コンポストで、エコも豊かな食卓も。コンポストで、エコも豊かな食卓も。

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生ごみを堆肥に変える「コンポスト」。
SDGsにある17の目標のうち12番目「つくる責任 つかう責任」の達成にも貢献できることから、近年注目を集めています。
今回は9月のSDGs週間にちなんで、家庭でも実践できるコンポストについて、
コンポストアドバイザーの鴨志田純さんに教えていただきました。

生ごみの処理を自然の力で 生ごみの処理を自然の力で

そもそもコンポストって何?

コンポストとは、生ごみなどを微生物の働きによって高温で発酵・分解・熟成し、堆肥をつくる作業のこと。堆肥そのものや、コンポスト容器を指すこともあります。微生物の力を使った堆肥づくりは、昔から伝承されてきた知恵のひとつです。

堆肥づくりは一見難しそうに思えますが、コンポスト容器を使えば簡単です。コンポスト容器の中では微生物の働きが活発になり、その活動から出る熱で生ごみを効率的に分解できます。

環境に優しい上に、家庭菜園にも生かせる。

コンポストの良さは、家庭から出るごみを大幅に減らせることです。ごみ袋の消費量が減ると家計の負担が軽くなります。自治体でのゴミ処分費用も軽減できるほか、地球温暖化の原因となるCO2の排出量も減らせます。コンポストをきっかけとして、環境保護に対する意識が高まる人も少なくありません。もうひとつの魅力は、おいしい野菜づくりのベースになること。コロナ禍で家庭菜園に対するニーズが高まったことが追い風となり、コンポストを設置する世帯が増えました。

家庭におけるコンポストの実践方法 家庭におけるコンポストの実践方法

コンポスト容器を設置して、資材を入れよう

さまざまなコンポスト容器が市販で手に入ります。お住まいの地域によっては、コンポスト容器を購入する際に自治体から補助金が出ることも。事前に調べてから買うといいでしょう。初心者にお勧めなのが、基材がセットになった商品。バッグ型やダンボール製のキットなどがあります。設置が簡単で、安価なのが利点です。

コンポスト容器を設置したら、床材を投入して全体をよく混ぜましょう。2日ほどで高温になるので、2、3日に1回、撹拌作業を繰り返します。外気温と同じになったら床材は完成です。容器の40パーセント程度まで床材を入れたら、生ごみを投入。生ごみは一日あたりおよそ500グラムずつ入れていくといいでしょう。生ごみを投入してからおよそ3カ月から4カ月で分解できます。

和の朝食のイメージで、資材をバランス良く

コンポストにおいては、C(炭素資材)、N(窒素資材)、B(微生物資材)、M(ミネラル資材)のバランスがポイントとなります。それぞれの分類の具体例は以下の通りです。

C:炭素資材 もみ殻、そば殻、おがくず、剪定枝、小麦わら、バーク(樹皮)、落ち葉、樹木や竹の粉砕物など
N:窒素資材 生ごみ、畜ふん、米ぬか、コーヒーかす、茶殻、使用済みの食用油など
B:微生物資材 落ち葉、腐葉土、完熟堆肥、雑草、野草の根など
M:ミネラル資材 壁土の再利用、赤玉土、麦飯石、草木灰、かき殻、貝殻、えび殻、山土など

家庭で配合する際に思い浮かべたいのが、ごはん、味噌汁、焼き魚、納豆、温泉卵、漬物がならぶ和の朝食です。C(炭素)は白米、N(窒素)を卵や焼き魚、B(微生物)は味噌や納豆などの発酵食品、M(ミネラル)は醤油や漬物などに含まれる塩分。これらをバランスよく摂るイメージで、資材を入れていくのがおすすめです。

家庭のコンポスト お悩み解決

コンポストを導入する際に、最初に迷いやすいのが設置場所。日当たりのいい庭やベランダに置きましょう。太陽熱でケース内の温度がしっかりと上がるようにするためです。生ごみの分解が進みやすいだけでなく、虫の発生も防げます。

臭いもコンポストにおける悩みのひとつ。悪臭の大きな原因は水分です。乾いているごみと水分を含んだごみをあらかじめ分別して、水分の多いごみは三角コーナーなどで水気を切ってからコンポストケースに入れましょう。生ごみをタッパーに入れて冷蔵庫で保管し、日が出ている時間帯にケースに投入すると腐敗防止に効果的です。大きな生ごみを細かく刻むと、乾燥しやすくなります。

入れてはいけない生ごみはあるか。これも初心者が疑問に思いやすいポイントです。基本的にどんな生ごみを投入しても構いません。野菜や果物のほか、卵の殻、魚の骨、コーヒーかすなど、全て投入して大丈夫です。ただし、CNBMのバランスを保つため、醤油や塩分濃度の高い漬物などを大量に投入するのは避けましょう。

応用編 ケースの手作りから堆肥の活用まで 応用編 ケースの手作りから堆肥の活用まで

コンポスト容器のDIYにチャレンジ

コンポスト容器は手作りできます。家族2~4人の生ごみを処理するなら、50~75リットル程度の容器をホームセンターなどで購入。光を通す素材のふたに通気孔を、ケース本体底の隅にも排水用の穴を空けましょう。水はけを良くするために、コンクリートブロックなどでケースを傾け、排水口に水が流れるように設置します。

コンポストで地元農家とつながる

近年では農家と地域住民が連携し、家庭で作ったコンポストを農家で引き取る取り組みが広がっています。農家では、さらに高温で処理して完璧に熟成。この堆肥を使って栽培された野菜を各家庭へ。こうすることで、コンポストによる環境にやさしいサイクルが形づくられます。地域のコミュニティづくりのきっかけにもなっています。

堆肥をおいしい野菜づくりに

手作りの堆肥でおいしい野菜が育ったら、コンポストを続けるモチベーションアップにもつながります。家庭菜園を始めたばかりであれば、土壌の質に生育が左右されにくい里芋などを試してみるのがおすすめです。そのほかにも、キクイモやショウガといった塊茎類は育てやすい野菜の代表格。慣れてきたら、きゅうりやトマトなどの果菜類にチャレンジするといいでしょう。土づくりから行い、家庭で育てた野菜のおいしさは格別です。環境にやさしい生活習慣や、ご家庭での食事をより楽しむきっかけとして、コンポストを始めてみてはいかがでしょうか。

2022.09.01

鴨志田純(かもしだ・じゅん)さん

コンポストアドバイザー/鴨志田農園 園主

東京都三鷹市で農業を営む鴨志田さん。ネパールで雇用創出の取り組みの一環としてコンポストの事業を初めて以来、日本の全国各地でコンポストの普及や啓発に尽力。「生ごみの問題を、次世代に背負わせないように」という想いが、コンポストアドバイザーとしての活動の原動力です。

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