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大彗星が見たい!! 〜アイソン彗星を楽しもう〜C/2012 S1(ISON)2012年秋に発見され、その接近が期待されているアイソン彗星。日本での観測が好条件の大彗星を楽しみましょう。
国立天文台の渡部潤一先生が、アイソン彗星や彗星についての疑問に答えてくれました!

2013年、期待されていたアイソン彗星は、11月29日の太陽最接近時に、ほぼ消滅してしまうという残念な結果になってしまいました。宇宙は計り知れない存在だと思い知らされた出来事でしたが、アイソン彗星をきっかけに彗星や宇宙に興味を持った方も多かったのではないでしょうか。次なる彗星の接近に期待しましょう!
渡部潤一先生の連載コラム『星空の散歩道』では、アイソン彗星の崩壊時の様子やその予兆などをご紹介していますので、ぜひご覧ください。

アイソン彗星を楽しむための彗星入門

2013年は、彗星の当たり年と言われています。春にパンスターズ彗星が近づいたのは記憶に新しいですね。そしてこの秋、大本命のアイソン彗星「C/2012 S1(ISON)」の見頃が間近に迫ってきました。観測技術の発達により、彗星のふるまいがある程度予測できるようになったとは言え、近づいてくるまでどうなるかわからないのが彗星です。そんな気まぐれな彗星や、アイソン彗星の見どころなどを国立天文台の渡部潤一先生に聞いてみました。


Q アイソン彗星が話題になっていますが、どんなところが注目されているのでしょうか。

  • ヘール・ボップ彗星
    ヘール・ボップ彗星

A久しぶりに肉眼で尾を伸ばした姿が見えそうな彗星です。前回、日本でほうき星のカタチ(尾が伸びている状態)が肉眼で見えた彗星は、97年のヘール・ボップ彗星ですから、16年振りということになりますね。彗星は、年間50個以上も見つかっていますが、肉眼で見えるような明るい彗星はそうそう現れませんので、滅多にない機会と言えるでしょう。

 肉眼で見える大彗星のパターンは、次の3つが挙げられます。

(1)彗星そのものが巨大
(2)地球接近型(ニアミス型)
(3)大陽接近型(サングレーザー型)

 アイソン彗星は(3)の太陽接近型の彗星で、数キロの核をもつ大きな彗星です。ある程度大きな彗星が太陽に近づく軌道を持っていると大彗星になる可能性があるのです。太陽に近づく彗星は数多くありますが、ほとんどは小さくて太陽の熱にあぶられ消滅してしまいます。アイソン彗星クラスの彗星が太陽に近づくのは、数十年から50年に1回くらいなので、期待されているのです。


Q そもそも、彗星とはどんな天体なんでしょうか。

A太陽系の中には、惑星や準惑星ほどの大きさをもたない、太陽系小天体と呼ばれる天体がたくさんあります。それらは、主に小惑星彗星に分類されます。小惑星は太陽の近くにあり、揮発成分のない岩の塊のような天体です。

 一方、彗星はいつもは太陽から非常に遠いところにあって、氷や雪をたくさん含んでいます。それが太陽に近づくと太陽の熱にあぶられ、氷が蒸発し、ガスやチリを吹き出します。それらが尾をひく様子からほうき星と呼ばれているんですね。

 彗星の成分は、個々に微妙な差はありますが、基本的にはどれもほぼ同じです。主成分である水が8割を占め、残りの2割に一酸化炭素や二酸化炭素、有機物や砂粒などが含まれています。その成分から汚れた雪玉とも呼ばれています。


Q 彗星はどこからやってくるのでしょうか。

A彗星の故郷はふたつあると考えられています。ひとつは、エッジワース・カイパーベルトという海王星の外側にドーナツ状に広がっている領域です。このあたりには、氷を主成分とした天体が無数に存在しています。それらの天体同士が衝突した破片や、内側の惑星の影響などによって、その天体そのものがもともとの軌道からはずれ、太陽に近づき、彗星に姿を変えるものが現れます。ここからやってくる彗星の多くは、比較的小さい軌道をもち、数年から数十年という短い周期で太陽を回っています。

 もうひとつの故郷は、オールトの雲と呼ばれている場所で、太陽を大きく球殻状に囲んでいます。この領域は、太陽の重力の影響をギリギリ受けている状態なので、他の恒星が近づくと、その重力の影響で揺さぶられ、太陽系外にはじかれたり、彗星となって太陽に向かってくる天体が生まれるのです。これらの彗星は、「オールト雲彗星」と呼ばれていて、太陽に一度近づくと、半分ほどは二度と戻ってくることはありません。たとえ、戻ってくる軌道を持っていたとしても、数千年や、数万年以上の周期となるので、正確な予測は困難なのです。アイソン彗星は、このオールトの雲からやってくる、初めて出会う彗星です。

 そんな遠いところからやって来る彗星ですが、今のところ太陽系に起源を持つ彗星しか見つかっていません。彗星が記録に残されるようになってからの歴史は2000年程度ですから、1万年とか10万年とか観測していれば、1個くらい太陽系以外の起源をもつ彗星も見つかるかもしれないですね(笑)

  • 円盤状のエッジワース・カイパーベルトを覆うように、オールトの雲が球殻状に広がっています。(提供:国立天文台 天文情報センター)
    円盤状のエッジワース・カイパーベルトを覆うように、オールトの雲が球殻状に広がっています。(提供:国立天文台 天文情報センター)

Q 過去に話題になった彗星にはどんな彗星がありますか?

  • 百武彗星
    百武彗星

A日本では、96年の百武彗星、97年のヘール・ボップ彗星が有名です。これだけの彗星がたて続けにやってくることは相当めずらしいことです。

 ヘール・ボップ彗星は、これまで記録された約3800個の彗星のなかで第2位の巨大な彗星で、これは数千年に1回か2回訪れるか、というくらいのレベルなんです。

 百武彗星は、日本のアマチュア天文家 百武裕司さんによって発見された、地球接近型の彗星で、地球に近づいた距離では、20位以内に入るくらいの大彗星でした。空の三分の二を占めるほどの見事な尾を見せてくれたんですよ。

反対に、73年のコホーテク彗星と、90年のオースチン彗星は、期待されていたほどの明るさにならなかったことで有名です。本当に近づくまでどうなるかわからないのが彗星なのです。


Q 先生が特に思い出に残っている彗星はありますか?

  • ウェスト彗星(提供:星の村天文台)
    ウェスト彗星(提供:星の村天文台)

A1976年のウェスト彗星です。20世紀で最も美しいと言われている彗星で、全く期待されていなかったにも関わらず、すばらしい尾を伸ばしました。

 ちょうど高校受験の時で、口コミで明るくなっていると聞いてはいたのです。それで、まあ見てみようかという感じで、明け方に窓を明けたら、美しく尾を伸ばした姿が広がっていて、思わず、あっ!と声をあげてしまいましたね。手にしていた双眼鏡を落としたくらいです。期待していなかった分、お驚きが大きかったですねぇ。


Q 接近中のアイソン彗星の見どころは?

A太陽接近型の大型の彗星ですから、肉眼で尾を伸ばした姿を見ることができるでしょう。太陽に最接近(近日点通過:11月29日)したあとの12月上旬が見頃で、中旬くらいまでは、肉眼で見えるでしょう。望遠鏡や双眼鏡を使えば1月下旬頃まで見られます。1月8日には、北極星の近くに一晩中見えるので、それを楽しみにしている天文ファンも多いんですよ。

 日本は、観測条件にもすごく恵まれています。3月に接近したパンスターズ彗星に比べると、この時期は寒くて空の透明度も高く、関東地方をはじめ、特に太平洋側などは冬型(の気圧配置)になれば晴れます!また、今回のアイソン彗星は、北から太陽に近づいて北に帰っていく軌道なので、一日ごとに太陽から遠ざかっていく様子が手にとるようにわかります。

 アイソン彗星は、太陽から離れていく12月上旬には、明け方の東の空を昇ってきますので、地平線がよく見える場所、高い場所などで観測するといいですね。もちろん星がキレイに見える場所がベストですが、見えればどこでもいいんですよ。良い観測スポットを探してみてください。

  • アイソン彗星の軌道と位置(提供:国立天文台 天文情報センター)
    アイソン彗星の軌道と位置(提供:国立天文台 天文情報センター)

Q 最後に、彗星の魅力と観測の注意点をお聞かせください。

A彗星観測は、予想と違ったことが必ず起こるんです。それが、私が天文学をやりだしたきっかけにもなりました。ひとつとして同じ彗星はなく、それぞれ個性があるんですよ。特にアイソン彗星もそうですが、初めてやってくる彗星は、どういう振る舞いをするのか予測がつかないところがおもしろいですね。

 その日の彗星の姿はその日しか見る事ができません。一期一会のようなものです。一晩で尾っぽのカタチや明るさが劇的に変わることもありますので、そのダイナミックな様子をぜひ見てほしいですね。スケッチや写真などで記録しておくのもよいでしょう。

 観測は、屋外や暗がりのなかで行う場合もあるかと思いますので、特に普段訪れないような場所に行かれる際は、十分注意しましょう。

・自宅以外で観察する場合は、必ず明るいうちに場所の確認をすること。
・一人で行動しないこと。
・暗い場所では、懐中電灯などで明りを確保すること。
・長い時間外に出ている時は寒さ対策も忘れずに。
・空が明けてきたら、太陽に直接望遠鏡や双眼鏡を絶対に向けないこと。

 今回のアイソン彗星は、滅多に見ることのできない大彗星になる可能性を秘めています。この機会にぜひ楽しんでください。


アイソン彗星についてもっと詳しく知りたい方はこちらをご参照ください。