親子でデジファブに挑戦! 最新技術を使ったものづくりを体験してみよう親子でデジファブに挑戦! 最新技術を使ったものづくりを体験してみよう

デジファブとはデジタルファブリケーションのこと。
3Dプリンターやレーザーカッターなどのデジタル工作機械を用いながら、木や樹脂などの素材を加工・造形します。
学校に3Dプリンターが置かれたり、コワーキングスペースにファブスペースが併設されたりと、
子どもにも大人にもデジファブは身近になりつつあります。
最新技術によるものづくりの楽しさを体験してみてはいかがでしょうか。

3Dプリンターでランプシェードを作ろう 3Dプリンターでランプシェードを作ろう

今回訪問した先は、東京都世田谷区にある「シモキタFABコーサク室」。3Dプリンターやレーザーカッターといった、ものづくりに用いる機材や工具を備えたシェアスペースです。ご案内役は施設を運営する一般社団法人CO-SAKU谷 代表理事の高橋明子さんです。

3Dプリンターやレーザーカッターを使って何かを作るとなると、その元となるデジタルデータが必要になります。これらデータは3DCADのような立体造形ソフトやAdobe Illustratorなどのグラフィックソフトで制作するものですが、少し敷居が高いためビギナーが手軽に挑戦する方法を高橋さんにお聞きしました。
「デジファブによって自分のアイデアを形にできることや、世界でひとつだけの作品を手にできることは魅力的ですが、初めてだとゼロからアイデアを形にしようとしても悩みますよね。そんなときに便利なのがオンラインで公開されている3Dデータを活用する方法。例えば『Thingiverse』などは有名です。さまざまなデータが公開されているので眺めているだけでも楽しいですよ」

「Thingiverse」にはインテリアとしても楽しいフィギュアや模型から、日常的に使えるアクセサリーまで膨大な数のデータが掲載されています。商用利用でなければ無償でダウンロードできるものもたくさんあるので、好みのもののデータを使って3Dプリントしてみるのもいいでしょう。

今回は「FlashPrint」というスライサーソフトを使ってランプシェードを作ってみます。スライサーソフトとは、CADで作られた3Dデータを3Dプリンター用のデータに変換するソフトの総称。「FlashPrint」には、イラストや写真など画像データを読み込んで3Dデータを作成する機能があるので、一から3Dデータを作成せずに造形することができます。

まず、模様にする桜の花びらの画像を読み込みます。次に「ランプシェード」の形状を選択。設定画面上で高さや厚さ、上面底面の大きさなどを数値で指定すると、好みの形に整えられます。

高さは5cm、底の直径はLEDライトに被せられる大きさにしました。画面上ではランプシェードの形ができています。

完成したデータを3Dプリンターに送信。あわせて、造形する材料となるフィラメントを選択します。フィラメントにはさまざまな色や質感のものがあります。

静かに動き出す3Dプリンター。溶けたフィラメントがノズルの先から押し出され、一層一層を積み重ねて造形していきます。

今回使った3Dプリンターは、Bambuというメーカーの最新モデル。20分程度で造形が終了しました。造形時間は機材によって異なり、同じデータでも、コーサク室にある他の機材だと2~3倍の時間がかかる場合もあります。

100円均一ショップで購入したLEDライトに被せれば、オリジナルのベッドサイドライトのできあがりです。今回は、白のフィラメントで造形しましたが、クリアカラーを選ぶとまた光の印象は変わるでしょう。写真やイラストを変えて、家族一人ひとりで異なるランプシェードにしても楽しそうです。

初めての方が3Dデータを作るには、Webブラウザ上で利用できる無料の3Dモデリングツール「TinkerCad」もおすすめです。いろいろなオブジェクトが用意されていて、それらを組み合わせて3Dデータを制作できます。自宅でお子さんと一緒にデータ作成にチャレンジするのもいいですね。

レーザーカッターでキーホルダーを作ろう レーザーカッターでキーホルダーを作ろう

レーザーカッターは、レーザー光線を照射して材料を加工するデジタル加工機です。手作業では難しい複雑な形の精密な切り出しや、手書きのイラストや模様などを刻印できる優れもの。シモキタFABコーサク室にあるレーザーカッターにはカメラが付いていて、手書きイラストをスキャニングしてレーザー加工用のデータにできます。

今回はワンちゃんのイラストを刻印したキーホルダーを作ります。まずレーザーカッターの台にイラストを乗せてスキャニングをした上で、レーザーカッターの専用加工ソフトウェアで大きさを設定します。「イラストを縮小してカットすると細かい線がつぶれてしまうことがある」との高橋さんからのアドバイスにしたがって、シンプルで大らかなタッチのイラストを用意しました。

レーザーカッターが動き始めると、素材として選んだMDFボード上にイラストと同じ絵が上部から刻印されていきます。穴が開いてしまわないか心配になりましたが、レーザーの出力値や速度を刻印やカットなど加工内容に適した設定にすることで、きちんと加工できます。イラストの刻印が終わると周囲がきれいにカットされ、あっという間にキーホルダーの完成です。

レーザーカッターの速度や出力値は、専用のソフトウェア上で設定します。レーザーを弱い力で速く動かす設定にすると、一点に当たるレーザーは小さく弱くなり、抜けることなく、刻印できます。反対に、レーザーをゆっくり強い力で当てる設定にすると、一点にかかる力が大きくなり、切り抜くことができます。この設定値は、素材や加工内容によって違ってきます。

「今回のキーホルダーに使用したのは出力が強いレーザーカッターでしたが、出力が弱いものを使うと、弱い力でやさしく加工できるので、革や布、紙の加工もできます。スニーカーやトートバッグに刻印して、ユニークな作品を作るお客様もいらっしゃいます」と高橋さん。結婚式に使うペーパークラフト、ショップカード、建築模型など、レーザーカッターはいろんな作品づくりに活躍しています。

何を作りたいか、ワクワクするアイデアを膨らまそう 何を作りたいか、ワクワクするアイデアを膨らまそう

精密な造形ができる3Dプリンターやレーザーカッターは、近年ますます身近になってきたため、使ってみたい人も増えているようです。とはいえ、3Dプリンターもレーザーカッターも「作りたい!」を実現してくれるツールに過ぎません。
「作ってみたいものがあって、これら機材が自分のアイデアを形にする助けになる、と考えると機材の使い方やデータ制作の習得にも熱が入りますよね。先日は、昆虫好きのお子さんが“昆虫を3Dプリンターで作りたい”とお父さんと一緒にいらっしゃいました。最初は上手に作れないかもしれませんが、自分のやりたいことなら試行錯誤の時間すら楽しいはず。充実したひとときになると思います」

難しそう、デジタルは苦手だから、と不安になる前に、まずはどんなものを作りたいか、どんなものを作れたら嬉しいか、親子で気楽に話してみませんか?シモキタFABコーサク室で開催している『3Dプリンター体験ワークショップ』には、たくさんの親子連れがいらっしゃるそうです。
「レーザーカッターには、こういうことができるんだ。3Dプリンターってこんな風に動くんだ、と実際に機材を見てみることから始めてもいいと思います。デジファブの最初の一歩を、肩の力を抜いて、楽しく体験してほしいですね」

2025.07.01

高橋明子さん

高橋明子さん
一般社団法人CO-SAKU谷 代表

長男出産後すぐに大学院に入学。マーケティングマネジメントをテーマに研究を行う。大学院時代の出会いをきっかけに、ロボット製作&ロボコンプロジェクトを世田谷で主催。その後、ロボット製作拠点として世田谷区の下北沢に「シモキタFABコーサク室」を立ち上げる。5年目を迎えた同施設は、デジファブのみならず、ミシンや陶芸、木工など、さまざまなものづくりができるメイカースペースとして運営している。

まちの工作室|シモキタFABコーサク室

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