使い終えた家電は、どこへ行くのか
新しい冷蔵庫やエアコンを買ったとき。それまで使っていた家電は、販売店などを通じて引き取られていきます。リサイクル料金を支払い、所定のルートで回収される。そこで多くの人は、「きちんと手放せた」と感じるのではないでしょうか。
その感覚は、とても自然なものです。使い終えた家電を正しい方法で回収に出すことは、資源を社会の中で活かしていくための大切な行動です。日々のごみ分別や、家電を適切なルートで手放すことは、私たちの暮らしの中にも少しずつ根づいてきました。
では、その先で、家電はどのように扱われているのでしょうか。そして、そもそも家電をつくる段階では、使われた後のことまで、どのように考えられているのでしょうか。
今回のテーマである「サーキュラーエコノミー」は、そうした問いから広がっていく考え方です。日本語では「循環経済」とも呼ばれます。少し難しく聞こえる言葉ですが、身近な家電から見てみると、毎日の暮らしと深く関わっていることがわかります。

サーキュラーエコノミーとは、ものの一生を見つめ直すこと
サーキュラーエコノミーは、リサイクルを大切な取り組みの一つとして含みながら、さらに広い視点で、ものの一生を捉え直す考え方です。
製品をつくる。選ぶ。使う。直す。手放す。そして、回収された資源をもう一度活かす。その一連の流れを、できるだけ無駄なく、価値がめぐり続ける形へ近づけていくことを目指します。
つまり、サーキュラーエコノミーは「捨てた後」の話だけではありません。製品が生まれる前から、使われている間、そして手放された後までを一つの流れとして考えること。その考え方に立つと、家電の見え方も変わってきます。

リサイクルから、循環へ。視点はどこが違うのか
これまで、環境への取り組みとしてよく知られてきた言葉に「3R」があります。リデュース、リユース、リサイクル。使う資源を減らす、くり返し使う、使い終えたものを資源として再利用する、という考え方です。日常の分別や回収は、この3Rの中でも特にリサイクルに近い行動と言えます。
一方で、サーキュラーエコノミーは、「捨てた後にどうするか」だけでなく、「捨てるものをできるだけ生まないために、最初からどう考えるか」にも目を向けます。
長く使える製品にするには、どんな設計や素材選びが必要か。壊れたときに修理しやすくするには、どんな構造やサポートが必要か。回収された資源を、できるだけ価値の高い形で次の製品へ戻すには、どんな技術が必要か。そうしたことを、製品が生まれる前の段階から考えていくところに特徴があります。
よくあるものの流れは、「資源を採る、つくる、使う、手放す」という一方向の形で説明されます。これに対してサーキュラーエコノミーでは、使われた製品を終着点にしません。修理して使い続ける。部品や素材を取り出して活かす。再び製品づくりへ戻していく。ものの流れを、できるだけ輪のようにつなげていく発想です。
家電は、循環を考える身近な入口
家電は、この考え方を理解するうえで、とても身近な存在です。冷蔵庫は毎日の食生活を支え、エアコンは室内環境を整えるなど、家電は私たちの生活を助けています。どれも暮らしに欠かせない一方で、多くの部品や素材からつくられ、家庭で長く使われた後には、回収や再資源化の仕組みと関わっていきます。
家電には、家庭で使われる前から、手放された後まで続く長い流れがあります。どんな素材を使うのか。どのくらい長く使えるように設計するのか。故障したときに修理しやすい構造になっているのか。回収された後、素材はどう選別され、どう活かされるのか。
ふだん目にすることの少ないその流れを知ることが、家電からサーキュラーエコノミーを考える第一歩になります。

使い終えた家電を、もう一度資源へ
三菱電機グループは、サーキュラーエコノミーへの取り組みの一つとして、プラスチックの再資源化を進めています。使用済み家電から得られたプラスチックを高純度に選別し、再び家電などに用いる「自己循環リサイクル」です。
家電には、性質の異なるさまざまなプラスチックが使われています。回収された素材をもう一度製品に使うには、異物を取り除き、種類ごとに選別し、品質を確認する工程が欠かせません。リサイクルとは、単に「集めて、もう一度使う」ことではなく、製品に戻せる品質へ整えていく技術や仕組みに支えられています。

自己循環リサイクルが示しているのは、回収された素材をできるだけ高い価値のまま使い続けようとする姿勢です。使い終えた家電から取り出した素材を、再び製品に戻すには、品質や安全性、安定供給など、製品づくりに必要な条件を満たす必要があります。そこには、回収する側、選別する側、設計する側、製造する側の連携があります。
また、三菱電機は2026年6月、信越化学工業およびエコアドバンスと連携し、廃棄された家庭用空調製品からレアアース磁石を回収・再資源化し、新しい家庭用空調製品へ再利用する自己循環リサイクルを開始しました。レアアースは、空調製品などの性能を支える重要な資源の一つです。こうした希少資源を、使われた製品から回収し、再び製品づくりに活かすことも、循環を進める具体的な取り組みです。

家電をめぐらせるために、できること
設計や素材選定、製造、回収、再資源化の技術は、企業が担う大きな役割です。一方で、家電を選び、使い、手入れし、最後に正しい方法で手放す私たちにも、できることがあります。
たとえば家電を選ぶときに、価格や機能だけでなく、長く使えそうか、修理やサポートの情報にアクセスしやすいか、暮らしに無理なくなじむかを考えてみる。使っている間は、取扱説明書に沿って手入れをし、故障かなと思ったときには、すぐに買い替える前に原因を確認してみる。手放すときには、対象品目や回収方法を確認し、適切なルートに戻す。
ひとつひとつは小さな行動ですが、ものを一方向で終わらせないための大切な接点になります。

もちろん、家電は長く使い続けることだけが、いつも最適とは限りません。省エネ性能や安全面を考えれば、買い替えがよりよい選択になることもあります。
大切なのは、「壊れたからすぐ捨てる」「古いから買い替える」と決めつけず、その時々でよりよい方法を考えることです。使い続ける、修理する、買い替える、正しく手放す。その判断の中に循環の考え方を持つことが、これからの家電との向き合い方につながります。
今あるものを大切に使う。手放すときには、次の行き先に思いを向ける。ものづくりの背景を知ることで、選び方も変わっていく。そんな意識の積み重ねから、家電との関係は少しずつ変わっていきます。
次回は、「捨てない」を設計するという考え方へ
これまで家電は、「買う」「使う」「壊れたら買い替える」という流れで見られることが多かったかもしれません。けれど、どのような素材でつくられ、どのように長く使えるように考えられ、手放された後にどう資源へ戻っていくのかを知ると、見え方は変わります。
サーキュラーエコノミーは、社会全体で考えていくテーマでありながら、毎日の選択にもつながる身近な考え方です。その考え方は、製品が使われる前の、素材選びやデザインの段階から始まっています。
次回は、「捨てない」という考え方が、家電づくりの中でどのように形になっているのか。三菱電機の技術者とデザイナーの対話を通じて、これからの家電づくりについて考えていきます。


