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- 家族で楽しみながら防災力を高めよう
近年、地震や台風、大雨、火災など大きな災害が日本各地を襲い、防災への備えが取り沙汰されています。
でも、個人で備えようにもなかなか具体的には進められないもの。
日頃の生活の延長として、家族で取り組める災害への備えを見ていきましょう。
今回編集部員が訪問したのは、東京都立川市にある楽しみながら防災学習ができる体験型施設『立川防災館』です。施設を運営する東京消防庁 立川都民防災教育センターのセンター長 栗原健さんに話を伺いました。
災害時の生活を考えるとき、真っ先に気になるのは備蓄品ではないでしょうか。何を、どれくらい蓄えておけばいいのか。いろいろ気になって、どこから手を付ければいいのかわからない人もいるかもしれません。備蓄品とは、水、食料、携帯トイレ、照明器具、医薬品など、生活必需品のこと。東京都ではそれらを3日分から1週間分備蓄することを推奨しています。気をつけたいのは保管場所です。家の中の1カ所にまとめると管理はしやすいものの、地震や火事の際にそこにたどり着けないと台無しです。そのため、家の1階と2階、ダイニングと寝室など、複数箇所に分けることでリスク分散しましょう。

水や食料については1週間分を備えたいところですが、それだけの量を揃えることはなかなか大変。そこでおすすめなのは、備蓄品を生活に取り入れることです。たとえば日常的に食すカップ麺も立派な備蓄品になりますし、ペットボトルの水を箱買いすれば普段づかい用にも備えにもなります。日常づかいしていれば消費期限にも気づきます。古いものから手をつけ、なくなったら買い足す「ローリングストック」を実践すれば、無駄を最小限にしながら備蓄品を維持できるでしょう。普段の食品ストックと災害時への備えが自然に繋がるのはとても経済的だと思います。
ご家族で楽しまれる方が増えているキャンプも、避難生活の良いシミュレーションになります。テント、寝袋、コンロ、簡易トイレ、ポータブルバッテリーなど、キャンプグッズの多くはそのまま災害時に使えます。キャンプ道具をまとめておいて、防災グッズ・備蓄品として持ち出せるようにしておくと良いでしょう。
テント泊に慣れていれば、避難所や屋外など不慣れな場所での睡眠にも安心です。飯盒(はんごう)や鍋での炊飯は、電気が使えない状況でご飯を炊く練習にもなります。キャンプグッズを揃えることが災害時の備えにもなるので、キャンプ好きにとっては楽しみながら準備することができて一石二鳥。お子さんのいるご家庭などでは、キャンプを通じて「もしも」の時に備える体験をしてみてはいかがでしょうか?

そもそも災害は、いつ何時起きるか分かりません。仕事や学校などで、家族が家にいない時間帯に起きる可能性を踏まえると、家族間で避難場所についての共通認識を持つことが大事です。「新耐震基準の住宅なので地震の場合は家で待機するけど、台風や大雨で水害の可能性がある場合は避難所を利用しよう」など、災害の種類別に避難場所を確認しましょう。その際、避難場所にはどういうルートで行くのか、何を持ち出すのか、「家族の約束事」も併せて決めておくと万全です。
災害が起きた際は、移動したくてもできない状況に陥るかもしれません。携帯電話が使えない可能性もあります。そんな中、安否確認に使ってほしいのが災害用伝言ダイヤル(171)です。171は電話番号を登録し伝言を残すサービスです。みんながスマホを持ち、自宅に固定電話がないことや、家族の電話番号を覚えていないことが珍しくない今だからこそ、家族で話し合いの場を持ち、「誰が誰に伝言を残すか」など、利用方法を決めておきたい。そうすれば、いざという時もスムーズに171が使え、早期に安心が得られるはずです。

なお、災害時に自分自身を守ることを自助と言いますが、それとともに大切なのが地域で助け合う共助です。お向かいには一人暮らしのお年寄りがいるとか、隣のお子さんはご両親が帰ってくるまで一人で留守番しているなど、隣近所の事情を知っていれば、いざというときにお互いに助け合うことができます。そういった意味でも普段からの近所付き合いは大切です。
地震大国と言われる日本では、ここ数十年だけを見ても、阪神淡路大震災や東日本大震災をはじめ甚大な被害をもたらした災害が繰り返し起きています。だからこそ、毎年1月や3月など、社会がそれらの災害を振り返るタイミングで、家族の災害準備月間を設けてほしいと思います。非常持ち出し袋の中身を点検し、消費期限が迫っている水や食料など備蓄品を消費する。自宅付近のハザードマップを用意して「自分たちがどんな場所に住んでいるのか、災害時にどんな被害が起こりうるのか」を再認識したうえで避難先を考える。家族間で電話番号をメモしあう。個別に行うと面倒なことでも、年一回の家族イベントにしてしまえば、楽しみながら全員の意識を高められるはずです。
ときにはご家族で防災館などの施設を訪れることもお勧めです。全国各地にある防災体験施設では地震体験、消火訓練、火災時のシミュレーションなどを体験することができ、楽しみながら防災意識を高められます。
また、ご家族で外出する機会は、出先や旅先での危機意識を高めるチャンスでもあります。外出先で災害が起きたらどうするか。どこに避難するか。宿泊先の避難経路はどうなっているのか。さまざまなことをご家族で確認していくうちに、いつどこで災害にあっても最短で安心・安全な状況にたどり着くための思考を、家族全員が身につけられると思います。

2025.09.01

栗原健さん
東京消防庁 立川都民防災教育センター センター長
大阪府出身、平成13年に東京消防庁入庁、玉川消防署に拝命し都内各署、財務課や人事課勤務を経験。令和6年4月から同センター長に就任。
東京消防庁立川防災館
災害時に役立つ行動力を身につける体験学習施設。地震体験室、煙体験室、VR防災体験コーナーなどを備え、楽しみながら防災体験ができる。









