新生活で気をつけたい、においのエチケット新生活で気をつけたい、においのエチケット

本取材の際には、入念な感染対策を行いました。
外出の際は、くれぐれも感染予防を心がけましょう。

自分のにおいには、なかなか気づかない──。
まわりも指摘しづらく、知らぬ間に不快感を与えてしまっていることすらあります。
これから始まる新生活でも、においによって第一印象が崩れるのは避けたいもの。
そこで、今回のテーマはにおいのセルフケア。医師の桐村里紗先生に解説していただきました。

春はにおいが最も気になる季節 春はにおいが最も気になる季節

気温が低く、あまり汗をかかない冬場は、汗腺の機能が弱るもの。ところが春の訪れとともに急に暖かくなると、ベタベタの汗をかきやすくなります。原因は汗の中にミネラル分が多く混ざること。冬の間に汗腺に溜まった垢や老廃物が汗に混ざると、さらなるにおいの原因に。

加えて、春は新生活の始まりとともに慣れない環境に身を置くことの多い季節です。緊張やストレスによって、特有のにおいのある汗をかきやすくなるだけでなく、体内の吸収や分解機能も低下。肝機能や腸内環境も悪化によって体臭が生じることもあるのです。

体臭や口臭の発生源 体臭や口臭の発生源

体臭の主な原因は大きく3つ。「発汗」「加齢」「ストレス」です。汗臭には、汗から皮膚の常在菌が作り出す酸っぱいにおい成分に加えて、肝機能の悪化から生じるアンモニアなどのにおい成分も含まれます。加齢に伴うにおいは「ミドル脂臭」「加齢臭」「老人臭」の大きく3種類です。

加齢に伴うにおいの変化

加齢に伴うにおいの変化

ストレスがかかると、人の汗には硫化物が混ざります。するとネギのようなにおいが発生します。疲労によって肝機能が悪化すると、大腸で作られたアンモニアが肝臓で分解しきれず血液に乗って全身をめぐり、皮膚から放出。これもにおいの原因に。加えて、緊張が続くと交感神経が優位になり、皮脂の酸化が進んでにおいの原因になることもあります。

口臭には、病的なものと生理的なものがあります。病的な口臭の8割は歯周病が原因。ほかだと蓄膿や咽頭炎、口腔がんなどが原因になることもあります。一方、生理的な口臭の主な原因は、唾液の分泌量の減少です。ストレスや口呼吸、加齢によって唾液が減ると、常在細菌が過剰に増え、においの元になります。ストレスで胃が弱ると、生ゴミのような口臭がすることも。胃の消化力が落ち、腸内環境が悪化したために発生したジメチルサルファイドというにおい成分が、血中から肺を通して口から出たものがこれです。

体臭や口臭の難点は、なんといっても自覚しづらいこと。ならば使用後の枕や自分の洋服を収めたクローゼットの中を嗅いでください。においを客観的に知覚しやすくなります。家族など、身近な人と指摘し合う関係性を築いておくのもおすすめです。においを体調変化のバロメーターと捉え、互いの身体を気遣う姿勢で声を掛け合うといいでしょう。市販の体臭チェッカーや口臭チェッカーを活用する手もあります。

対処法①においをすぐに抑えるには 対処法①においをすぐに抑えるには

体臭をすぐに抑えたいときは、汗を拭いたりシャワーを浴びたりすることで、物理的に皮膚の表面をきれいにすること。これが最も効果的です。ただし、洗浄力の高いシャンプーを頻繁に使いすぎるのは考えもの。特に頭皮については乾燥して皮脂の分泌が増え、かえってベタついてしまう可能性があります。できれば合成の界面活性剤が入った製品は避け、アミノ酸系のシャンプーを1日1回使いましょう。肌をきちんと保湿することも大切です。

衣服のにおいに対しては、消臭スプレーをかけるのが最も手軽な消臭方法。身の回りの共生可能な細菌まで殺さないよう、除菌効果のある製品ではなく、におい成分を分解するイオン系のスプレーを使いましょう。天然の抗菌作用のあるスプレーも、健康面での害が少ないためおすすめです。たばこのにおいは強力で衣服に染み付きやすいため、予め消臭スプレーをかけておくといいでしょう。

口臭防止の基本は、口腔内環境を清潔に保つこと。食後はできるだけ早めに、歯間ブラシやデンタルフロスで歯間の食べかすを取り除き、口をすすいで洗い流しましょう。食後すぐに歯間ブラシやうがいができないときは、キシリトール100%のガムがおすすめです。歯磨きは、食事の1時間後くらいに行います。食事の直後の口腔内は、唾液の分泌により細菌が減っているだけでなく、酸性に傾いており、歯ブラシでこすると歯の表面が傷つく恐れがあるからです。一方、睡眠中は唾液の分泌が減って細菌が増殖するため、就寝前と起床後の口腔ケアは欠かせません。

対処法②生活習慣を見直して、においにくい体質に 対処法②生活習慣を見直して、においにくい体質に

においにくい体質づくりに有効な手段のひとつが、じっくりと汗をかく有酸素運動です。目標は、無理のない範囲で1日1回。入浴も効果的です。40度くらいのお湯に15分ほど浸かるといいでしょう。血管を迅速に開く作用のあるエプソムソルトを入れると、温浴効果をいっそう高められます。汗の原料になる水分補給も忘れずに。身体の水分の新陳代謝を高めることが、発汗習慣の基本です。

食生活も、体臭に大きく影響します。脂肪や糖質の過剰摂取は避け、皮脂の原料である中性脂肪を蓄積させないことがポイント。油脂の種類を賢く選ぶことも重要です。

抗酸化作用のあるビタミンEも、体臭予防の強い味方。ナッツやごま、アボカドなどが代表格です。ストレスで弱った腸内環境を改善するには、発酵食品やオリゴ糖、食物繊維の豊富な食材がおすすめ。アルコールは肝機能を悪化させるだけでなく、二日酔いの原因物質によって皮脂の酸化も進むため、摂り過ぎを避けましょう。

良質な脂質を選んで体臭を改善

避けるべき
油脂
動物性脂肪
オメガ6系(サラダ油、ヒマワリ油、コーン油、大豆油)
酸化した油脂・トランス脂肪酸(加工油脂、マーガリン、ショートニング)
積極的に
摂りたい油脂
オメガ3系(アマニ油、エゴマ油、ヘンプシードオイル)
オメガ9系(エクストラヴァージンオリーブオイル、米油、国産のナタネ油)

ストレス解消によっても、においは抑えられます。十分な睡眠のほか、入浴やアロマなど、自分に合った方法を見つけてください。さらに、侮れないのが「笑い」の作用。交感神経が鎮まり、副交感神経が優位になるため、緊張が和らぎます。笑えないときは、目尻を下げて口角を上げ、にっこりとした表情をつくりましょう。脳が勘違いしてリラックス状態になります。ハグやスキンシップも効果的です。オキシトシンが分泌されると、心身はリラックス状態になります。

2022.04.01

桐村里紗(きりむら・りさ)さん

tenrai株式会社代表取締役/医師
体質の改善によって身体の内側からにおいを抑えるヒントを、さまざまなメディアで発信。著書に『日本人はなぜ臭いと言われるのか~口臭と体臭の科学』(光文社新書)、『腸と森の「土」を育てる』(光文社新書)など。人と微生物との共生を目指す「プラネタリーヘルス」を提唱。

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