎え、夕方には南の夜空に輝いているのが見える。なにしろ、現在、土星はてんびん座という明るい星の少ない星座にある。てんびん座で最も明るい星でも3等星。そこに0等級の土星が動いてきたのだから、目立たないはずはない。堂々と落ち着いた輝きで、都会の空でもすぐに探し出すことができる。空を広く見渡すと、西側には赤く輝く火星と白く輝くおとめ座の1等星スピカ、東側には赤く輝くさそり座の1等星アンタレスがある。まさに土星は、その中間にあって、6月半ばには夜9時頃には真南に輝くので、すぐにわかるだろう。

 さて、ぜひ眺めて欲しいのは土星の環である。なにしろ、天体望遠鏡で眺める土星は美しい。漆黒の闇に明るくぽっかりと浮かぶ環を持つ土星の姿は、小さな望遠鏡で眺める天体の中でも、もっとも感動するもののひとつである。

1995年〜2013年の土星の輪の見え方(提供:AstroArts、撮影:)

1995年〜2014年の土星の環の見え方(撮影:田島雅和)

 土星本体は木星に次いで、太陽系第2の大きさを持つ惑星である。本体そのものにはあまり変化もなく、模様も見えない。ただ、しばしば急激な変化が現れることもある。2011年には、土星本体に巨大な白斑が出現した(参照:vol.64「見頃を迎える土星に白斑出現」)。約30年ごとに、こうした数千kmにも及ぶ巨大な白斑が出現することもあるが、こちらの方は小型の天体望遠鏡では、なかなか眺めることは難しい。

 そうした本体に比較して、環は誰が見てもわかる壮大な構造だ。本体の赤道半径が6万kmなのに、環の半径の2倍以上の約14万kmもある。この環は細いリングの集合体で、ところどころに密度が薄い隙間がある。実際に環をつくっているのは細かい岩や氷の塊の集合体である。かつて土星の周りをまわっていた衛星か、あるいは彗星か小惑星などの天体が、土星の強い重力(潮汐力)をうけて破壊したか、あるいは衝突によって破壊されたのかもしれない。そういった現象によって生まれた破片が、お互いに大小の衝突を繰り返しつつ、次第にこのような美しい形になっていったとされている。

 この土星の環は軌道平面に対して27度ほど傾いている。土星の公転周期は約30年なので、太陽の方向にある地球から見ると、土星の環の傾きが年によって異なる。つまり、大きく傾いて見えるときと、真横から水平に見えるときがあるのだ。水平に見える時には、ほとんど環そのものが見えなくなる。実は、環は非常に薄く、せいぜい数百m以下である。数万kmの幅を持つ環が数百mの厚さしかないというのは、限りなく薄いということである。この「環の消失」は2009年に起こった。それ以来、環はどんどん傾いてきており、かなり大きく開いた環を眺められる時期なのである。やはり土星はしっかりと環が見える方がよいものだ。

 土星の環を眺めるには、どうしても天体望遠鏡が必要である。この「星空の散歩道」は肉眼で眺められる星座や天文現象を解説・紹介してきたのだが、さすがに土星の環だけは天体望遠鏡を使わざるを得ない。もちろん、望遠鏡をお持ちの方は、それを取り出して眺めていただければ、と思う。30〜40倍の倍率があると、土星がなんとなく楕円形に見える。50倍あると、はっきりと環であることがわかり、口径10cm程度の天体望遠鏡で100倍程度の倍率で眺めると、美しい環の細かな構造がわかるはずだ。もちろん、そのために天体望遠鏡を買う必要は無い。近くの科学館や公開天文台あるいはプラネタリウムなどが開催する観望会に参加すれば、見ることができるので、問い合わせてみよう。どうしても、天体望遠鏡が欲しいという人もいるだろう。そういう人は、これを機会に良質な天体望遠鏡を買ってみてもよいかもしれない。組み立て式キットだと安いし、仕組みを知る上での勉強にもなる。個人的には星の手帖社というところで販売している「10分で組立! 手軽に見られる組立天体望遠鏡 35倍」が3000円程度なので、お薦めである。