初心者でも簡単! 靴みがきのいろは初心者でも簡単! 靴みがきのいろは

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「おしゃれは足元から」といわれるほど、靴は第一印象を左右します。
今回は、誰でも無理なく実践できる靴みがきの手順やコツをご紹介。
基本をマスターして、お気に入りの靴を長くきれいに使いましょう!

好印象はきれいな足元から 好印象はきれいな足元から

靴みがきが大切な理由

靴は第一印象を大きく左右するアイテムの代表格です。「おしゃれは足元から」といわれますが、靴がピカピカな人からは清潔感を感じます。靴がきれいになると、スーツやシャツなど身だしなみ全体に気を配るようにもなるものです。
靴磨きに取り組むメリットは、それだけではありません。外に出て人に会いたくなるなど気持ちをグッと高める効果があります。大事な商談や面接の前などに、靴みがき専門店を訪れる人が多いのはそのためです。

これだけはおさえよう

普段の手入れの基本は、ホコリを落とすブラッシングです。ホコリを落とさずにはき続けると湿気や汚れが吸着し、ますますホコリがつきやすくなっていきます。その状態で放置すると、さらに手入れが大変になってしまうという悪循環。できれば、帰宅後や次に出かける前までに、ホコリをさっと軽くブラシで落としましょう。このひと手間を習慣化するだけで、靴をきれいに保つことができます。

靴みがきは使用頻度に合わせて

日常的に使う靴の靴みがきは、2カ月に1回くらいがおすすめ。はいている間につやがなくなってくるので、つやを維持したい場合はもう少し頻度を上げるといいでしょう。靴の汚れを落とすとともに、革に栄養を与えてつやを出す。これによって、靴の寿命は格段に延びます。
年に1〜2回など、使用頻度の低い靴は、はいた後にブラッシングし、クリーナーで汚れを落としてからデリケートクリームで保湿をしましょう。靴が乾いたら、シューキーパーを入れて保管すると、型崩れすることなくきれいな状態で保管できます。

靴みがきに必要な道具

今回使う道具はこちらです。

  • 馬毛などやわらかいブラシ
  • 豚毛などの硬めのブラシ
  • 布(今回はネル生地を使用)
  • 乳化性クリーム
  • コバ用の小さめのブラシ
  • クリーナー(汚れ落とし用)
  • デリケートクリーム
  • ワックス(鏡面磨き用)
  • シューキーパー

家庭ですべての道具を揃えるのは難しい。そんなときは、馬毛のブラシ、豚毛のブラシ、乳化性クリーム、布があればひとまずOKです。布は、綿100パーセントの白いTシャツの切れ端やストッキング、古いメガネ拭きなどでも代用できます。
上級者ならおさえておきたいアイテムは、シューキーパー、クリーナー、コバ用のブラシ、透明なデリケートクリーム、鏡面磨き用のワックスです。

今回はすべてのアイテムを使った手順を紹介します。いよいよ、靴みがきスタートです。

汚れ落としと水分補給で、靴のスキンケア 汚れ落としと水分補給で、靴のスキンケア

ブラッシング

はじめにブラッシングを行います。しっかりホコリを落としたい場合は、靴紐をほどきましょう。シューキーパーはなくても大丈夫ですが、入れるとシワが伸びやすくなります。

ホコリが溜まりやすいのは大きく2箇所。ベロ部分、そしてコバと甲革(アッパー)の継ぎ目の部分です。ベロでは、ホコリを外側に掻き出すようにブラシを動かします。コバと甲革の継ぎ目は、小さめのブラシに持ち替えて、歯磨きをするような要領で隙間のホコリを丁寧に落としていきましょう。その後、全体を20〜30秒ほどまんべんなくブラッシングします。

布を手にしっかりと固定

つづいて、クリーナーで靴の汚れを落としていきます。幅5センチメートル、長さ30〜50センチメートルほどの長い布を、外れにくいように指に巻くのがポイントです。写真を参考に、指先を隠すように2本の指に布をかけます。垂れた布を、指の後ろで固めにひねって手首に巻きつけます。しっかり固定できていれば、余った布の巻き方に決まりはありません。

クリーナーで汚れ落とし

クリーナーはよく振ってから使いましょう。1円玉より少し小さい程度の量を、布を巻いた指先に出し、よくなじませます。指先で優しくなでるようにして、靴全体にクリーナーを行き渡らせるのがコツです。その後、はきジワに念入りにクリーナーをつけます。大切なのは、前回のお手入れでつけたクリームやワックスをきれいに落とすこと。鏡面磨きの施された靴など、ワックスがたくさんついている場合には、クリーナーではなく、あえてクリームやワックスで溶かしながら落とすほうが効率的です。

デリケートクリームで水分と栄養を補給

クリーナーで汚れを落とした後は、デリケートクリームで靴に水分と栄養を与えます。クリームは指に直接つけ、靴に塗っていきましょう。少量を取り、靴全体にまんべんなく薄く伸ばす。足りなくなったらまた少量を取る。これを繰り返していきます。その後は、塗り跡がなくなるように、豚毛のブラシで全体をブラッシング。軽めの力で素早く動かし、クリームを擦り込むのがポイントです。

乳化性クリームで栄養補給とつや出し

デリケートクリームにはない「ろう」が含まれている乳化性クリームで、栄養補給とつや出しを行います。靴と同じ色の乳化性クリームを指先に少量とり、靴に塗り広げていきましょう。このとき、ベロに塗ると靴の羽根の内側に乳化性クリームの色が移ってしまう可能性があるので要注意です。ベロ以外の靴全体に、塗り残しがないようにまんべんなく塗りましょう。続いてブラッシングです。力加減はやや強めで、塗り跡がなくなるまで行いましょう。ブラシを写真のように横向きにしてつかむと、無理なく力が入ります。

乾拭きして表面をきれいに

表面の余計なクリームを取るために、乾拭きをしましょう。このときに使う布も、Tシャツの切れ端などで代用できます。ここまでの作業をおさらいすると、汚れを落とし、水分と栄養を補給して、つやを出す。一連の流れはスキンケアに似ています。ここまでの工程だけでも手入れは十分ですが、より光らせたい場合は続けて鏡面磨きを行いましょう。

鏡面磨きで、さらに輝くつやを 鏡面磨きで、さらに輝くつやを

鏡面磨きに最適なのは乾いたワックス

鏡面磨きに使うワックスは、開封してからしばらく経つと乾いて固くなっていきます。写真の左側が、開封して間もないワックス。右側が乾燥してひびが入ったワックスです。乾燥したからといって捨ててしまうのはもったいない。有機溶剤が揮発して密度が高くなっており、靴を光らせやすくなるからです。プロの靴みがき専門店は、わざわざワックスを乾燥させることもあるとか。

鏡面磨きの鍵は水

鏡面磨きには、水が欠かせません。水がないと、ワックスが伸びないどころか、せっかく塗ったワックスも剥がれてしまいます。ただし、つけ過ぎは禁物です。布を軽く湿らせる程度に留めましょう。水が少量ずつ出るハンドラップ(写真参照)があると便利ですが、霧吹きでも代用できます。

力を抜き、層をつくるイメージで

ワックスは、布につけて塗っても、指で塗っても構いません。布で塗る場合には、布を巻いた指で軽く容器の隅をなぞるようにワックスを取ります。布になじませ、つま先から磨いていきましょう。指でワックスを塗る場合には、塗った後に布で伸ばしていきます。靴の芯(固い部分)の入っている部分が、塗る範囲の目安です。1回塗っただけでも十分なつやは出ますが、さらに光らせたい場合は複数回塗り重ねていきます。大切なのは、強くこすり過ぎないこと。力を抜いて、層をつくるイメージを持つといいでしょう。つま先が終わったら、かかとにもワックスを塗り、磨いていきます。

つやはグラデーションに

塗り重ねる場合は、先端を一番光らせ、はきジワに近づくにつれて徐々に光加減が少なくなるようにグラデーションでツヤを出していくとプロっぽい仕上がりに。1回目ははきジワ付近まで、2回目は少しつま先寄りまで、という要領で、つま先にかけてワックスが厚塗りになるように塗り重ねていくと、きれいなグラデーションができます。

靴ひもを結び、仕上げにコバの手入れをして完成

靴ひもは、軽くホコリを落としてから結びます。傷んできたら、定期的に買い替えましょう。最後にコバをケアします。はいているうちに角が削れ、表面の色が剥がれてくるからです。コバと同じ色の乳化性クリームを塗って補修しましょう。革靴とコバの色が異なる場合、歩く時などに、コバに塗ったクリームが革靴本体に触れて色移りしないよう注意が必要。これで、靴みがきは完了です。

ピカピカの靴に変身。意外な発見も

磨きあげた靴を改めて目にすると、大きな達成感があります。無心で磨いている時間は、いい気分転換になります。黙々と磨きながら、徐々にきれいになっていく変化を楽しむ。実際、お酒の肴に靴みがきをするのが趣味という方もいるのだとか。きれいに磨いた靴をはいて人に会うと、相手も自分も気持ちいいものです。一見難しそうに見えた靴みがきも、手順とコツを押さえれば案外難しくありません。魅力あふれる靴みがきを、習慣にしてみてはいかがでしょうか?

2022.01.12

藤田章一さん

東京・新橋の靴みがき専門店「靴みがき本舗」の店長。靴みがき本舗は、2008年の創業以来、都内で3店舗(※)を運営している。「靴は育てるもの。使いこむとともに、繰り返し手入れをするなかで、靴の表情が変わっていくところに面白さがあります」と語る藤田さん。靴みがき本舗では、お客さんのニーズに合わせて様々な靴みがきのメニューを用意している。

※店舗情報は取材時のものです。

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