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- 朝型生活に切り替えよう
「早起きしてもっと一日を有効に使いたい」「資格や語学の勉強など、朝活に挑戦したい」。
朝の時間をうまく使えるとなんだか得をした気分になるものです。
でも、いきなり夜型の生活から朝型に切り替えようとしても苦労するのも事実。
そこで、無理なく朝型生活に順応するための工夫について、精神科医で産業医の穂積桜さんに伺いました。
朝型、夜型という生活リズムの傾向は、体内時計のパターンに左右されます。それを決定づけるのは遺伝的な要素が一番大きく、50%程度。残りの50%は年齢と仕事上の制約などの生活習慣が占めています。なかでも年齢の影響は大きく、もともと朝型の人であっても20歳くらいの頃は夜型のピークに達し、以降20年で30分くらいずつ朝型になっていく傾向があります。大学生が1限目の授業に弱いのも、お年寄りに早起きの人が多いのも自然な現象なのです。
これらの体内時計のパターンのことをクロノタイプと呼び、社会全体では、朝型が3割、夜型が3割、その中間が4割だとされています。
クロノタイプの違いが、生活や健康面に如実に表れることは、様々な研究結果が示しています。
1．朝型＝勤勉、夜型＝クリエイティブ
朝型の人は勤勉で、ルーティーンワークを得意とする一方で、夜型にはクリエイティブな人が多く、性格的にも刺激を求め、新寄探索性が高いとされ、より率直にものを言う人が多い印象です。
2．夜型は不健康？
夜型の人の学業成績は朝型に劣ると言われます。そもそも学校は朝早くから始まる上に、入試などの学力テストも多くは午前中から始まります。企業の始業時間も大半が午前中。要は、社会全体が夜型の人には不利なように設計されているともいえるわけです。私も産業医として睡眠時間の短さを原因にメンタルヘルスを損なった方を診ることが少なくありません。実際、夜型は朝型よりも鬱になる人が約2倍いるという研究結果もあります。どうしても早起きができないという方は、フレックス制を採用している企業や、早起きの必要のない仕事に就くこともひとつの手段。自分のクロノタイプを大事にして、自分らしいライフスタイルを考えてみてほしいですね。
3．早寝早起きは健康的？
早寝早起きができ、朝ごはんを食べる人が良好なメンタルだという研究もあるのですが、私は逆だと思っています。朝型は早くから集中して仕事や作業ができ、胃腸も動いているから朝ごはんが食べられる。結果的に健康になる、と。つまり、朝型か夜型かで睡眠時間や起床時間が決まり、それによって一定の生活習慣ができていくと考えています。夜型から朝型に移行することの難しさは、このあたりにも要因があるのではないでしょうか。
4．朝型夜型と睡眠の関係
なんとなく朝型の方が良い睡眠をしているような印象がありますが、朝型か夜型かで睡眠の質自体に違いはありません。そもそも「良い睡眠」ということ自体の定義が難しく、脳波で睡眠の深さを測ることはできても、それが本人の体感と一致しないことも珍しくないのです。よく睡眠時間が短くなったことを病気の兆しと捉える人もいますが、多くは加齢によるもので、あくまで健全な老化の一環にすぎません。朝型夜型に限らず、十分に睡眠が取れているかどうかは、日中にどれくらい眠気を感じるかを基準にするのがいいと思います。
「夜型だから朝起きられない」というお悩みを抱えている人は多いと思いますが、朝型生活に近づいていく方法はいくつか考えられます。
1．活動のメリハリをつける
一般に、昼夜の活動差が大きいほど睡眠の質が上がると言われます。「日中に光を浴びた量×時間」によって、自然な睡眠を促し持続させる働きをもつ睡眠ホルモン「メラトニン」の分泌量が決まり、たくさん活動したほうが夜ぐっすり眠れたという感覚が得やすくなるからです。ハードな運動をする必要はありません。近所のスーパーへの買い物でも、軽い散歩でも構いません。まずは1日1時間を目安に、なるべく日の光を浴びて昼夜の活動にメリハリをつけることを心がけてください。雨の日は窓際で作業をするなどしてもいいでしょう。なお、昼寝については、活動のメリハリを損なうおそれがあるため、15時までに30分程度を目安に取るのが良いでしょう。
2．「光」を利用する
よく「入眠前にスマホなどのデバイスを見るのは良くない」と言われます。体がデバイスのライトの明るさで昼間だと勘違いし、メラトニンの分泌を止めてしまうからです。夜型の人は、それを逆にとって、起きがけにデバイスを見ることで体を覚醒させるという手段もあります。感情が動きやすいSNSのチェックも、起床直後の時間なら、さらなる覚醒感を得るための工夫として有効です。
「カーテンを開けたまま寝る」というのも、夜型の人の体に朝を認識させ目覚めを促すためにはよいでしょう。逆に、朝型の場合は起床時間をよりいっそう早める可能性があるため注意が必要です。
3．朝食を食べる
朝食をとり胃腸を動かすことで体の目覚めが促されます。たくさんの量は必要ありません。ひと口でも構いませんので、まずは「食べ物を体の中に入れる」ことを意識してみましょう。
朝型生活に順応するために大事なのは継続すること。いきなり早起きしても続けることは難しい。一度に変えようとするのではなく、少しずつ調整しましょう。私の患者さんの場合、仕事上、起床時間を3時間程度早くする必要があり、1カ月程度かけて徐々に起床時間を早めました。クロノタイプは固有の体質であり、朝型夜型、それぞれに得意な時間帯があります。朝型の人が早起きや朝活が得意なのは「そういう体質だから」にすぎません。残念ながら夜型の人が朝型になることはできませんが、夜型の人でも朝型生活を送る方法はあるのです。
2025.05.08
穂積 桜さん
精神科医 株式会社MEDICO代表取締役
日本医師会認定産業医、労働衛生コンサルタント、日本精神神経学会精神科専門医、精神保健指定医、臨床心理士などの資格を持ち、現在産業医として、大手外資IT企業や大手国内飲料メーカーなど複数社を担当している。