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星空の散歩道

2014年12月17日 vol.90

今年最後の流星群を眺めよう

 12月末の声を聞くと、忙しくて星空どころでもなくなるのだが、そんなときこそ、ちょっとだけ時間をつくって夜空を眺める余裕を持ちたいものである。そのよいきっかけになるのが、天文ファンにとっては仕事納めとなる年末の流星群である。その名は「こぐま座流星群」。あまり有名な流星群ではないので聞いたことがない方もおられるかもしれない。放射点が北極星のあるこぐま座にあり、日本を含む北半球中緯度よりも緯度の高いところで見られる。いや、見られることがあると言った方が適切かも知れない。というのも、こぐま座流星群は、前回に紹介したほうおう座流星群ほどではないのだが、普段はほとんんど出現しないが、しばしば突発的に現われるからだ。

2014年12月23日早朝が見頃「こぐま座流星群」(提供:アストロアーツ/アストロアーツ・ステラナビゲータで作成)

2014年12月23日早朝が見頃「こぐま座流星群」
(提供:アストロアーツ/アストロアーツ・ステラナビゲータで作成)

 こういった突発的な出現を見せる流星群の代表、しし座流星群は、母親であるテンペル・タットル彗星が回帰するのに伴って出現が活発になるものだ。ところが、こぐま座流星群の場合、その活動が活発になるのは、母親の彗星の回帰とはほぼ無関係である。むしろ、彗星が太陽から遠いところにあることが多い。こぐま座流星群の母親はタットル彗星(8P/Tuttle)という、公転周期が約13.5年ほどの彗星なのだが、流星群が活発になった1945年や1986年、2000年には、母彗星は遠日点、つまり軌道上で太陽から最も遠い点に位置していた。この遠日点は土星軌道よりも遠い場所である。どうやら活発な出現の源になる砂粒の集団が、母親からかなり離れて存在しているらしい。その出現年をよく眺めてみると、1986年と2000年と間隔は14年。これは彗星の周期である13.5年に近い。その意味で言えば、次の出現の可能性は2000年+13.5年なので、単純な計算では2014年は期待が高いわけである。

 ちなみに、こぐま座流星群の出現は古くから記録が残されている。最も古いものは、15世紀の中国の記録とされているが、日本でも1795年、1799年にも記録が残されている。これらの出現記録は、母親の彗星よりも古い。アメリカの天文学者タットルが彗星を発見したのは19世紀半ば、1858年1月のことである。こぐま座流星群の活動のピークは、12月22日から23日早朝と予想されている。放射点は、こぐま座ベータ星付近になる。この星は、日本中のどこでも地平線下に沈むことはなく周極星である。夕方、暗くなった頃に地平線に最も近いが、明け方にかけてどんどん高くなっていく。そのため、明け方の方が数は飛びそうだが、活発に出現する時間帯はかなり短いこともあって、その予想ピーク時刻を中心に観察してみたい。佐藤幹哉氏(かわさき宙と緑の科学館)の最新の研究によれば、出現のピーク時刻は23日06時から10時(日本時)であり、やはり23日の明け方に期待ができそうだ。ちなみに、これまでの出現の例から見ても、それ以外の日は、ほとんど出現は期待できない。

 いずれにしろ、今年は当たり年になりそうなのだが、ちょうど新月の時期に当たり、月明かりの影響がないことも幸いである。理想的な星空の元で観察すれば、1時間あたり十個から数十個程度の出現が見られるかも知れない。1945年の出現では、一時間あたり50個を軽く越える規模だったので、果たしてどのような規模の出現になるか、見てのお楽しみと言えるだろう。ただ、なにしろ真冬の寒い時期である。防寒対策は十分に。